近寄りがたい?こわもて親分風の猫たち 岩合さん新作写真集
動物写真の第一人者・岩合光昭さんが撮影した日本と世界各地の“存在感抜群”な猫たち「親分」の雄姿を集めた「ネコおやぶん」(辰巳出版)が発売された。異色ともいえる写真集を企画した担当者に、思いや見どころを聞いた。
写真集の主役は世界の“ボス猫”たち。日本の海辺で、きりりと歌舞伎のような見得を切るネコの表紙をめくると、イタリア、アメリカ、ブラジル、キューバ、フランス、マルタ共和国……など、さまざまな国や地域に生きる“存在感ある”猫たちがお目見えする。
写真集は「ハマの親分」「食いしんぼう親分」「こわもて親分」「心やさしき大親分」「太っ腹親分」「あらくれ親分」「グータラ親分」「名物親分」「孤高の親分」「ひょうきんな親分」「北の親分」の12章で構成。
かっこよく偉そうなだけではなく、獲物を獲る時の必死の形相や、寝返りを打って階段から転げたりするなど、コミカルなシーンもある。
顔が大きいボス猫
本書を企画・編集した『猫びより』編集部の斎藤実さんは、連載で岩合さんの作品を多く目にするうちに、「顔が大きく強そうなボスらしい猫」が多く取材されていることに気付き、それが出版の引き金になったのだという。
「岩合さんはそもそも野生動物の写真家ですから、猫の可愛さだけでなく、強さや逞しさも見逃さない方です。“ボスらしい猫”に対して非常に強い思い入れを持っているように感じられたので、『おやぶん』というコンセプトは岩合さんと相性がいいのではないかと思いました。岩合さんにご提案したところ、幸いOKをいただきスタートしました」
本書で特に見てほしいところは?
「カバー、表紙、扉、目次、本文序盤6ページを飾るのは“キイロちゃん”という猫なのですが、鎌倉市のある漁師さんが面倒を見ています。去年の晩秋、岩合さんが『猫びより』のために取材をしてくださいましたが、キイロちゃんは犬が近づいても動じず、小さな子どもにも平然と頭を撫でさせるような、肝っ玉の大きな猫なのです。体型や眼光も逞しく、いかにも親分の風格がある猫で、まずは彼の堂々とした姿を堪能してもらいたいです!」
ページをめくると、喧嘩のシーンなどもある。可愛い系の写真集が多い中で、そうした“荒ぶる姿”は目を引く。
「一般論ですが、雑誌や写真集などのために猫の写真を選ぶ際、鋭い眼光のカットや怒っている姿などは、万人受けしないという理由からか、外されることが多い気がします。それを今回、意図して多めに入れ込みました。『こわもて親分』『あらくれ親分』のカテゴリでは、荒々しい猫の表情が堪能できるかと思います」
旅をするように、猫のいる街並や美しい自然も楽しめる。
「岩合さんの写真全般に言えることですが、それぞれの猫たちがそれぞれの土地に根差して生きる姿がしっかりおさめられています。同時に、人々との関係性、各地の文化と自然も同時に刻み込まれていると思います。ハワイで飼い主とサーフィンする猫、イタリアでサラミやスパゲッティをほおばる猫、モスクや博物館等の名所におさまる猫……。こうした写真は、コミカルで笑いを誘うと同時に、猫たちがしっかり地に足をつけて、人々と“共生している”という事実を認識させてくれます」
後書きには、岩合さんのこんなエピソードも。
〈偉そうにしているネコに「親分さん」と」声を掛けます。するとどうでしょう、満更でもない顔、そう、親分面をするのです。気位の高さを尊重しながら接すると。ネコ同士では出さない表情を見せてくれたりします〉
猫のあるがままの姿を大切にした“奥深い”写真集は、古くからのファンにも初めての人にも楽しめる一冊となっている。
辰巳出版 /B5変型版/128頁/オールカラー/価格1728円
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