奈良公園の野生シカが「ペット化」 人への依存度高まり

奈良で記者生活を始めた20年前で最も印象に残る取材が、市民団体「ディア・マイ・フレンズ」(DMF)が奈良公園で実施していたシカの市民調査だった。
1990~99年の夏と秋、学生ら数十人が丸1日かけて分布や動向を調べた。昼は観光客にえさをねだっている印象が強いシカたちが、夜は山林に戻るなど「日周移動」をしていると知った。「やはり野生動物だな」と感心したものだ。
その習性が薄れ、公園内に居座るシカが増えているようだ。市民調査を立ち上げた一人である立澤史郎・北海道大助教から先月、気になる話を聞いた。
警戒心が強く、あまり人に近づかなかったはずのメスや子ジカがすり寄る光景も目立つという。頭数の過密や園内の工事などで主食である植物が不足し、人がくれるえさへの依存度を高めたのでは、と立澤さんはみる。いわばペット化だ。
DMFの代表だった故・藤田和(かずし)さんは、過度なえさやりなど、人間が誤った接し方を続ければ、「善意による絶滅」の恐れさえある、と警鐘を鳴らしていた。では、私たちはシカとどう付き合えばいいのか。考える時期が来ている。
(加戸靖史)
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