ペット連れ避難、200人以上を動物病院が受け入れ 熊本地震
熊本市中央区の「竜之介動物病院」に、犬や猫などペットを連れた被災者200人以上が身を寄せている。ペット連れでは市内の公共の避難所の屋内に入れないためだ。東日本大震災の被災地を訪れた徳田竜之介院長(54)が、ペットも受け入れる施設の必要性を痛感。2年半前、病院の床面積を3倍に広げていた。
「フェイスブックでここで受け入れてもらえると知って来ました」。市内の会社員菅村理さん(62)は、愛猫みつまめ君(5)と避難してきた。みつまめ君は地震後、ずっと自宅の隅にいて動かなかったが、病院に来て少し落ち着いた。
愛犬もも(6)と避難してきた、市内の無職戸崎順一さん(67)は、当初は車中で過ごしていた。しかし、ももの息が荒くなり、ぐったりしたため、病院に連れてきた。熱中症だった。「助かって良かった」
病院は4階建て。1、2階が病院で、3、4階は動物看護師などを養成する専門学校になっている。もともとは2階建てだったが、徳田院長が東日本大震災後の11年夏に福島を視察。避難の際にペットを置き去りにせざるをえなかった飼い主の苦悩を知り、病院裏の職員の寮も取り壊して、病院を広く建て直した。1週間分のペットフードと水も備蓄した。
今回の地震では14日夜に避難所として開放。院長のブログやフェイスブックでペット同伴可の避難所と知らせたところ、続々と避難者が集まってきた。ペットを連れた約200人が過ごしている。
動物看護師長の白石史絵さん(42)は「車中泊では興奮しやすい犬もいて、熱中症になってしまう危険がある。こうした事態を少しでも防ごうというのが、この病院を建てた目的でもあります」と話す。
病院には、被災地で保護された動物など当初は1日に約200匹運ばれてきた。徳田院長は「まるで野戦病院のよう。流通が回復せず、薬が足りない」として、ホームページの動画で自ら支援を呼びかけている。 ホームページは、http://www.ryunosuke.co.jp/ へ。
(青木美希)
■同行避難へガイドラインも
東日本大震災や新潟県中越地震では、ペットと同行して避難することが難しいためペットを置き去りにせざるを得ないケースが相次いだ。避難所に入れない飼い主が車中でペットと過ごし、肺塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)で死亡した事例があり、逃げたペットが人に危害を加える懸念も指摘された。
このため、環境省は2013年6月にガイドラインを設け、自治体に対して、飼い主に同行避難を呼びかけ、受け入れ可能な避難所へできるだけ誘導するよう推奨している。ただ、拘束力はなく、運用は市町村などが決めている。
東京都練馬区は、区立小中学校の避難所でペットを受け入れられるようにしている。ただ、人間側のアレルギーやペットの鳴き声、臭いなどの課題もある。ペットを避難所屋内に受け入れるか、屋外のカゴに入れるかなど、対応は避難所側の判断に任せる方向だ。
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