猫の甘がみの理由と理由別しつけ方法! かみ癖を直し本気がみを回避しよう

目次
  1. 猫が甘がみする7つの理由と対策法
  2. 子猫の甘がみはしつけで学習してもらう
  3. 猫が甘がみする人としない人の違いはトラウマやヤキモチ?
  4. 猫の甘がみと本気がみの違いや許容範囲を知ろう
  5. 猫の甘がみでけがをした時は状況に応じて病院へ
  6. 猫の甘がみは飼い主とのコミュニケーション

 愛猫が飼い主の手や足を「カプッ」と軽くかんでくることはありませんか? とくに子猫によく見られる行為かもしれません。「甘がみ」と呼ばれるこの行為は、甘えの表現だったり、飼い主の手足を獲物に見立てた狩猟本能によるものだったりと、様々な理由が考えられます。かわいいしぐさにも見えますが、放っておいて癖にさせるとエスカレートしていく場合も。甘がみをする理由を理解して、適切なしつけ方法を知っておきましょう。

監修:山本宗伸獣医師
日本大学獣医学科外科学研究室卒。東京都出身。授乳期の子猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsにて研修。国際ねこ医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。
>Tokyo Cat Specialist 公式サイト

 猫が甘がみをするのには、それなりに理由があります。その理由を見極めた上で、しっかり対策をしていきたいものです。とはいえ、度を過ぎたしつけは愛猫にストレスを与えてしまいがち。どんなときに甘がみをするのか、よく観察することが必要です。

猫の甘がみ理由1:歯の生え変わりの時期

 歯の生え変わりの時期で、口の中に違和感を感じてかむという行為をすることがあります。個体差はありますが、だいたい生後2~3カ月頃に見られることが多いです。人間の赤ちゃんも、乳歯が生えてくるタイミングで歯茎がくすぐったく感じたり、ムズムズしてぐずったり泣いたりすることがあるので、子猫もそれと似た不快感を感じているといえます。

 すでに歯が生えそろっている猫の場合は、歯の抜け替わりが原因の場合もあります。口の中から血が出ていないか、乳歯が抜け落ちていないかよく観察してあげましょう。

対策法:おもちゃを与える
 人間の赤ちゃんの場合、「歯固め」というおもちゃを与えるのが一般的ですが、子猫の場合も同様で、ガシガシかめるおもちゃを与えるのがよいでしょう。丈夫でクッション性のあるおもちゃがいいかもしれません。甘がみをしてくる度に、おもちゃを与えてその場を離れれば、かんだら飼い主がいなくなることを学んでいくことにもなります。

猫の甘がみ理由2:狩猟本能や遊びたい

 猫の狩猟本能や遊びたいという理由で甘がみをしてくることがあります。猫はもともと狩りをして獲物を得ていた動物なので、動いているものを見ると体が勝手に反応して、飛びついてきたり、かみついたりしてしまうのです。

 とくに子猫のうちは好奇心旺盛で、何にでもじゃれついてきます。飼い主の手や指先、足なども、子猫にとっては動く獲物。捕まえてカプッとしたくなるのも当然です。ただし、個体差があるので、狩猟本能を発揮するのは子猫のうちだけとは限りません。成猫になっても、飼い主の手や足を獲物に見立ててしまう子はいます。

 早い時期に母猫や兄弟猫から離されて育った場合、かむ力加減がわからないことがあり、甘がみを通り越して本気がみに近くなることもありえます。「ガブリッ」と強めにかまれた場合は、とっさに手を引っ込めてしまいがちですが、猫からすると獲物が逃げたと感じてさらに強くかんでくる可能性が高いです。その場合は、逆に手を押し返すようにすると、口が苦しく感じて放してくれます。

対策法:力加減を教える
 かむ力加減がわからない子猫には「母猫や兄弟猫の代わりに人間がかんで教えてあげる」といった話を聞くことがありますが、現実的ではありません。強くかんできそうになったら、水道水を入れた霧吹きなどを使ってスプレーするのがよいでしょう。猫に害を与えずに、「強くかんだら嫌なことが起こる」ということを教えてあげることができます。

猫の甘がみ理由3:不満なことがあった

 気持ちよさそうにくつろいでいる愛猫をなでるのは、飼い主にとって至福の時間と言えるでしょう。愛猫がゴロゴロとのどを鳴らしてリラックスしているのを見ると、いつまでもなでていたい気分になります。そんなとき、突然、なでている手を「カプッ」とかまれた経験はないでしょうか。

