ずっと地元を見守ってきたニャ 金刀比羅神社の「狛猫」
金刀比羅神社(京都府京丹後市峰山町泉)の境内には、狛(こま)犬ならぬ「狛(こま)猫」が鎮座する。猫が守ってきたものとは――。
峰山出身の絹屋佐平治が西陣からちりめんの技術を持ち帰ったのは約300年前のこと。その後絹織物は一帯の地場産業として発展した。養蚕業もさかんになったが、まゆやカイコを食べてしまうネズミの存在が悩みの種だった。いつしか、ネズミを退治してくれる猫が養蚕業の「番人」とされ、地元の糸商人や養蚕業者たちが「狛猫」を奉納したのだという。
宮司の脇阪卓爾さん(50)は「狛猫は200年にわたって峰山を見守り続けてくれた。いまも峰山に人を引きつけてくれる大切な存在なんですよ」と教えてくれた。
全国的にも珍しい狛猫を中心に地域おこしをしようと2011年に始まったのが「ねこプロジェクト」だ。峰山のホテルで女将(おかみ)をする田中智子さん(62)が、飲食店業者、アーティストたちに呼びかけた。府内で活動する美術家の池田修造さん(64)が狛猫をモチーフにした陶器の猫400個を制作。市内の小学生らが絵付けを手伝い、その年にあった神社の行事や年始年末に境内に並べられた。池田さんは「絵付けを通じて、子どもたちにも峰山の歴史を感じてもらえたと思う」と振り返る。
16年9月には、まち歩きイベント「こまねこまつり」が開催された。金刀比羅神社には、猫が描かれた「ねこ絵馬」が奉納され、境内には猫にちなんだアート作品などを販売する露店70店が並んだ。街の空き店舗ではアート作品が飾られた。SNSでも猫好きを中心に告知が拡散され、市内外から2千人以上が訪れた。
実行委員長を務めた田中さんは「イベントを通して、住民の地元愛が芽生えてきているのを感じています」と手応えを口にする。
(寺脇毅)
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