猫ミュージシャン「むぎ(猫)」が話題沸騰中 ライブは完売続出

 その名は、むぎ(猫)。「むぎかっこねこ」と読む。沖縄県うるま市に暮らすネコで、ミュージシャン。??と思うだろうが、いま、全国のライブハウスを中心に話題沸騰中だ。

 一度見たら忘れない。ライブを聴いたら、もはや脳裏から離れない。ネコの着ぐるみのような外観で、歌い、踊る。さらに巧みなマレットさばきで木琴を打ち鳴らす。ネコなのに。

 おまけにしゃべる。曲の合間に、日常のささいなことをユーモアたっぷりと打ち明ける。あぜん、ぼうぜんとする聴衆を、登場してからものの数分でとりこにしてしまう。

ポーズをとるむぎ(猫)
ポーズをとるむぎ(猫)

 歌うのは「るすばん天国」「どんなふうに」など自分で作詞、作曲したオリジナル曲が中心。ライブで確実に盛り上がる「アガってく音頭」では、ノリのいいリズムで地球温暖化を歌い、歌詞にもセンスが光る。素朴で飾らない歌声が、どこか懐かしさを感じさせる心地のいい旋律と相まって、唯一無二の世界観へと聴衆を引きずり込む。

 昨夏、国内最大級の野外音楽イベント「フジロック・フェスティバル」に初めて出た。見た目のインパクトもあり、大きな話題に。本番前にグッズのTシャツが売り切れるという珍現象まで起きた。「自分もびっくりした」とむぎは言う。

 このときグッズを買った福岡市の会社員の女性(51)は「ほんとに可愛くておもしろくて、人柄というか猫柄?もよくて。むぎちゃんがもっと有名になってくれるといいのに」とほれ込む。

ビームスジャパンの4階で開かれた「むぎ(猫)展」
ビームスジャパンの4階で開かれた「むぎ(猫)展」

 今春、東京・新宿のセレクトショップ「ビームスジャパン」では「むぎ(猫)展」が開かれた。同社の担当者は「ポップな見た目とは裏腹に、レベルの高い演奏技術などいい意味で期待を裏切られた」と話す。沖縄ではテレビCMにも登場し、至る所で異彩を放つ。

 1997年、東京都練馬区で生まれた。野良ネコだったが、すぐに飼い主の男性と巡り合う。そのころの飼い主は、沖縄から上京し、ホームシックになっていた。そんな心をいやしてくれたのがむぎだった。絆は深まり、都内や沖縄などでともに暮らす。

 2009年、むぎは病気で亡くなる。寂しさを募らせていた飼い主のもとへ、再び「現れた」のは5年後のこと。どうやら飼い主が手作りした新しい体を手に入れて、天国からこの世へ舞い戻ってきたらしい。

木琴を前にして歌い、踊るむぎ(猫)
木琴を前にして歌い、踊るむぎ(猫)

 体は約185センチと大きくなり、スタスタと立って歩けるように。喜んだ飼い主に言葉や木琴の技術をたたき込まれた。ライブ活動を始めたのも、バンドマンだった飼い主の影響だ。

 いま、ライブでは完売が続出している。11月4日には沖縄県営中城(なか・ぐすく)公園で開かれる「動物愛護の集い」でも歌う。目標は「ずっと歌い続けること」。地に足の着いたことを言うと、表情を引き締めた。ネコだけど。 (谷辺晃子)

朝日新聞
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