「ふるさと納税」で猫を救う 殺処分ゼロの神奈川県も

保護センターの岩屋修さん。ネコたちの信頼は厚い
保護センターの岩屋修さん。ネコたちの信頼は厚い

 ふるさと納税は、地域の特産物など豪華な返礼品で有名になった。いまは、それだけではない。飼い主がいないネコも救えるのだ。

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 昼でも薄暗い曇り空に、冷たい風が吹き抜ける。それでも、気温の変化が苦手なネコたちの部屋は常に24度に保たれている。

 ここは神奈川県平塚市にある県の動物保護センター。自力で生きられない「乳飲みネコ」などを引き取る施設だ。もともと定員20匹だったが、11月末時点で42匹が暮らす。

「人口増」に伴って、別の用途だった部屋を片づけ、組み立て式のケージを並べた。ネコにとって大事なエアコンも設置。

 人に慣れてくると、この部屋に引っ越す。見知らぬ人が近寄っても、威嚇したり隠れたりすることはない。職員が時間をかけて警戒心を解いてきた。もうすぐ新しい飼い主を見つける譲渡会に出られる。

殺処分ゼロが3年続く

「職員たちの工夫でやりくりしてきました」

 所長の橋爪廣美さんが胸を張る。なにしろ2014年度以降、引き取ったネコの殺処分ゼロが3年続く。全国的にも誇れる実績だ。ほとんどが地域でネコを保護するボランティア団体を経由して、新しい飼い主のもとで再出発を果たした。

 ボランティアとの結びつきは強い。「譲渡会を開きたい」と相談されれば管轄の市町村と協力して、週末でも特別に庁舎を会場として利用させてもらう。

「交通の便がいい施設を使うなど、出会いの機会を増やすことが重要です」(橋爪さん)

 保護センターから協力を求めることもある。まちなかで保護されるネコの多くは生まれた直後だという。母親の育児放棄などとみられる。「乳飲みネコ」は、完全には体温調節できず、2時間おきにミルクを飲む。保健所や警察署から連絡を受けて収容しても、保護センターで24時間態勢をとるのは難しい。ボランティアに応援を頼む。「連れて帰れる人はいませんか」。ボランティア間で割り振りをして、離乳するまで育てる。

 この連携を築くには長い年月がかかったそうだ。だが、職員もボランティアも、殺処分したくない──めざす場所は同じ。

「徐々に互いの役割が固まってきました」(同)

6千件の寄付が集まる

 ただ、保護センターの施設は老朽化が著しい。開設は1972年。ネコたちの部屋も冒頭で触れたように「仮暮らし」といえる。そこで殺処分ゼロの達成をきっかけに15年、建て替え計画が動きだした。

 自然光がふんだんに降り注ぐように窓を配置するなど、保護センターが「殺処分から生かす施設へ」と軸足を移す象徴にした。「注目を集め、動物愛護の精神を全国に浸透させたい」(県生活衛生課副技幹の八木一彰さん)と、県外の住人も寄付できるふるさと納税の使い道に建設費を加えた。寄付すると所得税や住民税が軽くなるメリットもあって、6千件以上集まった。総工費18・3億円のうち、2・3億円を寄付金で賄う見込みだ。

 新しい施設には、引き取ったネコと譲り受けを希望する人が「お見合い」をする専用の部屋もつくる。細かい設計が決まった16年、ネットを使った資金集めのクラウドファンディングを活用。1カ月ほどで目標の500万円を突破した。

 保護センターと同種の事業は、全国の都道府県や政令指定都市などが手がける。ネコなどの保護や譲渡に加えて、地域のネコの繁殖を抑える不妊手術、飼い主に対する正しい飼い方の講習会といった活動がある。

 ふるさと納税で、こうした動物愛護の事業に寄付できる(表)。なかでも兵庫県、福岡市などではミルクボランティアの育成や支援も掲げる。神奈川県で活躍中の「乳飲みネコ」を自宅で育てる人たちだ。

 すべての自治体に広がる日が待ち遠しい。

【ネコのために寄付できる主な自治体】
北海道長沼町 保健所などから引き取り、新しい飼い主を探すNPOを支援
群馬県 地域のネコの避妊去勢手術、新たな飼い主を見つける
千葉市 譲渡の促進、正しく飼う知識の普及や啓発
川崎市 動物愛護センターでフードなどの飼育環境の充実を図る
名古屋市 子ネコのミルク、えさ、ペットシーツ、薬品の購入やボランティアの支援
三重県 飼い主がいないネコの不妊手術
京都市 動物愛護センターでの適切な飼養管理や譲渡の促進
大阪市 所有者が不明なネコの不妊去勢手術、譲渡会の開催
兵庫県 離乳前の子ネコを自宅で育てるミルクボランティアの育成
神戸市 譲渡の候補となる子ネコの不妊手術をはじめ健康管理
兵庫県尼崎市 のらネコの不妊手術
兵庫県明石市 設置予定の動物愛護センターで実施する譲渡推進
鳥取県倉吉市 のらネコの不妊去勢手術
山口県 譲渡、飼い主がいないネコの適切な飼養管理や繁殖制限
山口県防府市 のらネコの保護などを手がけるNPOを支援
福岡市 譲渡されるネコのフード、治療や不妊去勢手術で使う薬品の購入
佐賀県 ワクチン接種などの健康管理

(編集部・江畠俊彦、写真部・大野洋介)

まるごと1冊「猫」を特集したAERA(朝日新聞出版)の増刊「NyAERA(ニャエラ)」から選りすぐった記事です。

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