殺処分なくしたい 小学生の作文が原作の絵本「78円の命」
捨てられたペットが殺処分されている現実や、命の大切さをつづった愛知県豊橋市の小学生の作文「78円の命」を元にした絵本づくりが進められている。インターネットの「クラウドファンディング」で出版資金を募ったところ、目標を上回る金額が集まり、6月にも出版される予定だ。プロジェクトのメンバーは「子どもたちに命の尊さを知ってほしい」と訴えている。
「78円の命」は2012年、当時小学6年生だった同市上地町の谷山千華さん(15)が夏休みの宿題で書いた。近所でかわいがっていた捨て猫の産んだ子猫が、県動物保護管理センターに引き取られたと知ったのが発端だった。
インターネットで調べると、全国で1年間に20万匹(当時)が殺処分され、1匹につき78円の費用がかかるとあった。
「動物の命の価値が78円でしかないように思えて胸が張りさけそうになった」。作文には、ペットが簡単に殺処分されてしまう現実への複雑な気持ちをつづった。
同年10月、豊橋市の小中学生が参加した「話し方大会」で、谷山さんが作文を朗読。最優秀賞に選ばれると、注目を集めた。その後、市の一部の学校で道徳教育の教材に利用されるように。20年からは県内全域で道徳の副教材に掲載されることも決まっている。
この作文を知った首都圏を中心に活動する若手の写真家や美術演出家ら3人が昨年9月、絵本化に向けて「78円の命プロジェクト」を立ち上げた。「命について考えるきっかけづくりがしたい」と意気投合したのだ。
イラストレーターや動物愛護団体なども協力。絵本の印刷費に加えて、ポスターやリーフレットの製作のため、クラウドファンディングで資金を集めることにした。
当初の目標は100万円。ところが、開始から1週間で達成した。2カ月余りで400人以上が賛同し、4千冊分にあたる300万円を超す資金が集まった。絵本もほぼ完成し、1冊78円で6月ごろから販売できる見通しも立ったという。
メンバーの一人でフリーライターの戸塚真琴さん(28)は「作文を読んで心に刺さるものがあった。ペットを飼う人には最後まで責任を果たしてほしい。将来、犬や猫の殺処分がなくなる社会が来ることを願っています」と話す。
環境省によると、14年度の犬と猫の殺処分数は全国で10万1千匹で、20万5千匹だった10年度から半減しているという。
インターネットで資金を集めるクラウドファンディングのサイト「GREEN FUNDING by T―SITE」で今月27日まで賛同者を募っている。
(松永佳伸)
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