車も住宅もペット目線で 広がる市場、異業種が続々

トヨタ自動車の新型シエンタの発表会。CMに愛犬家の滝川クリステルさんを起用し、「犬に優しい車」という側面もPRした
トヨタ自動車の新型シエンタの発表会。CMに愛犬家の滝川クリステルさんを起用し、「犬に優しい車」という側面もPRした

 犬猫の飼育頭数が15歳未満の子どもの数を上回って10年あまり、国内で飼育されている犬猫は約2030万匹(2014年、ペットフード協会調べ)になった。ペット関連総市場はリーマン・ショックや消費増税があっても拡大を続け、矢野経済研究所によるとその規模は、いまや1兆4412億円(同年度)と推計されている。国内で成長が見込める数少ない分野となったこの市場に、本来はペットとの関係が薄い業界、企業が参入してきている。

「これだけ床が低ければ、犬の乗り降りも楽ですね」

 7月9日、東京都内で開かれたトヨタ自動車の新型シエンタの発表会。登壇したフリーアナウンサーの滝川クリステルさんは、自身も犬を飼っていることに触れ、そうアピールした。

 トヨタマーケティングジャパンの坪山正さんは「この新型車のセリングポイントの一つとして、犬という切り口があるのです」と解説する。

「犬という切り口」は、実はシエンタだけのものではない。トヨタは、2012年10月にウェブサイト「TOYOTA DOGサークル」を立ち上げたのを手始めに、犬の飼い主に焦点をあてたマーケティングに乗り出しているのだ。

 坪山さんは「ファミリー層よりもペット保有層のほうが多くなっており、そこに商機を感じた。接点がなかった層とコミュニケーションがとれるようになった」という。

 ホンダも05年からウェブサイト「Honda Dog」を展開するなど、自動車メーカーにとって、犬の飼い主の需要を取り込むことは、いまや大きなテーマになっている。同社商品ブランド課の村中千英さんも「サイトには特に40、50代の女性が訪れてくれる。自動車メーカーにとって最も接触するのが難しい層に、『犬』を入り口にすることで接点が持てるようになりました」と話す。

 ペットの飼い主の囲い込みは、様々な業界で取り組みが加速している。人間用に向上させてきた技術が、市場参入の大きな強みになるケースが目立つ。

ベビー用品大手のコンビが7月下旬から発売しているペット用カート「コムペット ミリミリEG」。同社はペット用カートの発売によって「子育てを終えた世代にも商品が展開できるようになったのは大きい」とする
ベビー用品大手のコンビが7月下旬から発売しているペット用カート「コムペット ミリミリEG」。同社はペット用カートの発売によって「子育てを終えた世代にも商品が展開できるようになったのは大きい」とする

 ベビー用品大手のコンビは、ベビーカーなどの開発で培った技術を応用して、「ペット用カート」の販売を始めている。7月には、乳幼児の安全性を追求して開発した衝撃吸収素材を内蔵する新商品も発売した。ペット事業グループの神戸朋之さんは「ベビー用は成熟市場で大きな伸びは期待できない。だがペット用は前年比2倍増のペースで売れている」と説明する。

 かつては「子どもの運動会の場面」が定番だったカメラのCMでも、ペットの存在感が増す。ニコンは06年以降に製作したデジタルカメラのCM24本のうち10本に、犬や猫などのペットを登場させた。キヤノンマーケティングジャパンでは、写真教室「EOS学園」でペットの写真を撮るための講座を設けたり、ペットの写真を見るための専用アプリを開発したりもしている。同社の千葉俊明さんは「子ども以上に素早く、予想できない動きをする犬や猫に対して、蓄積してきた技術の強みが発揮できる」という。


 ほかにも流通・小売業界や住宅業界などで「犬猫の飼い主は購買意欲が高く、所得も平均より多い」という分析をもとに、参入が進む。

 セブン&アイ・ホールディングスは08年から、プライベートブランド(PB)のラインナップに、ペット用品を加えた。主力はペットフードや猫砂。「人に向けてPBを作ってきた信頼感が競争力につながっている」(同社広報)といい、コンビニに比べると苦戦が続く総合スーパーのイトーヨーカ堂でも、ペット関連商品は前年同月比2割増のペースで伸びているという。ミネラルウォーターの宅配大手アクアクララは、ペット用の飲用水としてのマーケティングを始めている。

積水ハウスは階段や壁面などに猫が快適に過ごせる場所を作るなど、ペットオーナー向けの提案をする
積水ハウスは階段や壁面などに猫が快適に過ごせる場所を作るなど、ペットオーナー向けの提案をする

 ハウスメーカーも放っておかない。たとえば大和ハウス工業は6月、埼玉県川口市に見本用建売住宅として「いぬ飼いのための家」を建てた。また積水ハウスは、「一部については人間よりも手厚い」(同社総合住宅研究所の沢辺泰代さん)ペット向けの提案商品を用意するなどしている。 大和ハウス工業の佐藤文さんは「高所得者層で、かつ買い替えや建て替えを考える50、60代が、いまの主な想定顧客層。この層を動かすのに、ペット訴求はきわめて有効です」と話す。


ライオン商事が2014年4月に発売した犬用歯ブラシ「PETKISS ツインヘッド歯ブラシ」
ライオン商事が2014年4月に発売した犬用歯ブラシ「PETKISS ツインヘッド歯ブラシ」

 ライオン商事が14年に発売した犬用歯ブラシとペット用品のための洗濯洗剤は、こうした特徴を持つペット関連市場ならではの商品だった。犬用歯ブラシでいえば、「超極細毛」「山切りカット」「握りやすく折れにくいハンドル」という人間のために培ってきた技術を盛り込み、希望小売価格は908円(税別)と高めに設定した。同社の黒﨑勉取締役は言う。

「相場観が形成されていないペット用品は値崩れがしにくい。人間用の技術を生かして、これまでにない新たな提案ができ、市場を開拓できる。成長の柱になる分野だと考えています」




(朝日新聞2015年7月30日掲載)

朝日新聞
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