しっぽフリフリ、心を癒やすロボット 犬?猫?不思議な存在

 しっぽのついた、丸いクッション。クッションをなでると、しっぽが動く。へんてこな生き物のようなこの物体の正体は、セラピーロボット「Qoobo」(クーボ)だ。昨年の発表以来人気を呼び、秋に発売された後は、新規に取り扱いたいという要望も多く、製造が追いつかない状態だという。発案者に、誕生の経緯を聞いた。

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「ずっとほしかった癒やしの存在」

 Qooboを発売したのは、コミュニケーションロボットなどの企画や開発、販売を手がける「ユカイ工学」(東京都)だ。価格は1万2千円(税抜き)で、色はグレーとブラウンの2色。名前のQooboは、フランス語でしっぽの意味の「クー(Queue)」と、ロボット「Robot」を組み合わせた造語だという。

 誕生のきっかけは2017年春、同社の合宿だった。「ずっとほしかったもの」というお題に、エンジニアなど4人でつくるグループが取り組んだ。そのうちの一人、当時入社2年目だったデザイナーの高岡尚加さん(28)が、「家に疲れて帰ったときに、癒やしの存在がいてくれたらいいな」と提案したことが始まりだったという。

クラウドファンディングで1000万円以上調達

 社内で「ぜひ作ってみよう」と声があがり、製品化が決まった。同社は17年10月、千葉・幕張であった先端技術の見本市「シーテック」でQooboを発表。プロモーション動画は発表から1週間で1千万回再生された。10月19日に開発費を調達するためクラウドファンディングを始めると、40日あまりで908人から目標の2倍以上、1236万156円が集まった。

 その年12月末に予約販売受付を開始すると、国内外から5000台の申し込みがあった。「初めてクラウドファンディングに参加しました」「予約販売に申し込みたいけど、ネットで買い物をしたことがないのでどうしたらいいの?」といった問い合わせが同社に寄せられた。高岡さんは「いままでロボットに馴染みがなかった人も、関心を持ってくれているのでは」と感じたという。

まるで動物みたい(ユカイ工学提供)
まるで動物みたい(ユカイ工学提供)

 そして18年11月1日に、店頭やネットで発売を開始。SNS上では「しっぽの先までなめらかに色んな方向に動いて生き物感すごい」「猫飼いたいけどアレルギーで飼えない旦那さんにぴったり」といったコメントが寄せられている。同年12月からはアメリカでの取り扱いも始めた。

リアルなしっぽの動き

 目を引くのは、そのしっぽの動きだ。ゆったりと左右に振ったり、くるくると回したり。製品化にあたって、エンジニアが動物園に行っていろんな動物のしっぽの動きを撮影して調べたり、みんなで犬や猫のしっぽの動きを観察したりしたという。その上で、こう触ったらこう動く、と考えていった。

 Qooboのクッション部分にセンサーがあり、揺れや傾きなどから、なでられかたを感知する。なでられ方と、充電が足りない場合の「お腹がすいた」、長く触られ続けると「疲れた」といった、「機嫌」にあわせてしっぽの動きが決まるという。

 実際に触れてみると、まるで猫をなでているような、なめらかな触り心地がする。なでているだけでも気持ちが良くて、ついつい長く触っていたくなる。

なでるのも気持ちがよい
なでるのも気持ちがよい

 見ようによっては、オタマジャクシのような外見のQoobo。なぜ顔がないのだろう? 高岡さんは「想像にゆだねる形にしました」と話す。顔には好みがある。犬か猫か、犬ならどんな犬か。自分の好きな顔があるため、あえてなくすことで、それぞれの人の想像に任せているという。

 鳴き声がないのも同じ理由だ。犬だと思っていたのに猫の鳴き声がしたら、持ち主の想像とずれてしまう。「犬であり、猫であり、それ以外でもある。ふんわりした存在です。想像する『余白』をなるべく残しました」と高岡さんは話す。

Qooboと昼寝もいいかも(ユカイ工学提供)
Qooboと昼寝もいいかも(ユカイ工学提供)

トリセツにまでこだわり

 工夫は、取り扱い説明書にもある。充電は「エサ」、スイッチを切ることは「寝かせよう」。不具合は「病気かな?と思ったら」という具合だ。モーターや電池が消耗するため、動物と同じように「寿命」があることも紹介している。「ロボットだけど、いきもののように扱ってほしい」という思いを込めて、こんな表現にしたという。

 製品化に当たっては、耐久性やしっぽの動きと、価格とのバランスが難しかったという。高価になれば、耐久性もあり、動きのいいものが作れる。一方、ロボットになじみがない人にも利用してもらいやすくするため、価格は1万円前後にしたかった。改良を重ねて現在の形にたどり着いた。

 こうして生まれたQoobo。高岡さんは「なでれば動くので使い方は簡単。国籍も年齢も関係なく使ってもらえるロボットです。ぜひ気軽に手にとってみてほしい。そして生き物のようにかわいがってもらえると嬉しい」と話している。
(磯崎こず恵)

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sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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