ペットと快適な夏を過ごすために 専門家が教えるエアコンの上手な使い方
暑い季節にはペットにもエアコンが欠かせません。しかし、使い方を間違えたり手入れを怠ったりするとペットの健康を損なうこともあるようです。専門家の方々に、夏家電を上手に使うコツや注意点を聞きました。
エアコンを上手に使うには
熱中症を減らし、死者をゼロにすることを目指すプロジェクト「熱中症ゼロへ」を進める日本気象協会の調べ(2018年度)では、「屋内にいるペットが熱中症になることがあると知っている」と答えた人は52.9%でした。
そこで昨年、日本気象協会は日本動物愛護協会と協力して「イヌ・ネコの熱中症予防 対策マニュアル」を作成しました。予防対策の一つとして、「暑い時期の室内温度は26℃以下にする」と掲げています。
猛暑のなか、ペットにもエアコンは“必需品”なのです。
省エネしながらペットを守る
「熱中症ゼロへ」に、オフィシャルパートナーとして参加している、大手家電メーカーの東芝ライフスタイル(エアコン〈大清快〉)の担当者に話を聞いてみました。
東芝ライフスタイルのエアコン担当者は、エアコンを快適に使うために、まずは「フィルターの掃除をこまめに行うこと」を薦めています。フィルター掃除をせずにゴミやほこりなどが詰まると効きが悪くなって、「電気代が約5~10%のムダ遣い」にもなるからです。
「室外機の吹き出し口に物を置いてふさいだりしないようにご注意ください。冷暖房の効果を弱め、これも電気代のムダにつながります。また、夏は直射日光を防ぐようにカーテンを閉めたりブラインドを下ろすことで、省エネになります」(東芝ライフスタイルの担当者)
フィルターが汚れていると犬が気管支炎になったり猫喘息の原因になる可能性がある、と指摘する獣医師もいるので、掃除には気を配りたいものです。
便利機能には注意も必要
エアコンは進化して便利になっています。たとえば、人の動きを検知して省エネ運転するセンサー。こうした機能の使い方には注意も必要だと東芝ライフスタイルの担当者はアドバイスします。
「たとえばセンサーで人を判別して運転制御する機能は、小動物に対しての判定はできない場合があります。留守番させる時などは手動でエアコンの調整をお願いします。弊社が昨年発売したエアコンには“風を感じにくくさせながら部屋を涼しくする”という無風感冷房機能が付いたモデルもあります。在宅ワークで自宅でも長時間冷房の風にあたり続けるケースが増える中で、こうした機能は重要だと考えています。ただし無風感冷房もペットでの検証はしていません」
エアコンはそもそも人間のために作られているので、ペットに使う時には飼い主責任となるのです。そこを自覚しながら上手に使うのがポイントです。
停電のようなアクシデントが起きると心配ですが、(停電が)復旧した時に運転を自動的に再開する機能が付いたメーカーもあります。東芝ライフスタイルの担当者は次のようにアドバイスをしています。
「弊社では、停電からの復旧時に自動的にエアコンの運転が再開するオートリスタート機能が全機種についていますが、工場出荷時には設定されていないので、(ご自宅で設置時に)設定する必要があります。メーカーによって付いている機能や使い方が違うので、説明書をよく読んでみてください」
遠隔操作できるエアコンは「必需品」
初夏からエアコンをフル稼働している方も多いかもしれませんが、もし買い替えるような時には少しでもペットに優しいものを選びたいものです。
家電ジャーナリストの安蔵靖志さんは、最近のエアコンについてこう話します。
「エアコンの流行は、AIの自動運転と清潔性を保つこと。各社とも特徴があります。日立は凍結洗浄で菌をきれいにして風を清潔にしたり、シャープはフィルターを搭載して空気清浄機としても使えるようにしたり、ダイキンは外の空気から湿気をとって加湿ができたり。ペットのことを考えると空気清浄機付きなどよいですが、それぞれのペットの状態に合わせて機種を選ぶといいですね」
とくに、外出先からスマホで遠隔操作ができるWi-Fi 対応のエアコンは「ペットがいる家には必需品」と安蔵さんは言います。
「以前、うちにも小型犬がいましたが、愛犬のために初夏から25℃くらいにして、外出先からこまめにスマホで室温をチェックしていました。ペットがいる家でエアコンを買うなら遠隔操作はあたりまえの機能でしょう。今使っているエアコンに遠隔操作の機能がなければ、Wi-Fi環境を整えて“スマートリモコン”を後から買えばどんな機種にも対応できますよ」
スマートリモコン活用も
スマートリモコンは家電リモコンとも呼ばれ、家電のリモコン機能を1台に集約できるアイテムです。Wi-FiやBluetoothに対応してスマホのアプリで家電を操作します。
「最低限として温度センサー、できれば照度センサー(部屋の明るさなどを確認できる)も付いているといいですね」
ペットカメラと合わせれば、より安心感が得られそうです。
「スマートリモコンのメーカーは、プラススタイル、ラトックシステム、ネイチャーリモなどがあります。相場は1万円前後。もし外出時にペットカメラがダウンしているようならば、ブレーカーが落ちたりしている可能性もあるので、家にすぐ帰ろうと予定を変更できる。そうしたセキュリティーを考えたら決して高い買い物でないと思います」
扇風機でペットは涼しくならない
サーキュレーターや扇風機を持っている方も多いでしょう。ペットが快適に過ごすにはどのように使えばいいか、あらためて安蔵さんに聞いてみました。
「サーキュレーターと扇風機は風の種類が違います。サーキュレーターの風は強く押し出すように遠くに届く。扇風機は弱く広く、近場に風が送られます。サーキュレーターはエアコンから出た冷気を動かし、部屋の温度を一定にするのに役立ちます。一般的にはエアコンの対角線上に置いて、吹き出し口に向けるといいと言われますが、ペットがいる所に熱がこもっていれば、その方向に向けて風を届けるようにすればよいと思います」
冷気は下にたまりがちなので、たとえばキャットタワーのいちばん上にサーキュレーターを向けることで、エアコンの風を巻き込んで涼しくすることもできます。
「きめ打ちをしたり、首振りにしたり、部屋の広さや状況に合わせて工夫をしてください」
一方、扇風機ではペットが涼しくなることはない、といいます。
「扇風機は風が人の肌に当たることで気化熱が発生して涼しさを感じますが、ペットは汗腺がないので、汗が気化せず体温は下がりません。扇風機でペットを涼しくするというより、(外にいるときのような)風のゆれを感じることができる、と考えたほうがいいでしょう。風が当たることを好まないペットもいるので、自由に部屋を移動できるようにすることも大事ですね」
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