あなたも今日から関われる! 敷居が低くなった動物愛護活動

 ハードルが高い。ちょっと怖そう。そんなイメージを持たれがちだった動物愛護活動に、新たな風が吹き込み始めた。多様な担い手、新機軸の取り組みが、裾野を広げている。あなたも一歩踏み出してみませんか?
文・写真/太田匡彦

 

里親希望者には、店長の梅田達也さんが自ら、自宅まで猫を届ける。飼育環境などを確認するためだ
里親希望者には、店長の梅田達也さんが自ら、自宅まで猫を届ける。飼育環境などを確認するためだ

積極的な情報発信も行うアニマル・ドネーションのサイト
(http://www.animaldonation.org/)
積極的な情報発信も行うアニマル・ドネーションのサイト (http://www.animaldonation.org/)
気軽に入れる保護猫カフェ

 

 埼玉県川越市内の最もにぎやかな通りに面した建物の3階に、保護猫カフェ「ねこかつ」はある。

 

 店内には約20匹の猫が寝そべったり、走り回ったり、来店者をかまったり……。一般的な猫カフェ同様の「サービス」が受けられるのだが、どの猫も新たな飼い主との出会いを待っているという点で、決定的に異なる。2013年3月にこのカフェを開店した梅田達也さん(42)は言う。


「シェルターだと、普通の人は入りにくい。誰でもふらっと入れ、まずは保護猫という存在に関心を持ってもらえるように『猫カフェ』という形態を選びました」

 

 もともと、サラリーマンをしながら休日や夜間、野良猫に不妊手術などをするTNRに携わってきた。だが猫の殺処分数はなかなか減らない。そんななか、沖縄や北海道などで保護猫カフェが登場していることを知り、決断した。


「入場料をもらえば、寄付に頼らない活動ができる。利便性の高い立地なら、猫を買おうとペットショップに足を向ける人たちの選択肢にもなれる。将来的にはペットショップと同じくらいの数まで、保護猫カフェが増えてほしい」


 オープン以来、週末を中心ににぎわい、毎月約千人が訪れる。これまでに200匹以上の猫が、新たな飼い主のもとへともらわれていった。


 どこか取っつきにくかった動物愛護の世界のニューウエーブ。元会社員や獣医師など多様なバックグラウンドを持つ人たちが、その担い手だ。


 リクルートで「ゼクシィ」の創刊などに携わってきた西平衣里さん(45)の場合、ある自治体の保健所を見学したのが、きっかけになった。


「毎年10万匹以上の犬猫が殺処分される現実を、なんとか変えたいと思いました」


 半年あまりのリサーチの末、たどり着いた答えは「日本初の動物関連限定オンライン寄付サイト」の設立だった。


「リクルートでは情報が集まることで業界内の再編淘とう汰たが起きることを経験しました。そして殺処分の現場には、資金の問題で救えない命がある。だから、寄付サイトと情報サイトの機能を備えた中間支援団体を立ち上げました」


 11年7月に「アニマル・ドネーション」をオープン。集まった寄付は総額3900万円を超える。これらの資金を15の動物愛護団体に分配しているが、支援先にする団体の「基準」を厳しく設定することで、愛護業界全体の底上げにつなげる狙いもあるという。


「一般の人が動物愛護団体を見極めるためのモデルや基軸を作っていきたい。動物たちのための活動の裾野拡大につながると考えています」

 

 

民間委託で「年中無休」実現

鳥取県倉吉市のアミティエでは、基本的なトレーニングも行う
鳥取県倉吉市のアミティエでは、基本的なトレーニングも行う

 鳥取県では官民共同の取り組みが始まっている。倉吉駅から車で約20分、田園風景のなかに犬猫の保護と譲渡のための施設「人と動物の未来センター・アミティエ」が立つ。最大で犬40匹、猫20匹を収容できる約1万6千平方メートルの広大な施設だ。

 

