杉本彩さん、犬猫の繁殖業者への数値規制案に「改善が必要、諦めず要望を続ける」
俳優としてテレビや映画、舞台などで幅広く活躍する杉本彩さん。動物愛護活動にも力を注いでいます。ペットを巡る今の状況をどう見ているのか、思いを聞きました。
妊娠した猫を拾い、出産を迎えたことも
――動物愛護活動を始めたのは、いつごろからですか。
20代の頃から猫を拾っては育て、病気があれば治療を受けさせ、飼い主を見つけて譲渡する……ということを続けてきました。仕事も忙しかったですが、楽しみながらやっていました。
二子玉川のデパートの前で妊娠している猫を拾い、家で出産を迎えたこともあります。朝起きたら3匹生まれていて感動したのを覚えています。近所の人たちのサポートも受け、動物愛護活動にやりがいを感じるようになりました。
――今飼っているペットは?
猫が6匹と犬が2匹います。最年長は18歳で、猫はいずれも10歳以上。老犬老猫ホームみたいな感じですね(笑)。一番多かった時は、犬が3匹、猫が10匹の計13匹いました。これまでにみとった子、譲渡して見送った子は数えきれないほどです。
高齢になるほど病院へ通院する回数も増えるし、暑い時期だと日が昇る前に散歩に行かなければいけない子もいます。お金と労力はかかります。今回のコロナ禍で新たに動物を迎える方も多いと思いますが、そういう面も知ってほしいです。
――コロナ禍で生活は変わりましたか。
これまでは仕事で東京に通うことが多かったのですが、ほとんどの時間を京都の自宅で過ごしました。おかげで動物たちと一緒に過ごす時間が増え、病院通いや細やかなケアにも心を配ることが出来ました。
動物愛護に関する講演も芸能の仕事も多くがキャンセルになってしまい、経済的な影響は大きかったですが、動物たちと幸せな時間を過ごすことができました。
数値規制案、諦めず改善求める
――環境省は今夏、犬猫の繁殖業者やペットショップの飼育に関する数値規制の具体案を発表しました。
数値が具体的に示されたこと自体は、大きな一歩だと思います。ただ、動物福祉の観点から見たときに、その数値が適正なのかと言うと、すんなり「そうだ」とは言えません。
そこで、私たち「動物環境・福祉協会Eva」は小泉進次郎環境相に要望書を出しました。特に思いを込めたのは、人員の配置についてです。例えば販売業者が扱う際の基準が、従業員1人につき犬20匹、猫30匹は多すぎます。この基準では健康管理が満足に出来ません。実際に、この基準程度で飼育していて、何匹も死なせたと明かす店舗もあります。
販売は動物の餌やりや、排泄(はいせつ)の世話に加え、接客する業務です。そうした時間を考慮すると、1人につき10匹でなければ、現状を変えることはできません。優良ブリーダーやペットショップ従業員らから聞いた話、そして私自身の飼育経験を踏まえて、そう思います。
――規制案には、業者が犬や猫を飼育する際のケージの面積基準も示されています。
こちらも納得は出来ません。特に動物を管理するケージの高さは問題です。犬では体高の2倍とされていますが、これでは前脚を上げて自然に立ち上がることは難しい。跳躍することも考えると、そもそもケージに高さを設けること自体に無理があると思います。出産回数の上限値も含め、規制案に掲げられた様々な数値の改善が必要だと感じています。
今回示された規制案を、来年6月に省令として施行されるまでに大きく変えることは難しいかもしれませんが、今後も諦めずに要望を続けていきたいと思います。動物を巡る課題は根深く、消費者側の意識の変化も大事です。10年後には、さらに環境が良くなっているよう発信を続けていきたいと思います。
(聞き手・浜田知宏)
すぎもと・あや 1968年、京都府生まれ。テレビや映画で俳優として活躍。公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長。著書に「動物たちの悲鳴が聞こえる 続・それでも命を買いますか?」「ペットと向き合う」など。
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