「災害時、ペットとの絆が試される」 震災経験の動物病院長
■「人も動物も幸せな街に」
東日本大震災で大きな被害を受けた仙台市内陸部の動物病院。被災から約1カ月後に柴犬を連れて訪れた男性は診察後にこう語った。「津波で全部なくなった。この犬しか残っていない」。愛犬の頭をなでて語る様子に、人とペットの絆の強さを感じた。
札幌市内の大学を卒業し、金融機関に就職した。だが子どもの頃から関心があった獣医師を目指し、別の大学の獣医学部に入り直した。卒業後の2010年春、最初に勤務したのが仙台の病院だった。
11年3月11日の大震災の日は病院内にいた。院内もめちゃくちゃになり、帰宅を促され、妻と愛犬・愛猫が待つ自宅に戻った。深夜になって自主的に避難を始めた。
避難所になった近くの小学校は混乱し、ペットを屋内に入れられるかどうかも分からない状態だった。やむなく、数日は動物たちと一緒に車中に泊まり、そこから通勤した。病院は停電が続き、慢性病の薬を求める飼い主のため、対応に追われた。
15年に仙台を離れ、妻の実家に近い広島県福山市で「りっか動物病院」を開業した。
震災から6年。今年2月には、市内の動物愛護団体が主催した講演で、災害時にパニックに陥った動物と避難する際の注意点を述べた。強調したのは「日ごろの絆が試される」。日常から信頼関係を築いておくことが何より重要という。
大学時代は、野良犬・猫を保護し、新しい飼い主を探すサークル「犬部」に所属し、代表も務めた。福山に来てからも飼い主のいない猫に不妊去勢手術をして適切に飼う地域猫活動を支援する。
この2年で、民間による保護犬・猫の譲渡会も少しずつ認知されてきた。「できる限り協力して、人も動物も幸せに住める街にしたい」
(雨宮徹)
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