 犬たちには個室が用意され、大規模な芝生のドッグランもある。猫は登り木などが設けられた清潔な室内で飼われている。殺処分のための設備はもちろんない。公益財団法人「動物臨床医学研究所」が13年9月に開いた民間施設だが、「鳥取県動物愛護センター」も兼ねているのだ。


 実はこれまで、鳥取県には「動物愛護センター」と呼ばれる施設がなかった。県内4カ所にある「犬管理所」で犬猫の収容、譲渡を行ってきたが、物理的な制約が大きかったと、鳥取県くらしの安心推進課の近藤寿代係長は言う。


「譲渡に力を入れるためには犬管理所では限界があったが、センターの建設構想は浮かんでは消えた。そんななかでアミティエができ、県のセンターが行うべき業務を委託させていただくことにした」


 アミティエが担う業務内容は、県が収容した犬猫の飼育と譲渡、動物愛護に関する知識などの普及啓発だ。県の事業を民間に委託した効果は大きかった。


 公務員では難しい「年中無休」があっさり実現。譲渡活動が効果的に進み、犬や猫の世話もきめ細かくできるようになった。里親としての適性を見極めるための「トライアル(一時預かり)」期間も、所有権を柔軟に設定できる民間だから設けることができた。イベントなどが適宜行えるのも、年度ごとの予算に縛られない民間ならでは。倉吉動物医療センターなどの総院長で財団所長を兼ねる髙島一昭さん(46)はこう話す。


「獣医師や動物看護師がほぼ毎日、健康状態を確認に行く体制にもなっている。県と民間が連携した意義は大きい」


 ほかにも、イラクなどでの人道支援活動で知られる国際協力NGO「ピースウィンズ・ジャパン」が広島県神石高原町で、同県内の犬の「殺処分ゼロ」を目指す事業を立ち上げたり、フリーアナウンサーの滝川クリステルさん(37)が動物保護を目的に財団を設立して青森の高校生らと活動をともにしたり。動物福祉の向上を目指して、活動の裾野が広がっている。


 もちろん新たな問題も出てきている。保護活動などに、長く現場で携わってきた日本動物福祉協会の川﨑亜希子さん(44)はこう指摘する。


「最近ではインターネットで犬猫を巡る情報が一気に拡散され、大きな騒ぎになる事例もあります。そうした騒ぎに乗じて売名行為に走ったり、寄付金詐欺のようなことをしたり、所有権を無視して強引な保護活動を行ったり、といった団体や個人が目に付くようになりました。引き取った犬や猫を適切に飼養する能力がない団体も見受けられます。そろそろ、動物愛護団体側の自主的な規制も必要かもしれません」

 

 

 NPO活動のプロ佐藤大吾さんが語る 「自主的健全化を」

 
 非営利で行う活動には①問題の当事者②当事者を支援する団体の役職員③団体を支援するボランティアや寄付者、という3種類の関わり方があります。
 動物愛護の分野では、①の当事者は言葉を発することができません。そのため②が代弁者のように発言、行動してきた面がある。結果として「思い」が強くなりすぎ、②が③に対して自分たちと同様の「熱量」を求めてしまう。だから③に対する窓口が狭まっていました。
 さらに、プレーヤー数が比較的多いから、周りを引きずり下ろしてでも自分たちが相対的に上にいるように見せたがる傾向も強かった。どの非営利活動の分野にもある「近親憎悪」が、特に激しいと言えるでしょう。これでは、当事者である動物たちが困るだけです。
 新たなプレーヤーたちには事業性や起業家精神がありそうです。新規参入をきっかけに動物愛護業界内で自主的に健全化を進められれば、③の裾野も広がり、より動物福祉の向上につながる活動が行えるのではないでしょうか。

さとう・だいご/1973年生まれ。ジャパンギビング代表理事。共著に『初歩的な疑問から答える NPOの教科書』(日経BP社)など

 

太田匡彦
1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者やメディアラボ主査を経て、文化くらし報道部記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)などがある。
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