猫の性格は毛柄で決まる? 大学で調査 飼い主との相性も

目次
  1. 「穏やかな茶トラ」は初心者向き
  2. 「ミケはお姫様、白猫は賢い」
  3. 人との相性もそれぞれ
  4. 性格には個体差、環境も影響

「茶トラはおっとり」「黒猫は甘えん坊」……。猫は毛柄ごとに性格が違うと言われます。でも、本当でしょうか? それを真面目に調べた研究があります。その調査を指導した元東京農業大学教授で、『トラねこのトリセツ』(東京書籍)などの監修がある動物学者の大石孝雄さんに説明してもらいました。飼い主との相性についても傾向があるそうです。

(末尾に写真特集があります)

 調査は、東京農業大学で首都圏の飼い猫244匹を対象にして飼い主にアンケートして、2010年にまとめたそうです。「おとなしい」「おっとり」「甘えん坊」「気が強い」など17項目について、それぞれ5段階で評価してもらったものです。

 茶トラ、茶トラ白、キジトラ、キジトラ白、ミケ、サビ、黒、黒白、白の9種類に分けて、平均値を出しました。数字が大きいほど、その性格の傾向が強いと考えられるそうです。

茶トラなど、猫の毛柄と性格。数字が大きいほど、その性格の傾向が強いという(「トラねこのトリセツ」から)
茶トラなど、猫の毛柄と性格。数字が大きいほど、その性格の傾向が強いという(「トラねこのトリセツ」から)

ミケなど、猫の毛柄と性格。数字が大きいほど、その性格の傾向が強いという(「トラねこのトリセツ」から)
ミケなど、猫の毛柄と性格。数字が大きいほど、その性格の傾向が強いという(「トラねこのトリセツ」から)

 トラ柄は毛色によって性格が少し異なるといいます。中でも「茶トラ」はフレンドリーで飼いやすいようです。

「トラの毛柄に共通するのは『甘えん坊』な面です。茶トラはわかりやすい結果で、『おとなしい(3.6)』『おっとり(3.6)』『温厚(3.3)』が、他の毛柄に比べて高く、『攻撃的』な面が一番低い。食いしん坊でもあるので、“おなかすいた”と上手に甘えながら人と共存してきたのかもしれません。穏やかな『茶トラ』は初めて飼う方に向きそうですね」

 トラの中でも「キジトラ」は原種とされるリビアヤマネコに似ていて、野生の本能がもっとも色濃く残っているといわれます。

好奇心旺盛といわれるキジトラ白
好奇心旺盛といわれるキジトラ白

「キジトラとキジトラ白は、『人なつこい』『好奇心旺盛』『賢い』面が目立ちます。キジトラの毛柄は、身を隠すのに好都合で自然界で生き延びやすく、ハンターとしても優れています。その利点がイエネコにも引き継がれたのでしょう。ただし、茶トラ同様『食いしん坊』なので肥満しやすい面も。サバトラのデータはありませんが、経験から、キジより消極的な場合が多いようです」

 ちなみに野良猫と放し飼い猫の調査では、510匹のうち約55%がトラ猫で、キジ(白含む)は164匹、茶トラ(白含む)は107匹。キジとトラの比較ではキジが倍(74:36)で、キジトラは全体でも32%を占めたといいます。

お嬢様気質だとされるミケ
お嬢様気質だとされるミケ

 ミケは遺伝子の仕組みからほぼメスに限られ、オスは3万匹に1匹しか生まれないとされています。

「ミケは人の好き嫌いがはっきりしていてマイペースなタイプが多い気がします。『甘えん坊』や『賢さ』が目立つ一方で、『気が強い』面も。わが家でもミケはパンチが得意で、猫からも人からも一目置かれる存在(笑)。毛柄の遺伝子から見るとミケに近いのがサビ(茶と黒のニケ)で、この毛柄もほぼメスのみ。サビはミケよりわがままで、『臆病』な傾向があります。ミケやサビとの付き合いは、お姫様に“仕える”楽しみがあると言えるかもしれませんね」

 ハチ割れなど、ブチ模様の猫は、色の割合で性格も違ってくるといいます。

「全体的にキジの結果と似ていて、ある意味、猫らしい猫、と言えるでしょう。口元にハートがあったり頭にかつらのような模様があったり、模様の大きさの違いが性格に影響を及ぼします。白い部分が多いブチ猫は、単色の白猫の性質に似ているかもしれません」

 同じ単色でも、白猫と黒猫では性格に違いがあるそうです。

「白猫で目立つのは『賢い』こと。自然界で、目立つ白い色で生き残るためには、慎重さ=賢さが必要なのかもしれません。同じ単色でも黒猫は『甘えん坊』な子が多いようです。黒猫はもらい手探しが大変という話も聞きますが、一度飼うと魅力にハマるようです。幸運のお守りという説もありますよ」

自然界で生き延びるために賢くなった?白猫
自然界で生き延びるために賢くなった?白猫

 飼い主のライフスタイルによって、合う猫と合わない猫がいるそうです。

「たとえば1人暮らしや共働きなどで一緒にいる時間が少ない場合は、活発すぎる猫より、おっとりした傾向の猫と暮らすほうが良いのかもしれませんね。臆病で神経質な傾向の猫は、騒がしい環境よりは静かな家の方が向くでしょう」

 猫の性格によって、飼い主に求められる資質もあるそうです。

「甘えん坊な性格の猫とは、しっかりコミュニケーションをとってあげてください。気分屋の猫の相手をするには、飼い主さんにもある程度の余裕が必要かもしれませんよ」

 個々の猫が持つ性格を見きわめて飼い始めることも可能です。

「成猫は性格がわかりやすいので、最近では譲渡会などでおとなの猫を迎える人も増えていますね」

◆飼い主の傾向と、相性の良さそうな猫の例

・甘えて欲しい ◎トラ猫全般、ミケ、黒、黒白
・猫と遊びたい ◎キジトラ、キジトラ白、黒、黒白など
・野生の本能を楽しみたい ◎キジトラ
・面倒見がいい ◎白
・のんびりおおらか ◎黒
・仕事で忙しくマイペース ◎ミケ
・猫と適度な距離を希望 ◎サビ
・1人暮らしや大人だけ ◎サバトラ、白
・初めて猫を飼う ◎茶トラ、茶トラ白

 なお、猫の性格には個体差があり、生まれ育った環境や、飼い主との関係からも影響を受けるといいます。また、猫の毛柄と性格の関連性については、色素を形成する遺伝子と感覚機能や行動、神経機能に関わる遺伝子との関係などが推測されていますが、詳しく解明されているわけではないそうです。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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