猫の留守番の注意点は?(提供:gettyimages)
猫の留守番の注意点は?(提供:gettyimages)

猫が留守番できる日数や時間は? 留守番時に気をつけたいトラブルと回避方法

目次
  1. 猫の留守番が1泊2日程度なら心配ない
  2. 猫によって留守番可能な時間は違う
  3. 生後2カ月齢頃までの子猫や病気持ちなら留守番は要注意
  4. 猫の留守番で気をつけたいトラブル
  5. 猫の留守番に起こるトラブルを事前に回避する方法
  6. 猫の留守番は短い時間から始めましょう
  7. まとめ 猫と留守番後はいつも以上に遊んであげよう

 猫は留守番中でも1日の大半は寝ているので、寂しさを感じないと言われていますが、飼い主さんがそばにいないとストレスを感じる分離不安症の猫もいます。実際には、どのくらいの期間なら留守番はできるのでしょうか? また、留守番中は思わぬトラブルが起こることも。猫の留守番中に気をつけたいことや注意点を、シリウス犬猫病院院長の石村獣医師が解説します。

監修:石村 拓也
シリウス犬猫病院院長、獣医師。東京農工大学農学部獣医学科卒業。横浜市の動物病院にて研鑽を積み、2017年3月にシリウス犬猫病院を開院。皮膚や耳の症例に精通している。川崎市獣医師会、日本獣医皮膚科学会、耳研究会、日本獣医輸血研究会所属。シリウス犬猫病院

 1泊2日程度の外出なら、十分なフードとお水、清潔なトイレを用意することができれば猫は留守番も可能です。ただ留守番させるにあたり、気をつけたいことも。

 猫はきれい好きな動物で清潔なトイレを好みます。汚れたトイレでは、排泄(はいせつ)を我慢して膀胱炎になってしまうこともあります。また、留守番中は室温の調節も大事です。エアコンなどで快適に過ごせるよう温度を調節しましょう。

 1泊2日以上の日数になる場合は、食事が傷む、お水をこぼす、その他不慮のアクシデントなどが生じるなどの可能性もあるため、ペットシッターやペットホテルの利用を検討したほうがいいでしょう。

愛猫が安心できる環境をつくってあげて(提供:gettyimages)

 健康な成猫なら、24時間ほどのお留守番は可能と言われています。

 猫の食事の回数は決まってはいませんが、野生時代は狩をしてその都度食事をするというスタイルでした。人間に合わせて毎日決まった時間に猫に食事を与えていくと、食べる量や時間はある程度一定のペースになることが多いです。しかし、そこは気ままな猫。一度にバクバク食べる子もいれば、食べたいときにちょこちょこ食べる子もいるなど様々です。

 置いてある食事1日分を一気に食べてしまう猫だと、空腹時間が長くなりすぎて嘔吐(おうと)してしまうこともあります。また、ドライフードでもずっと出しっぱなしにしておけば、風味が落ちますし、場合によっては湿気たり酸化したりすることもあります。

 野生時代から単独で生きてきた猫は、集団生活をしてきた犬よりもお留守番は得意です。猫は縄張り意識が強く、知らない場所や慣れない場所へ行くことをあまり好みません。ホテルなどに預けるよりも、住み慣れた我が家でのんびり過ごすことを好む猫ちゃんも多いでしょう。

フードは気をつけておきたい(提供:gettyimages)

 生後2カ月齢の子猫や病気持ちの猫の留守番は要注意です。

 2カ月齢前後の子猫は、本来であればまだ母猫に面倒を見てもらっている時期。消化機能が未熟なので、一度にたくさんの食事を与えてしまうと下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こすことがあります。さらに空腹時間が長くなると低血糖になってしまうこともあるので、数時間おきの食事が必要です。また、体温調節も成猫よりも未熟なので温度管理も大事です。子猫の健康状態は不安定で、体調が急変することもあるのでお留守番はおすすめできません。

 病気持ちの猫は、容態がいつ急変するかわかりません。急変時に気づかずに対応できないことで最悪のケースにつながる可能性もあります。ペットカメラなどの見守りデバイスを用意したり、ペットシッターを頼むなどの工夫をしましょう。

子猫や病気持ちの猫の留守番は要注意(提供:gettyimages)

 猫の留守番時には思いがけないトラブルが発生することがあります。留守番中に多いトラブルを知っておいて、未然に防ぎましょう!

