火葬、お墓は? 元気なうちに考えたい愛猫の見送り方、終活

元気なうちから考えたい愛猫の見送り方
元気なうちから考えたい愛猫の見送り方

 誰だって、亡くしたときのことなんて考えたくはない。だが、自分より先に逝く存在なのも事実。ペットロスを悪化させないためにも、知っておきたい「賢い見送り方」とは。

 グーグルで「ペット葬儀」と検索すると、約185万件もヒットする。「追加料金なし」「丁寧、安心のサービス」「業界最安値」の文字が躍る。贅沢なものでは、生演奏付きの音楽葬まであるそうな。一体何を基準に、どう選べばよいのだろうか。一般社団法人全国ペット霊園協会理事で「ペット葬祭センター 日本ペットセレモ」(横浜市)の代表取締役伊東正和さんは言う。

「トラブルになるのはあれこれ演出を加えて法外な金額を請求されたり、逆に安い業者を選んで、遺骨がどこに葬られたのか分からなくなったりするケースなどです。飼い主が自己嫌悪に陥って、ペットロスを悪化させるケースも見られます」

春秋のお彼岸時期に供養祭を開いたり、個別に法要を受け付けている葬祭業者も多い。キャットPaPaでは愛護団体やネコ作家のブース出展も(キャットPaPa提供)
春秋のお彼岸時期に供養祭を開いたり、個別に法要を受け付けている葬祭業者も多い。キャットPaPaでは愛護団体やネコ作家のブース出展も(キャットPaPa提供)

 悪徳業者の問題も報道されている。数万円の予算だったはずが、火葬する段階で数十万円の請求があり、やむなく支払った飼い主もいるという。ペット葬儀の「適正相場」はどう見極めたらいいのか。伊東さんは、

「ペット葬祭は地元密着のビジネス。その土地で古くから営業している企業があれば、そこの料金が基準になる。新規参入企業は何かしらの付加価値を用意したり、設備が新しかったりする分だけ割高になる傾向はありますが、内容が納得できるなら問題ないでしょう」

 伊東さんが注意を促すのは、近年急増している「移動火葬車」だ。ペット霊園や葬祭事業は自治体によっては条例で届け出が必要だが、移動火葬車は無届けの事業者が多いという。

「すべての移動火葬車が悪いとは言いません。お寺や教会で供養ができるか、霊園への埋葬が可能かなど、フォローはしっかりしているか。サービス内容を事前に確認しておくことが大切です」(伊東さん)

キャットPaPaで用意している「旅立ちグッズ」。もちろん、生前の好物やおもちゃなどを一緒に火葬することもできる(キャットPaPa提供)
キャットPaPaで用意している「旅立ちグッズ」。もちろん、生前の好物やおもちゃなどを一緒に火葬することもできる(キャットPaPa提供)

ネコ専門の火葬施設も

 東京都世田谷区の常福寺。その一角にあるネコ専門火葬施設「キャットPaPa」は、もとは12年前に移動火葬の「ペットPaPa」として始まった。

「ネコの場合、家ネコだけでなく野良や地域ネコなど、複数の方々が共同でお世話しているケースが多いんです。多様なネコと人の共生をカバーできるお別れがあってもよいのではと考えました」(代表取締役・高橋達治さん)。

 付き合いのあった常福寺に相談し、境内に火葬場を設置。希望すれば僧侶による読経も受けられる。ネコ専用納骨堂やガーデン式のペット霊園があるので、お骨はそこに納めることもできるし、自宅に持ち帰ってもいい。保護ネコや被災動物については料金の相談にも応じ、収益の一部を保護ネコ活動の団体に寄付している。

ワンハート・ストーンの一例。フルオーダーの場合は粘土で原型を作ってから制作にかかる。価格は16万円~(ワンハート・コミュニケーション提供)
ワンハート・ストーンの一例。フルオーダーの場合は粘土で原型を作ってから制作にかかる。価格は16万円~(ワンハート・コミュニケーション提供)

 人とペットが同じお墓に入れない霊園が多い中で、一緒に入りたいという人から注目されているのが、「ワンハート・ストーン」だ。ペットのモニュメントを石材で作り、そのおなか部分にお骨を納める。家に置いて心を慰めるだけでなく、飼い主の死後、ペットのお骨は一緒に入れない霊園でも、墓石の脇にオブジェとして置くことができる可能性がある。

 前出の伊東さん、高橋さんが口をそろえて語るのは、ペットが元気なうちからリサーチして、必ず見学することの重要性だ。

「適正な葬祭企業なら、施設見学を断ったりはしません。アクセスはよいか、スタッフの対応はしっかりしているか。ホームページの情報をうのみにせず、自分の目で確かめておくと安心です」(伊東さん)

 大事なペットを亡くした悲しみの中で葬儀をどうするかを考えるのは、飼い主にとって大きな負担になる。きちんとした判断もままならないだろう。まだ先だと思っていても、元気なうちから調べておきたい。

(ライター 浅野裕見子)

まるごと1冊「猫」を特集したAERA(朝日新聞出版)の増刊「NyAERA(ニャエラ)」から選りすぐった記事です。

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