茨城県、「譲渡不適」の犬猫を殺処分数から除外 判断指針を作成

 犬猫の殺処分「実質ゼロ」を掲げる茨城県は、「攻撃性がある」などとして「譲渡不適」と判断して殺処分した数を、従来の殺処分数のカウントからは除外する方針を決めた。「譲渡不適」などを除いた範囲で「殺処分ゼロ」をめざすという。

 環境省は全国の自治体に対し、2015年度分の調査から、これまで「殺処分」として報告していた数の内訳を(1)攻撃性があったり、治癒する見込みがない病気があったりするなどで「譲渡不適」、(2)病死や老衰を含む「収容中死亡」、(3)それ以外の「その他」、の3区分に分類して報告するよう求めている。

 県は環境省の分類に沿う形で今年度から殺処分数の削減目標の範囲を変え、(1)(2)を除いた(3)のみの数をカウントすることにした。東京都は同様の数え方で、18年度に「犬猫殺処分ゼロを達成」と発表している。

 ただ、「殺処分ゼロ」が目的化し、恣意(しい)的な集計によって殺処分数を少なく見せる事態を懸念する声もあるため、県は県動物指導センターに収容された犬について、譲渡適性を客観的に判断するガイドラインを独自に作成し、6月から運用を始めた。

 ガイドラインによると、犬はセンターに持ち込まれた日のうちに健康状態や人への攻撃性、人を恐れているかなどを1次判定。収容から8日目以降に、複数の職員の目でより具体的な基準を用いて2次判定を行うことで、適性判断の客観性の確保をめざすという。

 県生活衛生課によると、県内の犬猫殺処分数は、08年度の9028頭から減少傾向にあり、18年度は446頭。このうち犬の「譲渡不適」は155頭、「収容中死亡」は62頭、「その他」は18頭だった。猫は「譲渡不適」が11頭、「収容中死亡」が200頭、「その他」はゼロ。一方で、18年度にセンターに収容された犬猫は3千頭近かった。

県の犬猫殺処分頭数の推移
県の犬猫殺処分頭数の推移

 先月下旬に新方針を発表した大井川和彦知事は「処分頭数を減らすためには、センターに持ち込まれる犬猫をそもそも減らすということが重要」と述べ、飼い主が犬猫の所有者明示を徹底することや不妊去勢手術の実施、猫はなるべく屋内で飼うことなどを求めた。
(佐藤仁彦)

NPO、廃止求め意見書

 特定非営利法人「動物愛護を考える県民ネットワーク」(つくば市)は3日、県が策定した犬の譲渡適性に関するガイドラインの廃止を求める意見書を県に出した。

 理由として、外部の意見を聞かずに拙速につくられるなど策定過程が不透明▽殺処分にカウントしない「譲渡不適」の判断が恣意(しい)的に行われる恐れがある▽真の殺処分ゼロに向けた施策になっていない――などを挙げた。

 同ネットワークは「自治体にこのようなガイドラインの策定が広がれば、実際には殺処分が続いているのに数字上の『ゼロ』だけが増えることになる」としている。

朝日新聞
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