災害時にペットと避難、心得は? 東北の被災地で見えたこと
■飼い主自身による備え、大切
災害が起きたとき、避難するのは人だけではない。犬や猫などのペットと一緒に避難するには、何が必要で、何に気をつけたらよいのか。東日本大震災後に宮城県石巻市でボランティア活動をした天童動物病院の栗田徹院長(55)に聞いた。
――石巻市で何をされていたのですか?
震災後の2011年4月に行きましたが、飼い主とはぐれてしまったペットの保護や、広場に設けられた動物救護センターの運営、避難所への往診などをしていました。
センターには、避難所に入れることができず一時的に預かったペットもいました。ペット用の救援物資は人間のものより後回しになります。飼い主自身による備えが大切だなと感じました。
■効果、識別チップ
――ペットとはぐれてしまったら、どうしたらよいのでしょうか。
個体の識別番号が記されているマイクロチップを埋め込んでいれば、データベースから飼い主の情報や連絡先が分かるため再会できる可能性が高くなります。ただ、私が保護した動物のほとんどはマイクロチップはありませんでした。
私の病院でも犬を5頭預かりましたが、飼い主のところに帰れたのは1頭だけ。その子もマイクロチップではなく、たまたま写真を見て判明しました。特に猫は、首輪をしていないと野良と判別がつかず保護されない可能性もあります。
■ワクチン接種を
――どんな準備が必要ですか?
フードや水、予備の首輪などが必要ですが、獣医師の立場からするとワクチンの接種状況が分かれば助かります。県内で飼われているペットは、犬が4万頭以上。避難所やセンターにたくさんのペットが集まったとき、私たちが最初に考えるのは「伝染病が広がらないかどうか」だからです。
また、普段から知らない人に対して威嚇をしない、大勢の人の中でも飼い主がいれば落ち着くといったしつけができていれば理想です。
――東日本大震災ではペットがいたため避難所に入れず、車で過ごした人も多かったそうですね。
避難所にはいろいろな人が集まっています。動物が好きな人、嫌いな人、アレルギーを持っている人などもいるでしょう。知人の獣医師は、往診に行った避難所で「こんな時に、人間とどっちが大切なんだ」と怒鳴られたそうです。
その一方で、ある小学校の避難所では、動物を飼っている人と飼っていない人で滞在する階数を分けたという所もありました。
山形ではまだ、緊急時に避難所でペットをどう扱うかのマニュアルは整っていません。人間より後回しになってしまう中、ペットが安心に暮らせるかどうかは飼い主にかかっています。
(聞き手・多鹿ちなみ)
■災害時への主な備え
(山形県のホームページから)
【優先順位1=常備品と飼い主やペットの情報】
・療法食、薬
・フード、水(少なくとも5日分)
・予備の首輪、リード(伸びないもの)
・食器
・粘着テープ(ケージの補修用など)
・飼い主の連絡先とペットに関する飼い主以外の緊急連絡先、預かり先などの 情報
・ペットの写真(携帯に画像を保存するなど)
・ワクチン接種状況、既往症、健康状態、かかりつけの動物病院などの情報
【優先順位2=ペット用品】
・ペットシーツ
・排泄(はいせつ)物の処理道具
・トイレ用品(猫の場合は使い慣れたトイレ砂)
・タオル、ブラシ
・おもちゃ
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