藤原智貴さん43歳 介助犬とサーフィン 両方の魅力を伝えたい

藤原智貴さん=岡山市
藤原智貴さん=岡山市

■「二つの顔」で認知願う

 昨年11~12月、米カリフォルニア州で開かれた障害者サーフィンの世界大会で部門別の4位に入賞した。

 障害がなかった25歳の時、職場の同僚に誘われ、鳥取県の海で初めてサーフボードに乗った。「行く前は波に乗っている姿しか想像してなかった。でも実際は立つまでが大変だった」。すんなり立てなかったことが悔しくて、のめり込んだ。

 休日になると海に通った。3年後に大会に出場。「大会でしか味わえない緊張感というか、アドレナリンが出る感じがすごい好きなんですよね」。アマチュアの大会からプロも参加する大会まで20以上の大会に出場した。

 鳥取県の海でサーフィンの練習をしていた34歳のある日。ボードから転落、海底で頭を打った。友人が気づいて引き上げ、病院へ。体はしびれ、呼吸も苦しかった。「頸髄(けいずい)損傷」だった。手術で一命を取り留めたが、医師からは「一生寝たきりかもしれません」と告げられた。

 入院しながら「いつ海に戻れるんだろう」と考えたが、もう歩けるようにはならないことに気づき、サーフィンも諦めつつあった。そんな時、動画サイトで車いす生活を送りながらサーフィンをしている米国人の選手を見つけた。「こうやってやるんだっていういい見本でした」

 でも、「家族に心配をかけてしまう。やりたいって言っちゃいけないなと思ってました」。友人の1人が「やろうよ」と何度も誘ってくれた。背中を押される形で、退院した1年後、海に戻った。

 障害者サーフィンの世界大会で4位になったが「次は優勝を目指したい」と意欲を語る。「この体だとちょっと頑張ったら、すごいと言ってもらえる。大会を見た人が感動して泣いてくれる。影響力の大きさに可能性を感じます」

 昨年2月、ラブラドルレトリバーの介助犬ダイキチ(オス、3歳)と生活を共にするようになった。県内初の介助犬ペアとして小学校などを訪れ、介助犬について紹介している。いつも一緒のダイキチについて「人に頼むと遠慮があるけど、ダイキチなら何回お願いしてもしっぽを振ってやってくれる。一緒にいて楽しいです」と語る。

 サーファーとしての自分と県内初の介助犬ペアとしての自分。二つの顔が相乗効果を生んでいると感じている。

「僕がサーフィンで活躍すればダイキチという介助犬を知ってもらえる。介助犬ペアとして活動すれば、サーフィンを知ってもらえる。どっちもたくさんの人に知ってほしい」と願いを込める。

 必要な人に介助犬が届くこと、障害者サーフィンがパラリンピックの正式種目になること。そんな目標を胸に、これからもダイキチと一緒に海へ出かける。

(本間ほのみ)

ふじわら・ともき
1974年6月、倉敷市生まれ。倉敷工業高校では卓球部だった。現在、岡山市と倉敷市で居酒屋を経営している。家族は妻と小学5年の息子と3年の娘。動物好きで小さいころは犬や猫、鳥、モルモットを自宅で飼っていた。スポーツ全般が好き。サーフィンだけでなく、スノーボードに挑戦したいという。


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