不幸な野良猫を増やさないために… 各地で広がる取り組み
「野良猫が増えている。保護できないか」。そんな声がこの秋、動物愛護ボランティア団体に寄せられた。場所は熊本市東区の県民総合運動公園。だが、保護施設はすでに満杯。「せめて不幸な境遇の猫が増えないように」と選んだのは去勢して再び放す方法だ。
ミケ、ブチ、キジトラ……。県民総合運動公園を歩くと、猫の姿をあちこちで見かける。公園を管理する県スポーツ振興事業団の推定では100匹前後。毎年子猫が生まれ、捨てられたとみられる個体もいて、放っておけば増える。今年は餓死したとみられる死骸も何度か見つかった。散歩していた近所の女性(65)は「家の近くにまでふんが多い」と困り顔。一方で定期的にエサをやる人もおり、注意すると「可哀想でしょう」と言われたという。
市民から情報提供を受けた一般社団法人「清川しっぽ村」(神奈川県清川村)は21~23日、計25カ所にわなを仕掛け、野良猫計76匹を捕獲した。捕まえ(Trap)、不妊・去勢手術をし(Neuter)、元の場所に戻す(Return)取り組みで、頭文字をとって「TNR活動」と呼ぶ。
去勢が必要な39匹の手術をすでに終えており、25日までに捕獲した全てを公園に放す予定。野良猫の数が減るわけではなく、放置すればまた増えるが、しっぽ村運営委員会監事の松木彰詞さん(41)は「新たな遺棄がなければ、効果はしばらく続く。増えるペースを落とせる」と話す。
野良猫の処分を求める公園利用者もいるが、県も熊本市も「殺処分ゼロ」を掲げており、原則、猫の捕獲や処分はしていない。保護を頼るのは現状では民間の動物愛護団体しかないが、どこも満杯状態。エサやりを厳しく禁止すべきだという声も上がる一方、動物愛護の観点から批判もある。
「板挟み状態」(スポーツ振興事業団の担当者)のなか、公園側もTNR活動を「現時点でとりうる手段の中では有効な方法の一つ」とみて、3年前から独自で取り組み始めた。
しかし、捨て猫など新たな個体の流入が減らなければ、「いたちごっこ」は続く。しっぽ村の松木さんはTNR活動を「有効だが、苦肉の策」と表現し、飼い主側に一考を促す。「飼う前に、一生養えるか考えて欲しい。自信が持てなければ飼わない。不幸な境遇の猫を増やさないために」
(岩田誠司)
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