もしもの時、猫はどうなる? 飼い主の不安と向き合い生まれた「ねこHELP手帳」
もしも自分に何かがあったら、家で待っている猫はどうなってしまうのだろう――。猫の飼い主であれば誰しも、そんな不安がよぎることがあるのではないでしょうか? 外出先で事故や災害に巻き込まれたり、病気で突然意識を失ってしまったり。最悪、命を落としてしまう可能性だってあります。そんな「もしも」のときのために、イラストレーターのオキエイコさんが作ったのが、「ねこHELP手帳」です。自身も2匹の猫と暮らすオキさんが「ねこHELP手帳」に込めた思いとは。
家にいる猫の存在をどう伝えるか
「ねこHELP手帳」は、猫の名前、年齢、性別などのプロフィルのほか、ワクチン履歴、かかりつけ医、飼い主である自分の代理人の連絡先など、猫についてのあらゆる情報を書き込める手帳です。オキさんは、たとえるならば「猫の母子手帳のようなもの」と語っています。
「もともとは、猫を飼っている一人暮らしの友人が、『自分にもしものことがあったとき、家にいる猫の存在に誰も気づかず放置死させてしまったらどうしよう』と不安を口にしたことがきっかけでした。私自身、猫と暮らしていたので彼女の不安はよくわかりました。家族と一緒に暮らしていたとしても、家族が猫のことをきちんと理解しているとも限りませんし。友人のために、イラストレーターの私にできることはないかと」
最初に作ったのは「ねこHELP手帳」ではなく、無料でダウンロードできるスマホの待ち受け画像でした。
「スマホのロック画面用に、『おうちに大切な家族がいます。私になにかあったら気にかけてもらえると幸いです』という言葉を添えた猫のイラストの画像です。スマホなら誰もが肌身離さず持っていますし、ロック画面はパスワードがなくても見ることができるので、飼い主に意識がなくても、周囲の人が気づくことができるだろうと。友人のために作ったものでしたが、私のツイッターに載せたところフォロワーさんからも好評でした。そして、もっとよい形にできないかと考えていた頃、子どもの母子手帳を見て『これだ!』とひらめいたんです」
手帳の表紙には「私になにかあったらこの手帳を開いてください」、そして最初のページにも「家のねこを助けるために、どうか手を貸してください」のメッセージ。さらにページをめくると、「代理人に連絡をお願いします」の言葉とともに、代理人の名前と連絡先が出てきます。
「この手帳には、たとえ自分の命が助からなくても、家にいる猫の命を助けてほしいという願いを込めています。そのために重要なのは、願いがストレートに伝わること、そして代理人の連絡先がすぐにわかることです。だから表紙と最初のページにはお願いの言葉を載せ、ページをめくると真っ先に代理人の連絡先が目に入ってくるように、レイアウトも工夫しました。以降は、猫のプロフィル、医療記録など、猫が生きていくために必要な項目を順番に載せています」
猫の性格も含めた情報を引き継ぐために
猫のプロフィルには、病歴や投薬情報、ペット保険の有無だけでなく、トイレ砂やフードの種類など、「そこまで?」と思うような項目もあります。これには、ツイッターのフォロワーからの声も生かされているそうです。
「飼育を引き継ぐなら、猫の性格や好みにまつわる情報があったほうが、猫のストレスも減らせますから。私自身、最初のうちはトイレ砂のことなど考えもしなかったのですが、フォロワーさんから『うちの猫は砂が変わるとトイレを我慢してしまうので、トイレ砂の情報があるとうれしい』という声が寄せられたんです。A6という手帳のサイズにしても、お薬手帳と同じにしてはどうかという声を参考にしています。お薬手帳は、事故や病気など『もしも』のときに、救急隊員やお医者さんが最初にチェックするもの。お薬手帳と一緒に『ねこHELP手帳』を収納しておけば、猫の存在に気づいてもらう確率も高くなるのではないかと思って」
手帳はオキさんが個人で制作・販売したため、当初は50冊程度の予約を見込んでいたそうですが、実際には予想を大きく上回る1000冊以上の予約があったといいます。「もしも」のために作った手帳ですが、ユーザーからは「動物病院の先生から欲しいと言われた」「ペットシッターに依頼する際の引き継ぎに便利」といった声も寄せられているとか。
また、これまでに要望が多かった犬と暮らす方向けの「いぬHELP手帳」に加え、主にエキゾチックアニマルと暮らす方向けで、さまざまな動物向けにも対応できる「どうぶつHELP手帳」も、ついに完成したそうです。9月24日から予約がスタートし、10月9日から販売されます。
かわいいうちの子を守るため、1匹に1冊、備えておいてはいかがでしょう。
◆手帳の購入はこちらから
- オキエイコさん
- 書籍・雑誌・SNS・広告などで活躍するイラストレーター。育児・猫・貯金・暮らし・旅行など幅広く手がける。著書に保護猫エッセイ『ねこ活はじめました』(KADOKAWA)。
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