子猫のうちに学びたいこと? 動物病院の「子猫塾」を拝見

 犬と違って、猫はしつけができないと思われがちだ。だが、病院に慣らしたり、ひっかくなど問題行動を防いだりと、子猫のうちに猫と飼い主が身につけておきたいことはある。そんな子猫のための「子猫塾」を、もみの木動物病院(神戸市)が開いている。目的は「飼い主と猫がHAPPYに暮らせるように」。動物行動学が専門の村田香織副院長に、子猫のうちに学ぶべきことについて聞いた。

(末尾に写真特集があります)

タオルにくるまれると安心
タオルにくるまれると安心

なぜ子猫に「塾」が必要なのか

 子猫塾は、生後2ヶ月くらいまでの子猫を対象に開催されている。具体的な課題は以下の5つだ。

 ・猫のニーズを満たす
 ・人を噛まない、ひっかかない
 ・社会や病院に慣らす
 ・キャリーケースに慣らす
 ・ハンドリング(体を触る、爪切り、歯磨き、ブラッシング、投薬など)に慣らす

 昔のように猫は家の中と外とを自由に行き来させて飼われることは少なくなった。猫を室内で飼うことが増えるのと同時に起こりうる問題もあるのだが、子猫塾は、そうした問題が起こる前に対処することを目的にしているのだという。

病院での診察に慣れさせる方法

 子猫塾では、まず猫が病院で受診することに慣れるため、タオルにくるんで診察台の上でじっとさせる(保定)。タオルは猫の匂いがついたものを使い、「くるまれる=安心」と猫に思わせるのだという。

 本来の猫はネズミなどを捕獲してえさにしていたが、自然界では「食べられる側」でもあった。そのため、猫は押さえつけられるのが大嫌いで、それが知らない人ともなれば、より一層不快なのだ。治療時にはじっとさせる必要があるので、タオルにくるんで保定し、「病院はいいところだ」と思わせる必要がある。

 さらに、保定した状態で爪切りの練習もする。まず、敏感な足先を触るところから始め、慣れたら爪を切る。爪切りを無理やりすると、どんどん嫌がるようになるので、子猫のうちに慣れさせておくと、後々苦労しないのだという。

慣れると、キャリーの中って安心
慣れると、キャリーの中って安心

キャリーも「テリトリー」に

 診察台の上でのレッスンが終わったら、今度はキャリーに慣れる練習だ。猫はもともと縄張りを持つ動物なので、縄張りである「家」から出るのを嫌がる。しかし、キャリーに慣れて、「テリトリー」となると、ストレスがかかりにくいのだ。移動時のストレスを軽減するためにもキャリーに慣れさせると良い。

 病院に行く時はもちろん、ペットホテルに行ったり、入院したり、災害時に同行避難したりする時にも、緊張を和らげることができる。

 キャリーに慣れさせるためには、1日1回、キャリーの中で好きな食べ物を与えると効果的だという。子猫塾では、キャリーに入っている猫に缶フードなどを与える。キャリーは慣れたものを使い、さらに猫の匂いのするタオルを入れると落ち着きやすい。

十分な遊びが問題行動防止にも

 猫を飼っていると、ひっかかれたり、噛まれたりして困ることがある。これは猫にとっては、「遊びによる攻撃行動」なのだ。それを回避するには、以下のような対策が有効だという。

 ・手足を使った遊びをしない
 ・おもちゃを使って十分に遊ぶ
 ・人の手足に来た時は、動きを止めたり、手足を隠したりする
 ・運動不足解消のために多頭飼いする

 村田副院長は説明する。「犬は散歩に行きますが、猫は散歩に行かないので、ずっと家の中にいて、ストレスがたまりがち。刺激不足を緩和するためには、1日2~3回、十分遊ぶ必要があるのです」

 猫塾では、このほか猫のトイレや排尿・排便の適切な処理の仕方、尿スプレーの解決法、爪とぎの設置方法など、猫と一緒に楽しく暮らすために必要なことを教えている。猫と暮らすことがストレスにならないよう、生後2ヶ月までの子猫のうちから学ぶことが大切だ。

渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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