猫ブームの影に殺処分の現実　1千匹以上保護した女性が語る

■猫の繁殖・販売、見直しを

　空前の猫ブームのなか、昨年度に国内で殺処分された猫は約４万５千匹（環境省調べ）。金沢市の池村寿美子さん（６５）は捨て猫や飼えなくなった猫を保護し引き取り手を探す活動に取り組んでいる。保護した猫が１千匹を超えるという池村さんに、これまでの活動やペット事情などについて聞いた。

――猫の保護を始めたきっかけは

　２０００年ごろのある日、うちのガレージに弱った猫が迷い込んできた。事故にあったのか、ケガをして血を流していました。よく野良猫にエサをあげるな、と言いますが、自分が何もしなければこの猫は死んでしまうという状況で、エサをあげて、病院で手術して野良猫として放してあげました。そうしたことがきっかけで、行き場の無い猫の保護に関心を持つようになりました。

――その後、専用の施設をつくりましたね

　０２年から「にゃんにゃんレスキュー」と称し、夫が倉庫として使っていた建物を改装してそこで飼えなくなった人の猫などを保護し、引き取り手を募集する活動をはじめました。いまは３７匹。１００匹くらいいたこともありました。

――世話は大変ですね

　病気を抱えた猫が多いので、大変ではあります。病気の影響で排泄（はいせつ）ができない猫には、１０年くらい毎日排泄の補助をしています。

――1日の流れは

　まず朝１０時にきて、１１時半まで掃除。その後、午後２時に来て様子をみます。５～６時にもう一度掃除をして、８時ごろ様子を見に来る。そして深夜０～２時にかけて最後の掃除をします。猫は床に転がって、その体を自分でなめたりするので、床をきれいにするのは本当に重要なんです。

――エサ代など、費用はどれくらいかかりますか

　エサと砂で月１２万～１３万円、治療費や光熱費で月５万円、家賃で１０万円、合計月２５万～３０万円くらいですね。これ以上、エサや砂が値上がりしたらこわい。生活費を切り詰めながらどうにか運営しています。

■大変だけど、感動はお金に換えられない

――なぜそこまでして続けるのですか

　大変ですけど、かわいくてお世話は楽しいですよ。一番うれしいのは、重い病気や助からないだろうという子猫に病院で治療を受けさせて介護を続け、無事にどこかの家庭にもらわれていくことです。お金はかかるけど、その感動はお金に換えられない。病気の猫などをうちの前に捨てていく人も多いですが、うちなら助けられるから、ここに捨ててくれてありがとうと思います。

――どんな猫が多いですか

　誰かに捨てられたというケースや、病気や事故でとても育てられないと連絡をもらうことが多い。殺処分になる直前の野良猫を引き取ることもあります。

――猫がこれだけいて、ご近所とトラブルは

　猫が嫌いな方ももちろんいるので、騒音被害などがないようにと心がけています。盆や暮れにはお菓子を持って近所を回り「すみません」と頭を下げています。猫屋敷など、猫に関するトラブルは、猫自体が嫌いというより猫を飼っているこの人が嫌い、ということが多い気がするので、細心の注意を払っています。猫好きの人も多くて、近所の人や小学生が毎日のように見に来ます。

――最近の猫ブームについてはどう考えますか

　弊害の方が大きいと思います。「増えすぎた」などとペットショップからここに流れてくる猫も多い。需要が高まると、無理な交配や強引にはらませて帝王切開して子どもを産ませては縫い合わせるということを年に何回も繰り返すなど、虐待まがいの方法がまかり通っている。残酷だと思います。

――ペットショップという存在に疑問符を投げかける人も増えてきました

　欧州ではショーケースに入れて生体販売するということが禁止されている国も多いのですが、日本ではまだ普通です。この子はいくら、この子はいくらと値段を付けられて、狭い部屋に閉じ込めている。欧州のようにブリーダーから直接購入するシステムが、日本でもっともっと広がってほしいですね。

（聞き手・定塚遼）