山の向こうの狩猟犬やモンキードッグ、ドローンで把握
人口減少・高齢化が進む山間部では鳥獣被害が深刻で、その対策が課題だ。そこでドローンを活用しようと、徳島県の「徳島ドローン特区」に指定されている那賀町は24日、役場近くの山間部で狩猟犬の位置をドローンを使って把握するという実験を行った。
実験で使った装置は、電機メーカー古野電気(兵庫県西宮市)が一昨年に開発した「ドッグ・ナビ」。これを狩猟犬の首に装着、犬の位置情報が電波で端末に送られる仕組みのGPSマーカーだ。使用に免許は必要ない。だが、電波が弱いため、障害物のある山中では犬の近くにいる必要がある。今回の実験は、電波を上空のドローンが中継し、離れた所でも狩猟犬の位置が分かるようにしようという試みだ。
狩猟犬は狩猟道具販売業のAEG(大阪府茨木市)が連れてきた。
ドローンの機体は、町がドローン関連業D―PLAN(徳島市)に製作を依頼した新型機。1回目の実験では、ドローンが写す映像を送る電波と、位置を伝える電波が干渉し合ったとみられ失敗したが、2回目の挑戦で成功。ドローンは高度145メートルまで浮かび上がり、山を隔て911メートルも離れた狩猟犬の位置が端末に示された。
那賀町ドローン推進室の三好俊明室長によると、町民の半数近くが65歳以上の高齢者。町内各地でサルが里山に出没する被害が起きているが、高齢者にとって山中に入るのは重労働だ。このため、山でサルを追い払う訓練を受けたモンキードッグを飼っている家もあるという。「今回の実験で人が移動しなくても、犬の位置が分かった。時間と労力の削減につながる」と手応えをつかんだようだ。
今回使ったドローンの新型機にはカメラのほか、離れた物体の温度を感知するサーモグラフィーも内蔵している。三好室長は「夜間の有害鳥獣の確認、人命救助、火災の状況調査などへの活用を想定し、実験を進める。ドローンで町の未来をつくりたい」と話す。
(鈴木智之)
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