 これは「愛撫(あいぶ)誘発性攻撃行動」といって、「もうたくさんです」「これ以上、なでないで」ということを表しています。突然かんできているように思えますが、実はサインを出しているのです。たとえば、しっぽをばたつかせる、つむっていた目が開き始める、体を動かすなど。耳を後ろ側に倒して、いわゆる「イカ耳」になっていたら、相当嫌がっている証拠です。愛猫のサインを見逃さないようにしましょう。

 また、ブラッシングや耳掃除などお手入れの最中にかんでくる猫もいます。これも「もうイヤ」のサイン。無理やり続けるとお手入れを嫌いになってしまうので、それ以上続けるのはやめたほうがいいでしょう。

対策法:猫の反応を見てスキンシップをする
 愛猫の様子をよく観察して、「もうイヤ」のサインが見られたらやめることです。お手入れの場合は、短い時間で済ませるように工夫して、長引いてしまうときは、時間を置いてから再開するようにしましょう。たとえば、爪切りの場合は1日に1本ずつ切っていくなど、日を分けて行う方法もあります。

猫の甘がみ理由4:オス猫の発情期に現れる本能

 オス猫の場合、発情期になるとメス猫の首筋をかんで体を抑え込もうとします。これは「ネックグリップ」という行動で、甘がみではありません。発情すると人や家具などに対してもかんでくることがあります。とくに発情中のメス猫が近くにいると、本能が働いて気持ちがたかぶるので、注意が必要です。

対策法:去勢手術をする
「ネックグリップ」は本能的な行動なので、止めさせるのはなかなか難しいことです。一番良い対策法は、去勢手術をすることです。発情という本能がなくなるので、ネックグリップという行動もほとんどしなくなります。

猫の甘がみ理由5:飼い主の気を引くため

 飼い主が何もしていないのにかまれたという経験はないでしょうか。これは、かまってほしいときや、ごはんやおやつがほしいときなど、何か欲求があることを訴えている可能性が高いです。かむことで飼い主の気を引いているのです。忙しくて遊んであげる時間があまりないと「かまってほしい」欲求が高まって、わざと強くかんでくることもあります。

対策法:普段から接する時間を確保する
「かまってほしい」という欲求を訴えている場合は、普段から十分に遊んであげるようにしましょう。少しの時間でもいいので、できるだけ毎日、遊びの時間を確保してあげることです。

「ごはんがほしい」アピールの場合は、欲求に従いすぎると肥満のもとになってしまいます。ときには断固とした態度で接するようにしましょう。

猫の甘がみ理由6:ストレスや恐怖心

 猫は引っ越しをしたり、家具の配置を変えたりといった環境の変化に強いストレスを感じることがあります。このストレスを発散したいがためにかんでくる場合があります。

 また、知らない人に触られるのが怖くて恐怖心からかみつく猫もいます。病院に来院する猫も、恐怖心からかかもうとしてくる猫は少なくありません。また、猫の扱い方を知らない人、とくにやんちゃな子どもなどが近寄ると、ストレスでもあり、怖さも感じてかんでくることがあります。いずれの場合も、甘がみというよりも、本気がみに近いかみ方になることが多いと思います。

対策法:環境の変化をもとに戻す
 環境の変化があった場合はその要因を探り、元に戻せることであれば、できるだけ元に戻してあげます。引っ越しの場合は、そうもいかないので、新しい環境に慣れるまで普段以上に気遣ってあげましょう。恐怖心が要因となっている場合は、恐怖の元となっているものを取り除くことです。病院に行くことは避けられませんが、猫の扱い方を知らない人や小さな子どもからは、なるべく遠ざけるようにしたほうがよいでしょう。

猫の甘がみ理由7:病気やけがをしている

 ふと体を触った瞬間やなでている最中、ある部位に近づくとかみついてくるという場合は、病気やけがをしている可能性があります。

 また、飼い主に対する甘がみではありませんが、病気をしている子が他の猫に対してじゃれてかみついてしまった場合は、念のためにかまれた猫を病院で診てもらいましょう。とくに感染症の場合は検査を受けたほうがいいかもしれません。

