ワイナリーと愛犬たちの温かな物語を紡ぐ　『日本のワイナリードッグ』発売

　日本各地のワイナリーで活躍する犬、「ワイナリードッグ」とその家族の物語を、温かな写真とともにつづる本『日本のワイナリードッグ』（ワイン王国）が１月20日に発売された。取材・執筆を担当したライターとして、その内容やエピソードを少しご紹介します。

魅力あふれるワイナリーとワイナリードッグ

　日本ならではの、その土地土地の気候風土を映し出す「日本ワイン」。ピュアな果実味、繊細でエレガントな味わいが高く評価され、海外のワインコンクールでも続々受賞するなど、ますます注目が集まっている。

　そんな日本ワインの生産者たちを支え、笑顔にしているワンコたちがいる。「ワイナリードッグ」は海外のワイナリーにも多く、アメリカのカリフォルニアやオーストラリアで活躍するワイナリードッグのフォトブックは、世界的にも大人気。いつか日本のワイナリードッグを取材し、その姿を１冊の本にまとめたいーー。そんな長年の念願がかない、ワイン雑誌「ワイン王国」の別冊として発行することに。

　今回は、日本ワインの故郷・山梨県、銘醸地として知られる長野県、さらに東京都と神奈川県にある都市型ワイナリーを訪ねた。　

　長野県東御市の「ツイヂラボ」は、柴犬が描かれたラベルがキュートで、ずっと気になっていたワイナリー。異業種の仕事をしている築地克己さん、勢津子さん夫妻が、東御市でブドウ農家を始めた友人のもとに愛犬である柴犬のももちゃんを連れて通うようになり、一緒に泊まれるための小さな民家を手に入れた。そんな日々の中、東御のワインに魅せられ、畑をひらき自らワインを造ることに。「ももは、僕らの人生を思いもよらないおもしろい展開に導いてくれました」

　ももちゃんとのたくさんの思い出、そして、妹分の同じく柴犬のくるみちゃんを迎えた思いや出会いなどを、愛情たっぷりに語っている。

　山梨県甲州市の山間にワイナリーを構える「98WINEs」の看板犬は、イタリアングレーハウンドのチャイちゃん。繁殖犬としてケージの中で子犬を産むだけの過酷な日々を過ごし、きちんとケアもされず爪は伸び放題で肌はボロボロ。人に対して恐怖心も抱いていた。

　保護犬として、ワイナリーの立ち上げメンバーである吉留明子さんに引き取られたが、最初は自分のスペースに引きこもり出てこなかったり、逃亡して迷子になったり。しかし、ワイナリーのスタッフや訪れるお客さんたちの優しさに触れ、少しずつ心を開いていった。

　今ではお客さんがやってくると率先してお出迎えするように。天気のいい日は富士山が望める最高のロケーション、この地だからこそ生まれるピュアで味わい深いワイン、そして控えめで優しいチャイちゃんのおもてなしに触れることができる。最高のワイン旅になるに違いない。

心温まる家族の物語がいっぱい

　ほかにも、柴犬母娘のゆりちゃんとはなちゃん（白百合醸造）、甲斐犬のカンスケくん（東京ワイナリー）など、１３匹のワンコが登場。普段、ワインの取材に伺うとワイン造りへの情熱や思いを真剣に語る生産者の皆さんが、「ワインの取材よりもうれしいかもしれません」とそろって目を細めていたのが印象的だった。

　それぞれの出会い、やんちゃな子犬時代、思わず笑っちゃうエピソードの数々、そして家族のワイン造りを明るく支える姿……。ワイナリーの皆さんが語る「家族の物語」に、笑って、ほっこりして、ちょっとホロリとして。私自身トイプードルの女の子、愛犬もぐと暮らしており、取材していてとても温かな気持ちになった。

　撮影は、フォトグラファーのミヤジシンゴさん。国内外の旅取材で活躍し、その旅先で犬たちとその飼い主の愛あふれる関係を切り取る写真を撮影。作品は20年以上続けている個展「犬と飼主」で発表している。この企画が動き出す前から「写真はミヤジさんに」と熱望していた。犬たちのイキイキとした姿、ワイナリーの皆さんとのほほ笑ましい様子が、フォトブックとして堪能できる。

　また、編集はsippoでネコさん連載「続・猫はニャーとは鳴かない」が人気の宮脇灯子さんが担当。ネコさんを愛するように、ワイナリードッグへもやさしい視点で構成してくれた。２軒ほど取材にもご同行いただき、ワンコのかわいさに目覚めてくれた！？かも（笑）

　ワンコと遊びに行けるスポットや、泊まれるホテルの情報も掲載。各ワイナリーの歴史やワイン造りのこだわりなども紹介している。

　犬を愛し、ワインを愛する人たちへ。グラスを傾けながらページをめくり、心温まる家族の物語をゆっくりと味わってみてください。

日本のワイナリードッグ

出版社：ワイン王国（ワイン王国別冊）
価格、仕様：1980円（税込）、A4版、80ページ