犬猫の存在知らせるペット表札 「家族の一員、絆を再確認」
東日本大震災に続いて熊本地震でも多くの犬猫が被災し、迷子になった子も多かった。自宅が全半壊した時、人間は自力で逃げ出せたり、救出してもらえたりするけれど、ペットの存在は救助隊には分かりにくい。そんな時に役立ちそうなのが、ペット表札だ。特に、amacoのペット表札は、似顔絵付きで「災害時に救出をお願いします」の文言もあるため、万が一、飼い主が駆けつけられない時でも、周囲の人がペットの存在に気づく助けになりそうだ。
フランス在住のAさんは今年3月、国内に住む友人にamacoのペット表札をプレゼントした。友人が救急車で病院に運ばれ、飼い犬が自宅に1匹で取り残された「事件」をきっかけに、犬の表札を探していた。amacoの表札にある「家の中にペットがいます。災害時に救出をお願いします」という文言にひかれ、すぐ購入を決めた。
「それまで私は、こんな文章の入った表札を見たことがなかった。こういう文章があれば、緊急時や災害時に近所の人が気づいてくれるし、万が一逃げ出した時も『あそこのわんちゃんじゃないの?』と分かるんじゃないかと思いました」
友人はとても喜び、それまで玄関に貼っていた「猛犬注意」の札をさっそくはがし、amacoの表札を貼ったという。
東日本大震災でもペットたちが被災する姿に心を痛めたAさん。4月に起きた熊本地震でも、ペットたちの境遇を案じる。「ペットは家族の一員。表札や迷子札があれば、迷子になった時も、迷子情報を見た方が『あれ? この子見たことがある』と気づいてくれ、家族の元に帰れるのではないかと思います」
amacoのペット表札を作っているのは、デザイナーの尼子靖(56)さんだ。アーティストとしてパブリックアートやディスプレーデザインなどを手がけ、自宅工房で表札や作品を制作、教室も開いている。フレンチブルドッグの「いわお」(12歳)の飼い主でもある。
ペット表札の販売を始めたのは昨年から。かつて表札メーカーと開発の仕事をしていた時から、ペット用がないことが気になっていた。ケージや外出用バッグに付ける小さな名札はあっても、玄関や門に家族の名前と一緒に掲げる表札がない。「犬も家族の一員。人の表札のように玄関に掲げたい」。試行錯誤の末、人用の表札の隣にあっても違和感のない、現在の形にたどり着いた。
表札は「アフゼリア」という木で出来ている。密度が高く、高い耐候性がある。長期間、玄関先で雨風にさらされても割れない素材だ。ここに、パソコンで入力した文字と尼子さんがオリジナルで描き下ろしたイラストを、レーザー彫刻機で焼いて彫る。塗装壁面、木、サイディング、モルタル、コンクリートなど、ほとんどの外壁素材に、屋外用強力両面テープか接着剤で取り付けられる。
「丈夫な素材なので、もし地震に遭っても割れずに残ると思う。『ここにペットがいる』ということを周囲に伝える時、ペットの似顔絵と生年月日があるので、何歳のどんな顔立ちの子か分かる。災害時にはきっと役立つはずです」と尼子さん。もちろん、文字を抜いてイラストだけにすることも可能だ。
トイプードルのトットちゃん(5歳)と暮らすSさんも今年2月、amacoのペット表札を購入した。アイボリー地に黒いトットちゃんのイラストと、「災害時に救出を…」の文章が入っている。
できばえにSさんは大満足だ。プリントみたいな感じかと思っていた表札は、厚い木地にイラストがしっかり彫られている。朝起きたら、トットちゃんの歯磨きから始めるほど溺愛(できあい)している夫も、表札を見た瞬間「めちゃめちゃいいなあ~」。あまりのうれしさに、人間用の表札も作り替えようと家族で話しているほどだ。
玄関に掲げた後、近所や宅配便の人から「トットちゃんていうんですね。何かあったら助けに来るからね~」などと言われた。トットとは、スワヒリ語で「小さい家族」という意味といい、夫が名付けた。
「『犬』の鑑札は貼っていたのですが、姿を見たことがないと犬がいることに気づかないものなんですね。表札にイラストがあると、ああこんな子ね、って想像がつくんだと思いました」。表札のおかげで「トットとの、家族としての絆をさらに再確認しました」とSさんは話す。
大規模な災害のたび、ペットと生き別れたといった報道がされる。一方で、安易な気持ちで飼い始めた飼い主が飼育放棄するなどで殺処分は減っていない。家族の一員としてのペット。表札が、関係を考え直すきっかけになるかもしれない。
なお、尼子さんは、ペット表札の売り上げの一部を、殺処分ゼロを目指す活動に寄付しているという。
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