「アニマルセラピー」介護の現場でも 入所者から歓声
動物と触れ合うことで、病気やけがの治療効果を高めたり、心を癒やしたりするアニマルセラピー(動物介在療法)。医療や介護の現場で活用されつつあるが、石川県内でも、セラピー犬の育成に力を注ぐ団体がある。その現場を訪ねた。
県救助犬協会連合会(金沢市)のボランティアメンバー約10人が、それぞれが飼っている犬を連れて、野々市市中林の特別養護老人ホーム富樫苑に次々と集まってきた。動物とのふれあいを通して高齢者の精神的、身体的機能の向上を図る「アニマルセラピー」の訪問活動。野々市ライオンズクラブが主催した。
約60人の高齢者が待つ部屋にボランティアメンバーと犬たちが入ると、「わぁ」と笑顔があふれた。犬を連れたボランティアメンバーが「さわってみますか」と高齢者に話しかけながらひざの上に犬を乗せると、顔が一段とほころんだ。
施設の介護支援専門員、根尾亮介さん(45)は「今日は私たちでは引き出せない表情をされています」。普段寝たきりの人が犬をひざにのせると、なでるしぐさを繰り返すなど、日常とは違った変化を見せるという。
セラピーの間、連合会の松平博之会長(59)は、常に犬の状態を確認し、必要なら休憩や交代をさせるなど調整役を務める。
メンバーで内科医の小野木豊さん(57)=野々市市=は、白い毛がふさふさした小型犬ボロニーズ2匹を育成している。アニマルセラピーの効果について「犬と接することが脳や心の刺激になる。犬の力だと思うが、こちらも高齢者の笑顔を見られるとうれしい」と話す。
ミニチュアダックスフント2匹と黒の大型犬ラブラドルレトリバーを連れて、ほぼ毎回参加しているという看護師の中村江美さん(42)=金沢市=は「高齢者の中には、犬が好きだけど飼えない人も多い。そういう人にとても喜んでもらえる。自分の犬が役に立っていることもうれしい」と話した。
ボランティアになるには―年1回の試験
県救助犬協会連合会は県内で唯一、災害救助犬を育成しているNPO団体で2002年に設立された。能登半島地震(2007年)や東日本大震災(11年)にも出動した。
県内のライオンズクラブとともに03年から取り組んでいるのがアニマルセラピーだ。セラピー犬を育てながら、高齢者施設を定期的に訪問する。
連合会は、セラピー犬を育成するボランティアメンバーになるための試験を年1回実施している。試験の内容は、基本的なしつけ方から健康状態、セラピーに関する知識など約30項目あるという。松平会長は「犬も人もきちんとした安全が確認できている中で行わなければ確実な効果は得られない」と話す。
連合会のセラピードッグ認定犬は現在25匹。運営や犬の育成などは会員からの会費でまかなっている。ボランティアメンバーは随時募っている。
問い合わせはホームページ(http://ird-a.org/別ウインドウで開きます)のメールフォームのみで受け付けている。(須藤佳代子)
(朝日新聞2015年8月7日掲載)
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