トイレ以外での排泄

 猫はトイレをうまく使うのが得意な動物なので、トイレ以外で排泄を失敗してしまうことはあまりありません。トイレ以外での排泄には、必ず原因があります。

 留守番における飼い主不在による不安やストレスからトイレ以外の場所で排泄してしまったり、排泄の我慢から膀胱炎や便秘になることも。また、猫はきれい好きでニオイにも敏感なので、汚れているトイレには行きたがりません。お留守番時のトイレは余分に用意しておきましょう。

トイレは清潔さを保てるよう配慮を(提供:gettyimages)

ゴミ漁りや物の破損

 帰宅したら、家の中がめちゃくちゃに……!! そんなことにならないようお部屋の対策をしておきましょう。

 猫は留守番の不安から、室内を走り回ったりすることがあります。壊れやすいものを置いておくと、落とされたり倒されたりして壊されてしまうかもしれません。

 猫がケガをする可能性がありますし、大事なものの場合、取り返しのつかないことになってしまうかもしれませんね。猫の留守番時には、壊れやすいものは置かないように気を付けましょう。倒れてしまう可能性のあるものは、猫が入れない部屋に入れておくのもいいですね。花瓶・植木鉢・ゴミ箱などは要注意です。ゴミ箱はあさったりする可能性があるので、ふた付きのものがおすすめです。中にはふたをずらしていたずらする猫もいるので気をつけましょう。

 猫が触ったりすると傷つく可能性があるもの、口にすると中毒を起こす可能性のあるものは出しっぱなしにしないようにしましょう。

冷蔵庫の物を食べる

 冷蔵庫を開けてしまう猫も中にはいます。食材をイタズラされてしまったり、中途半端に扉が開いたままになると冷気が逃げてしまい食材が傷んでしまうこともあります。

 最悪の場合、冷蔵庫の中に閉じ込められてしまうことも。冷蔵庫を開けるクセのある猫は、冷蔵庫の扉にチャイルドロックをかけておいたり、キッチンに侵入できないように工夫しておきましょう。

冷蔵庫は閉じ込められてしまう危険もある(提供:gettyimages)

窓から外出

 室内飼いの猫にとって外出はケガや事故が心配なだけでなく、猫エイズや猫白血病などのウイルス性感染症、ノミ・マダニ、回虫などの寄生虫などに感染するリスクがあります。

 窓が少しでも開いていると外に出てしまう可能性があるので、しっかり閉めておきましょう。窓の隙間越しに地域猫と接触することでも、感染症をもらってしまう可能性があるので注意が必要です。留守番中に脱走しないよう、戸締まりは出かける前に再度細かいところまで確認して下さい。

 お風呂の水を張ったままの場合は、浴室に入れないようにしておきましょう。お風呂に誤って落ちてしまった場合、溺れてしまうことがあります。

誤飲

 留守番中はひとりで遊ぶしかない分、誤飲事故が起こりやすいです。猫は特にひもやビニールなどが大好き。猫の舌にはザラザラとした突起があり、ひも類が舌に絡まりやすくそのまま吐き出せずに飲み込んでしまうことも多いのです。猫がひもや糸を飲み込んでしまった場合、非常に危険です。

 ひも状の異物は腸の蠕動(ぜんどう)運動に伴って腸がたぐり寄せられるため、いわゆるアコーディオン状の形態をなします。これは他の異物による閉塞(へいそく)より厄介で、腸にひもが食い込んで穿孔(せんこう)による腹膜炎を起こしたり、血行不良により腸管壊死(えし)を起こしたりなど危険な状態になる場合があります。

 ひもや糸だけではなくひも状のおもちゃ、衣服、じゅうたんなどでも危険性があります。猫がいたずらしてしまわないように不要なものは片づけ、誤飲しないようにしましょう。

おもちゃの誤飲は要注意(提供:gettyimages)

