犬と人、どっちが師匠で弟子なのか 柴愛あふれる『影山直美の犬川柳』の創作の裏側

『影山直美の犬川柳』
©️Naomi Kageyama/影山直美の犬川柳

 日本犬専門誌『Shi-Ba【シーバ】』で15年以上続く人気シリーズ「犬川柳」。編集部が詠んだ川柳と、その川柳から着想を得た影山直美さんによる4コマ漫画のコラボは、これまでで100作品以上。その中から厳選した78作品と書きおろし10作品を収録した『影山直美の犬川柳』が発売中です。

 人気沸騰中の新刊について、「柴犬の行動は4コマ漫画にハマる」と語る影山さんに、創作の裏側を伺いました。

柴犬もいろいろ、飼い主もいろいろ

――柴犬を飼うようになって「柴犬の行動が4コマ漫画にハマる」と気づいたとのことですが、きっかけを教えてください。

 柴犬は真っ正直で、真面目になればなるほど、おかしいところがあります。ただ元気に走り回るだけじゃなく、ときどきボーっとしていて、何を見ているのかなと思うと寝ていることも。独特のテンポを持っているんです。

 そんなところが4コマ漫画に合うような気がして昔から描いていたのですが、たまたま編集者の方が4コマ漫画を描いた残暑見舞いを見て「面白い」と言ってくださって、雑誌でも描くことになりました。

――他の人が詠んだ川柳を漫画にすることの面白さは何ですか?

 私も柴犬と暮らしていますが、私の中では考えられないようなエピソードが出てくるのが面白いですね。

 たとえば、うちの子はボール遊びをしていてもすぐに飽きてしまって、結局、飼い主のほうがボールを取りに行くことになるのですが、当時の編集長が飼っていた犬は、ボールを投げれば何度でも取ってくるというんです。飽きっぽいと言われる柴犬にもこんな子がいるんだと驚きました。

 他にも、柴犬はきれい好きでおねしょをすることはあまりないのですが、編集長のところの犬は嫌がらせでおねしょをしたんだそうです。それもお父さんのほうにだけ(笑)。川柳によって、いろいろな性格の柴犬、飼い主の姿が見えてきて、私も面白かったし、読者の方も読み応えがあったんじゃないかと思います。

『影山直美の犬川柳』
©️Naomi Kageyama/影山直美の犬川柳

――最初のうちは川柳に込められた思いを取り違えないように気にしすぎていたそうですね。

 川柳で言いたいことと漫画が違ってしまったらどうしようと思っていました。

 でも、あるときあまりに忙しくて、川柳を詠んでもまったく漫画を思いつかずに困ってしまって、自分のエピソードを描いてみようと思い切りました。そのほうが、ただ川柳の流れを追って説明的な漫画にするより面白いだろうと。

 編集部から特にクレームもありませんでしたので(笑)、今はのびのびと描かせてもらっています。

「柴犬あるある」に笑って共感

――最初に川柳を読んでクスッとして、次に4コマ漫画を読んでまたクスッとして、1作品で2度おいしいと感じました。犬川柳を通して感じた「柴犬あるある」のようなものはありますか?

 最初の頃の川柳は、編集部の方もわりとストレートに柴犬のことを詠んでいました。たとえば、柴犬同士が散歩で会うと、ほえてばかりでいつまでも友達になれないとか。「うちもあるある」と笑いながら漫画にしていました。

 けれど、当時の編集長の犬がだんだん老いていくと、編集長がちょっと寂し気な川柳を詠んでくるようになったんです。「いつまで一緒に歩けるのだろう」とか、「他界してしまったらペットロスになるんじゃないか」とか、心情に訴えかけてくるものが増えてきて。そんなときには寄り添い応援するつもりで漫画を描くこともありました。「気持ちわかるよ」と。

影山直美の犬川柳
©️Naomi Kageyama/影山直美の犬川柳

――影山さん自身が詠んだ「いつか会う その日に向けて 顔パック」も、クスッとして、でもちょっと泣けました。

 わが家の先代犬であるゴンとテツに向けて詠んだ句です。私が向こうに行って再会したときに、年を取った私をわかってくれなかったら寂しいので。

――影山さん自身が特に気に入っている作品があれば教えてください。

 ひとつは「犬と人 どっちが師匠で 弟子なのか」。

 漫画にも書いたのですが、私は犬にたくさんのことを教えられました。でも、いったい私は犬に何を教えてあげたんだろうと。お座りやお手を教えたりはしましたが、生き方は何も教えてあげられませんでした。川柳が言うように、本当にどっちが師匠で弟子なのか、と思い知りました。

「心では 介護してます おじいちゃん」も好きな作品です。

 犬は目で、耳で、家族のことをよく見て、飼い主の体調が悪いときには心配もしています。飼い主が面倒をみてあげていると思いがちですが、実はそうじゃないんだなって。

――読者にどんなふうにこの本を楽しんでほしいですか?

 犬川柳の連載バックナンバーでは、川柳と解説文を編集部が書き、私が漫画を描いていたのですが、今回の単行本では、解説文を私が書きおろしました。そこには、私の犬に対する考え方、犬との思い出なども書いてありますので、川柳と漫画、そしてエッセイのセットとして読んでいただけるとうれしいです。

『影山直美の犬川柳』
©️Naomi Kageyama/影山直美の犬川柳

『影山直美の犬川柳』
絵と文:影山直美
出版社:辰巳出版
価格:900円+税
96ページ、A5版
(書影をクリックすると、アマゾンにとびます)
油科真弓
信州の山里で動物が身近にいる環境に育つ。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライター兼編集者に。雑誌や書籍、企業広報誌、ネットなどで編集・執筆を行う。猫と着物が好き。20年以上を共にした猫3匹を看取り、現在は保護猫3匹と生活中。人慣れいまいちの2匹を抱っこすることが、今の夢。

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