対策法:状態を確認して病院へ
 体のどのあたりが触られると嫌な部分だったのか、その箇所の状態はどうなっているのか、よく観察して早めに動物病院を受診しましょう。とはいえ、嫌がる部分なのでなかなかよく見るのは難しいことです。異常なまでに嫌がるようなら、すぐに動物病院へ連れていくことをおすすめします。

 好奇心旺盛な子猫にとって、動くものはなんでも狩りの対象に映るので、飼い主の手や足に甘がみをしてしまうのも致し方ありません。しかし、子猫の甘がみを放っておくと、かみ方がエスカレートして本気がみをするようになってしまうこともあります。甘がみをする癖をつけてしまうのも考え物です。もちろん個体差があるので、大人になるにつれて治まっていく子もいます。

 一般的には生後数カ月の若齢のうちから「かむのはいけないこと」と教えればやめてくれることが多いです。しつけの方法としておすすめなのが、前述した霧吹きで水をかける方法です。愛猫がかんではいけないものにかみついてしまったときに、シュッとスプレーして、「かんだら嫌なことが起きる」と覚えさせます。

 逆にNGなのは大きな声で叱ったり、たたいたりすることです。犬の場合は、「ダメッ!」と大きな声で叱るやり方がありますが、猫は怒られるとよりエキサイトしてしまいます。猫は上下関係という概念がないので、叱られても反省しません。なので、したいと思ったことをして、嫌なことが起きたらやめる、というだけです。大きな声を出して叱るのは、猫にストレスを与えるのでNGです。

 かむ力加減がわからない子猫の場合も、強くかんできたときに霧吹きを使ってしつけるようにしましょう。子猫は兄弟猫や他の猫と一緒に過ごす中で、じゃれあっているうちにかむ加減を学んでいくものです。新たに子猫を迎える際には、少なくとも生後2~3カ月までは親兄弟と一緒に暮らす環境に置いてあげてからお迎えするのがよいでしょう。

 猫に「かまれる人」というのは、大きくふたつに分けられます。ひとつはポジティブにとらえた場合で「猫に懐かれていて、遊んでほしくてちょっかいを出される人」。もうひとつはネガティブな理由で「小さい子どもなど、猫の扱いがわからず嫌われている人」。どちらなのかは、かまれたときのシチュエーションから判断できます。

 猫の扱い方を知らないわけではないのに、特定の人だけをかんでくる場合もあります。たとえば、元野良猫だったり、お迎えする前の環境で嫌な目にあわせられた人に似ていたりすると、恐怖心から攻撃態勢をとる猫もいます。その場合は、強引にスキンシップをとろうせず、一定の距離を保ちつつ、かまれがちな人がごはんやおやつをあげるなど徐々に慣れさせるようにしましょう。

 かなり強くかまれていても、「甘がみ」だと思っている飼い主もいますが、甘がみは、猫の歯型がつかない程度の、緩い感じのかみ方です。一方、「本気がみ」は、歯が完全に食い込み、簡単には離すことができないかみ方です。

 猫は驚いたり、パニックになるととっさに目の前にあるものに対して本気がみをしてしまうことがあります。そのときのシチュエーションでとっさの本気がみだとわかるはずなので、むやみに叱らないであげましょう。

 愛猫にかまれて怪我をしてしまった時は、すぐに洗浄し止血をしましょう。猫は雑菌を持っているので、細菌 感染して化膿(かのう)したり、感染症を発症する可能性もあります。とくに高齢者の場合は、発熱して重篤になることもあるので、応急処置を済ませたら病院に行くことをおすすめします。

 かまれたところがズキズキと痛むときは、皮膚科あるいは形成外科、発熱やリンパ節炎などが見られるときは内科を受診するとよいでしょう。

 猫の甘がみには様々な理由があり、それぞれのシチュエーションによって対策法が異なるので、飼い主としては愛猫が甘がみをしてくる理由をきちんと見極める必要があります。病気やけがを抱えていてかみついてしまう場合もあるので、単なる甘がみだと思い込まず、しっかり観察してあげてください。

 甘がみは、悪い問題行動のようにとらえられがちですが、猫にとっては爪とぎと同じごく当たり前の行動で、コミュニケーションの一環です。状況にもよりますが、無理にやめさせる必要はありません。ただ、本気がみに発展しないようにするための対策は、しっかりするようにしましょう。

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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