奄美のノネコ、110匹捕獲 生息密度低下に環境省「一定の成果」

 

<ケナガネズミをくわえる猫> 希少動物、国の天然記念物ケナガネズミの被害も確認されている=奄美大島、環境省提供
<ケナガネズミをくわえる猫> 希少動物、国の天然記念物ケナガネズミの被害も確認されている=奄美大島、環境省提供

 奄美大島(鹿児島)の希少動物を襲う野生化した猫(ノネコ)について、環境省が2018年7月から始めた捕獲事業の実績は今年11月末まで(17カ月間)で110匹だった。当初の予定より少ないが、捕獲した地域でノネコの生息密度に低下傾向がみられるとし、同省は「一定の成果は出ている。より効率的な捕獲手法の確立に取り組む」とする。

 12月24日に奄美市であった専門家による捕獲状況の検討会で同省が報告した。

 報告などによると、作業員3人で島内の山中のうち約16平方キロを対象に捕獲を始めたが、「月30匹」との当初目標を大幅に下回る状況が続き、態勢を強化。現在は約80平方キロに300基のワナを設けて6人で作業し、ノネコの目撃情報があった地点にワナを置く「ピンポイント捕獲」も行い、19年11月末までに110匹を捕った。このうち、途中で死んだ2匹以外はすべて市民ら希望者に譲渡されたという。

 自動撮影カメラによる分析では、捕獲する地域でノネコの生息密度の低下が読み取れた。一方、捕獲地域に新たに現れる個体も確認され、捕獲した110匹のうち約1割は集落で捕獲され不妊去勢手術が施された個体だった。人里の野良猫が山に入ってノネコ化するとされ、その対策の重要性を示すデータといえ、同省は「捕獲に加え、ノネコの『供給源』となる(人里の)猫の管理対策も大きな課題」と説明した。

 検討会では、ノネコの捕獲に伴い、国天然記念物アマミトゲネズミ計217匹が誤って捕獲(混獲)され、うち1匹が死んでいたことも報告された。同省は、ワナにネズミが逃げられる穴をつけるなどの改良を進めるが、検討会委員からは「(17カ月間で)死んだトゲネズミが1匹、というのは極めてまれな事例。ノネコによる被害はもっと深刻だ。混獲への過剰な配慮で、ノネコ捕獲への悪影響が出ないようにしてほしい」との注文がついた。

 検討会の座長で東京女子大の石井信夫教授(保全生態学)は「現状の捕獲はまだ地域限定で行われている。効果的な手法を確立させた上で全島的な捕獲に乗り出すことになるだろう」との見方を示した。
(外尾誠)

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