猫城主「さんじゅーろー」城下にもにぎわいを 謎解きで街歩き

備中松山城でくつろぐ城主のさんじゅーろー(高梁市観光協会提供)
備中松山城でくつろぐ城主のさんじゅーろー(高梁市観光協会提供)

 昨年の西日本豪雨後に岡山県高梁市の備中松山城にすみ着いた猫城主「さんじゅーろー」。人気にあやかり、城下の街にもにぎわいを広げようというイベントが盛況だ。さんじゅーろーを巡る謎解きをしながら街を歩くというもので、飲食店も特別メニューを取りそろえた。11月4日まで。

 さんじゅーろーは茶トラの雄猫。市内で飼われていたが、昨夏の豪雨直後に迷い猫となり、1週間後、城内にいるのが見つかった。以降は城に居ついたが、昨年11月に「失踪」。すぐに見つかって12月に正式に城主として入城した後は、城内見回りを役目として過ごしている。

 堂々とくつろぎ、観光客に臆せず近づき愛敬を振りまく城主っぷりがSNSなどでも人気で、入場者数は好調が続いているという。

最初の捜索ポイント・高梁市郷土資料館そばに潜む猫がヒントをくれる
最初の捜索ポイント・高梁市郷土資料館そばに潜む猫がヒントをくれる

 イベントは「高梁ナゾ解き&マチ歩き さんじゅーろーをさがせ!」。さんじゅーろーが再び備中松山城を逃げ出し、城下に遊びに行ったという設定の謎解きゲームだ。舞台は城から2キロほど離れた市中心部で、JR備中高梁駅に隣接する市図書館を起点に始まる。所要時間は約2時間。

 さんじゅーろーが残したとされるメモを、街に散らばる「おともだち猫」がくれるヒントを手がかりに読み解き、居場所を突き止める。高梁市郷土資料館など市中心部の施設や城下町の風情あふれる美しい町並み、郷愁をそそる路地などをぐるりと巡ることになる。自然に観光ウォーキングができる仕組みだ。

武家屋敷の中で、「おともだち猫」が出す謎の答えを探す参加者たち
武家屋敷の中で、「おともだち猫」が出す謎の答えを探す参加者たち

 19日午後には、冊子を持った参加者たちが市中心部のあちこちに出没。地元の人は「さんじゅーろー人気はすごいのぉ」と目を丸くしていた。夕方になると、ゴールの市図書館に、さんじゅーろーの行方を突き止めた参加者たちが証拠写真を手に列を作った。

 参加者にはイラストレーター「くまみね」さん作のイラスト入りクリアファイル、クリアした人にはキーホルダーが贈られる。大人1200円、18歳以下800円。施設入場料別。

 イベントに合わせ、市中心部の飲食店などで「高梁街バル」を開催中だ。キャラメルソースなどで毛並みとしましま模様をイメージしたさんじゅーろーカクテル、白玉で猫の肉球を表現したパフェなど特別メニューを用意している。イベント、バルともに問い合わせは市観光協会(0866・21・0461)へ。
(菅野みゆき)

「愛くるしい姿で多くの人を魅了」、副賞は高級フード

 さんじゅーろーは「愛くるしい姿で多くの人を魅了し、豪雨後激減した観光客数をV字回復させた」として、備中県民局から「地域づくり推進賞」を受けた。

 西日本豪雨が起きた昨年7月、備中松山城の登城者は1181人と前年同月の約2割に激減。だがさんじゅーろーが城に姿を見せ、話題になるとぐんぐん回復し、10月には7336人と前年同月を上回った。

備中松山城で地域づくり推進賞の副賞を受け取ったさんじゅーろー(高梁市観光協会提供)
備中松山城で地域づくり推進賞の副賞を受け取ったさんじゅーろー(高梁市観光協会提供)

 さんじゅーろーは「見回りのため城を離れられない」として9月末の表彰式を欠席。市観光協会の担当者が水田健一局長から表彰状を受け取った。水田局長は表彰式後に登城し、さんじゅーろーに副賞の高級キャットフードを届けた。

 登城者数の最高は2016年度の10万6千人。今年度は9月までに5万4千人を超え、更新が期待されている。

城主就任までを描いた本も出版 

 さんじゅーろーの城主就任までを描いた児童書「備中松山城 猫城主 さんじゅーろー」(ハート出版)が出版された。筆者の作家、西松宏さん=福岡市=が撮影した写真などを多数使い、市の復興ぶりなどを描いた。報道などでさんじゅーろーの存在を知り、執筆を思い立ったという。

出版された「備中松山城 猫城主 さんじゅーろー」
 
出版された「備中松山城 猫城主 さんじゅーろー」  

 11月4日まで高梁市図書館で、西松さんの写真展が開催中。児童書はA5判136ページ。市観光協会や全国の書店で販売している。

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