長時間ケージでの留守番

 ケージの中でのお留守番は脱走やいたずらの心配がないため、飼い主としては安心でしょう。しかし猫にとって狭い空間に長時間閉じ込められるのはストレスになります。ケージを利用する時は、短時間の留守番に使用することを心掛け、長時間使用する事は控えましょう。

 ストレスがたまりすぎると、心因性の脱毛や膀胱炎などを引き起こす可能性があります。

 もしお留守番でケージを使用する場合は、できれば2段以上の大きめのものがおすすめです。ケージの中には、トイレ、水、猫ベッドなどを用意し、猫が気持ちよく過ごせるようにしてあげてください。

狭い空間に長時間閉じ込められるのはストレスになる(提供:gettyimages)

病気が発症

 お留守番中に、今まで潜んでいた病気が発症してしまう可能性もあります。

 例えば、膀胱(ぼうこう)結石や炎症産物が尿道につまっておしっこが出せなくなる状態を尿路閉塞といいます。おしっこが出せない状態が長く続くと大変危険で、早急に動物病院に連れて行かないと尿毒症になり死の危険性もあります。尿路閉塞は、若いオス猫で発症することが多いので注意しましょう。

 猫は狭い所が大好きです。家具の裏やちょっとした隙間に入ってしまい、挟まって出られなくなってしまうこともあります。家具などの後ろにあまり隙間を作らないようにしておきましょう。

 家の中にはキッチン、お風呂場、寝室、書斎など、猫に入ってほしくない場所がありますよね。留守番中に猫が侵入できないよう、このような立ち入り禁止エリアの戸締まりもしっかりとやっておきましょう。

飲み水やキャットフードの準備

 フードの用意は必須です。ウエット状のものはドライタイプに比べ傷みやすく、衛生的によくありません。留守番時は、ウエットフードよりも傷みにくいドライフードがいいでしょう。時間設定ができる自動給餌(きゅうじ)器などを利用すると、一気食べを防ぐこともできます。

 ただ、自動給餌器を利用する際は、電池切れや停電などでうまく作動しないこともあるので気をつけましょう。使う前に必ず動作確認を行い、万が一のことも考えて、他の場所にもフードを用意しておくと安心です。

 お水は、新鮮なものを入れ替え、水飲み場を複数用意しましょう。飲み水は猫が倒さないよう、しっかりとした作りの器に入れ、何カ所かに設置してください。器は直射日光が当たらない場所に置き、水分が蒸発してしまうことを防ぎましょう。自動給水器の利用も、常に新鮮な水が飲めるためおすすめです。

 空腹が続くと本来食べるべきでないものを口にしてしまうことなどもあるので、いつもより多めに用意しておくのが安心ですね。

自動給餌器を利用するときは万が一のことを考え、他の場所にもフードを用意しておくと安心(提供:gettyimages)

きれいを維持できるトイレ

 猫はきれい好きな動物で清潔なトイレを好みます。汚れたトイレでは、排泄を我慢して膀胱炎になってしまうこともあります。

 そのためトイレは複数用意しておくことが大切です。トイレの数は猫の頭数+1が理想ですが、留守番時はさらに予備のトイレがあると安心 でしょう。

猫が触れる場所は物を置かない

 誤飲や散らかしの原因となるようなものは、しっかりと片付けておきましょう。

 地震大国である日本。お留守番中に地震が起きないとは限りません。本棚や食器棚など、倒れそうな家具には事前にストッパーなどを入れて固定しておくといいでしょう。

 防災という観点から見ると、あらかじめこういった対処をしておくことは留守番に関係なく重要です。

猫が触れる場所にはできるだけ物を置かないほうがベター(提供:gettyimages)

窓やドアなどしっかり戸締まりする

 猫が脱走してしまう事故を防ぐために、窓やドアの戸締まり確認は必須です。雷や工事などの騒音、花火の音などでびっくりして脱走してしまうこともあります。

 二重扉や丈夫な鍵など、猫が簡単に外に出てしまわないような脱走対策を講じましょう。

猫が外出しないよう対策しましょう(提供:gettyimages)

