人気猫「くまお」の意外な一面 2匹目を迎えて生まれた変化とは

左がくまお(8歳/オス)、右がこぐま(1歳/メス)
左がくまお(8歳/オス)、右がこぐま(1歳/メス)

 SNSから人気が広がり、女性誌の表紙を飾った元保護猫のくまお。猫らしからぬどっしりとした風貌にビビリな性格が魅力のくまおのもとに、約1年前、妹分となる“こぐま”がやってきた。こぐまも元保護猫で、言わずもがな“くま”だけれども“ねこ”。2匹目を迎え入れた理由やうまくいくコツ、どんな変化があったのかなど、飼い主であり一般社団法人くまお代表の鎌田さんに伺った。

(末尾に写真特集があります)

 もともと大の猫好きの鎌田さんは、いつかもう1匹、保護猫を引き取りたいと思っていた。出会いは突然、インスタグラムのフォロワーからの何げないメッセージで動き出した。

「ある日『くまおさんに似てる子がインスタに載っている』と連絡をいただいて。譲渡先の募集をしているアカウントを見たら、くまおと同じ泥棒ひげの模様の子猫がいたんです。直感で『この子ならくまおとうまくやっていける』と。引き取りたいと思い、すぐに家族会議をしました」とその時の心境を鎌田さんは語る。

 とうとう2匹目の猫を迎えいれるタイミングが来たと、気持ちは高ぶった。しかし、当時こぐまは生後5カ月。やんちゃ盛りの子猫と、臆病でおっとりとした成猫のくまお(8歳)は仲良くなれるのか、ストレスでくまおが病気にでもなったら……と不安もよぎる。追い打ちをかけるように、くまおに会ったことのある友人からは反対の声もあった。

 その時、大切にしたのは“先住猫を尊重すること”だった。もし、くまおと相性が合わなければ引き取りはできない、と募集元にも事情を説明。さらに、くまおをよく知る動物病院の獣医師に、2匹目をどのように迎え入れたらいいか相談した。

「先生に教えてもらった手順はいくつかありましたが、2匹の様子を見ながらステップを踏んでいくのがポイントでした。猫同士も第一印象が重要だからいきなり会わせずに、最初は気配だけ感じさせ、次にそれぞれの匂いの付いたものを嗅がせて、キャリー越しに面会させるという順番です」

何でも乗りたがるこぐま
何でも乗りたがるこぐま

 こぐまは、同時に保護された3匹の中でも、後ろに隠れてしまうような子で、その雰囲気の後押しもあり、2週間のトライアルが決定。早く2匹を会わせたい、はやる気持ちを抑えて、焦らずゆっくり。いざ、くまおとこぐまの初対面の時――。

「こぐまをキャリーに入れて対面させたんですが、くまおは穏やかな優しい顔でこぐまのことをじっと見つめていたんです。キャリーの前でちょこんとお座りして。こぐまはシャーシャー威嚇してましたけど(笑)」。くまおの反応は申し分なかった。

 その後もくまおの環境は変えずに、少しずつ2匹が同じ空間にいられる時間を増やしていった。最初こそ距離のあった2匹だが、一緒に遊べるようになるまで数カ月、飼い主たちの心配をよそに仲良くなっていく。

 くまおの意外な一面も知ることができた。「くまおがこぐまの教育係りをしてくれたんです。こぐまが壁を引っかいたり、私の手をかんだりすると、止めてくれたんですよ。知らない人の顔をまともに見られないほど臆病な子なのに、こんな一面があったとは! 野良猫時代に猫社会で暮らしていたんだろうなぁと、過去がのぞけた気がしました」

「こぐまのいえ」の入り口は小さすぎてくまおは入れず…
「こぐまのいえ」の入り口は小さすぎてくまおは入れず…

 威嚇していたこぐまは徐々に落ち着き、いつしかくまおに「遊ぼう!」とちょっかいを出して追いかけっこをするように。そして、スリムなこぐまは、くまおの入れない狭い隙間に逃げ込むという、頭脳プレーを繰り出すまでになった。「猫同士でイキイキと遊んでいる姿を見られることが、多頭飼いになっていちばんうれしいことですね。幸せをかみしめています」と鎌田さん。

 2匹目を迎え入れたことで、鎌田さんの心境にも変化があった。

「今思うと、以前はくまおに依存しすぎていました。愛情が重すぎたかも(笑)。外出中も早く帰宅しなければと焦ったり、心配が絶えなかったんですが、こぐまが来て猫同士でいられることがわかったら、気持ちがラクになったんです。夫のサポートのおかげもあり、今は仕事も保護猫のイベントへも、気兼ねなく行けるようになりました」

 SNSでは毎日、くまおとごくまの愛らしい姿を見ることができるが、鎌田さんが日々発信し続けているのは、猫の可愛さやおもしろさを伝えるためだけではない。「保護猫の存在を多くの人に、正しく、楽しく、知ってもらいたい」という思いが根底にあるからだ。そのため『一般社団法人くまお』を立ち上げ、動物保護団体への支援や、保護猫の啓蒙活動をしている。(※近日開催のイベントは文末へ)

2匹ともTNRをしたさくらねこ
2匹ともTNRをしたさくらねこ

 直近のこぐまの成長ぶりを尋ねたら「くまおに似て“なでられ好き”になってきた、少し大人になったのかも」と鎌田さん。念願だった、2匹がくっついて寝る姿も見られたとうれしい声も聞けた。妹のこぐまよ、これからも兄の背中を見て、のびのびと育つのだよ。

手前がくまお、奥がこぐま
手前がくまお、奥がこぐま

写真提供:一般社団法人くまお、猫ノ図書館

■くまおのイベント概要

猫ノ図書館 開設2周年記念
『くまおが山からおりてきた展〜くまおの岩手奥州場所〜』
ネコもSDGsパネル展
場所:岩手県奥州市立胆沢図書館
会期:1月12日(土)〜2月24日(日)

 

『くまおが山からおりてきた展〜くまおの仙台場所〜』
場所:宮城県仙台市 arrondissement
会期:1月27日(日)

 

『ちよだ猫まつり2019』
場所:千代田区役所1階、4階
会期:2月16日(土)、17日(日)
人気猫のぐっぴーとともに「ぐっぴーとくまお部屋」として参加

 

いずれも保護猫のことを楽しく知ることができるイベントで、写真展示やグッズ販売、トークイベントなどが開催される。詳細はくまおの公式サイトへ。

小見山友子
2020年4月~sippo編集部に所属。 ファッション業界に従事後、オウンドメディアの編集長をする傍ら、2014年にWEBマガジン「INUTONEKOTO」を主宰。2015年にフリーライター・編集者として独立。ペット、ファッション、旅、サーフィン関連の執筆、編集をしている。instagram @tomokokomiyama

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