猫本5千冊、雑貨ずらり…ネットで話題の猫書店が実店舗
猫好きにはたまらない。本好きにも朗報だ。猫も本も好きなら言うことはない。そんな本屋さんが福岡市の路地奥にオープンした。猫専門書店としてネット上で話題を集める「書肆(しょし)吾輩堂(わがはいどう)」のリアル店舗だ。
かつては下宿
NHK福岡放送局に近い福岡市中央区六本松の住宅街に、ひっそりと吾輩堂はたたずむ。まるでよそのお宅へお邪魔するような雰囲気だが、それもそのはず。かつては下宿だったという。店主の大久保京(みやこ)さん(52)が、みずからペンキやしっくいを塗って内装に手を加えた。
板張りの1階には、両サイドの棚に約5千冊の「猫本」が並ぶ。絵本や児童書も充実している。「昔から猫の出てくる児童書はとても多いんですよ。子どもたちというよりも、むしろ大人の作家さんたちの心をとらえているのだと思います」と大久保さんは言う。
ほかにもエッセーや写真集など多彩な分野が楽しめる。6割が古本だ。
2階は和室で猫の雑貨を置く。ポストカードや手ぬぐい、バッグやマスキングテープ、食器や置物、オリジナルの箸置きや一筆箋(せん)もある。部屋の中央にはこたつが置かれ、ビールやワインまで注文できる。「私だったらこたつでゆっくりしたいなあと思って」。そんな大久保さんの願いが形になった。
ネット上に猫の専門書店をオープンしたのは2013年のこと。「ありそうでなかった」と評判を呼び、全国から注文が舞い込んだ。一方で実店舗の要望も当初からあったという。「実際に手に取って見たいという声もたくさんもらった。ネットを使わない方たちのためにもお店は構えたいと思っていた」
近所の猫がちらり
街の古本屋が次々に店を畳み、ネット書店へと移行していくなかでの挑戦だった。そもそも、ネットで猫の専門書店を始めるだけで「何と無謀な」とささやかれた。それなのに、今度は実店舗までつくってしまったわけだから「周りはきっとあきれ果てているでしょうね」と笑う。
店内の棚や机は移転前の九州大箱崎キャンパスで使われていたものを再利用している。「まさか猫の本屋でまた使われるとは思っていなかったのでは」。年季が入り、傷も風合いも味わい深い木製の家具は、吾輩堂に温かく迎え入れられ第二の人生を謳歌(おうか)している。
「猫路地を 入ればそこに 吾輩堂」(大久保さん作)
猫路地とは、大久保さんが店の前の細い路地に付けた名前だ。近所の野良猫や飼い猫が行き来し、ガラス戸越しにちらりちらりと店内をのぞく。運が良ければ、猫路地を闊歩(かっぽ)する猫たちに会えるかもしれない。
(谷辺晃子)
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