20~28℃の室温

 お留守番中はエアコンをうまく利用して、快適に過ごせる環境を整えてあげましょう。

 春先でもエアコンもつけずに閉め切った部屋は、予想以上に温度も湿度も高くなることがあります。エアコンの冷気が苦手な猫もいるので、寒いと感じた時に潜り込めるようなベッドやハウスを用意しておきましょう。猫が自由に居場所を選択できるようにしておけるといいですね。

 また、エアコンのリモコンは猫の手が届かないところに置きましょう。イタズラによりエアコンが停止してしまったり暑い時期に冷房から暖房に切り替わってしまったりなどすると、熱中症になり最悪命に関わる可能性があります。

 冬場は、体に直接触れるホットカーペットや電気毛布は低温やけどすることもあるので注意しましょう。

快適に過ごせる環境を整えてあげよう(提供:gettyimages)

ペットカメラで外出先から見守り

 ペットカメラは、猫がいるエリアに設置することで、外出先でもスマホから動画で猫の様子を見守ることが可能です。いろんな商品が増え、価格帯は割とリーズナブルになってきています。外出先から声をかけたり、おやつをあげられるようなタイプもあります。カメラに内蔵されたレーザーポインタで、スマホから猫と遊べるものもあるようです。

 猫の行動範囲が広いと、姿が確認できないことがあるので気をつけましょう。広範囲に見渡せるよう高めの位置に設置したり、首振り機能のあるカメラを選択するのもいいでしょう。

 留守番中に、動画で猫の様子が確認できるといざという時にも対応できて安心ですね。

キャットタワーなど飽きない遊びの工夫

 猫は元々木に登ったりして狩りをする動物なので、本能的に高いところに登りたいという欲求が備わっています。高いところに登って遊べるキャットタワーは、こうしたストレスの発散に効果的です。

 上下運動ができるように3段くらいの段差があるタイプがおすすめです。

留守番に飽きない工夫が大事(提供:gettyimages)

専門サービスや家族に助けてもらう

 お留守番が心配な方は、ペットシッターなどの専門サービスの利用や、猫に慣れた家族や友人に世話を頼むのもひとつです。

 慣れているペットホテルがあれば預けてもいいと思いますが、猫は基本的に慣れない場所や初めての場所は苦手です。慣れるまでご飯を食べなかったり、排泄を我慢したりするなどのトラブルが起こりやすいことは知っておきましょう。

 急な不幸や仕事などで、急きょ猫を預けなければならないこともあるかもしれません。いざという時に頼れるところや人を確保しておけると、猫も飼い主も安心ですね。

 子猫の頃から飼い主さんと四六時中一緒にいる猫は、分離不安症をおこす場合があります。分離不安症では、飼い主の姿が見えなくなると不安やストレスにより、鳴き続ける、家具にマーキングする、排泄を失敗する、食欲や元気の低下などの問題行動を引き起こします。

 分離不安の傾向がある猫は、留守番をさせる前に飼い主の不在に慣れさせておくことが大事です。ケージを利用して距離をおいたり、別々の部屋で過ごすなど、飼い主がいなくなる時間を徐々に伸ばすなどして慣れさせておきましょう。

猫の留守番は短い時間から練習してみましょう(提供:gettyimages)

 健康な猫は1日程度であれば留守番が可能ですが、安心して外出するためには、準備が大切です。留守番中に愛猫が安全で快適に過ごせるかを考えて、食事やトイレ、事故の予防など十分に対策を行ってください。

 猫と接する時間が少ないと、猫も心身面でストレスを感じるようになってしまいます。留守番後は、一緒に遊んだり、声をかけながらなでたりするなどスキンシップをたくさん取りましょう。愛猫をたくさん可愛がることで、留守中のストレスを解消してあげてください。

石村拓也
獣医師。東京農工大学農学部獣医学科卒業。横浜市内の動物病院などを経て、2017年3月にシリウス犬猫病院開院。川崎市獣医師会、日本獣医皮膚科学会、耳研究会、日本獣医輸血研究会所属。

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