動物ワクチンを日生研が違法販売 隠蔽計画を話し合う会議も

(写真は本文と関係ありません)
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 家畜などが感染症にかかるのを防ぐために使う動物ワクチン=キーワード=をめぐり、販売大手の「日生研」(本社・東京)が昨年9月までの6年間、薬の売買資格がない業者にワクチンを販売していたことがわかった。昨年8月に無資格と気づいたが、その後も出荷を継続。1カ月後に東京都から医薬品医療機器法(旧薬事法)違反で立ち入り調査を受けると、無資格業者と知りながら出荷したことを取り繕うため、虚偽報告など隠蔽(いんぺい)行為をしていた。

 劇薬である動物ワクチンを国内で厳格に管理することを目的に、同法は無資格業者への販売を禁じている。日生研は2年前にも別の無資格業者に17年間動物ワクチンを販売していたとして都から指導を受けた。同様の違反を繰り返したことを重くみて、都は今年4月、昨年発覚した事実をもとに業務改善を求める行政指導をした。

 日生研の説明や内部資料によると、日生研は2009年から、東京都港区にある畜産技術の開発会社に、家畜のブタの肺炎などを防ぐ動物ワクチンを販売。開発会社はフィリピンや韓国などにそのまま輸出していた。しかし、昨年8月上旬に開発会社が無資格だと分かった。

 日生研は、本来であればこの時点で開発会社への販売を中止すべきだったが、出荷を予定していたワクチンをその後も販売。9月上旬に出荷を終え、その2日後に動物ワクチンを規制する農林水産省に、5日後に都に「無資格業者に販売していた」と報告した。

 直後、都が日生研に立ち入り調査を実施。都によると、この際、業者が無資格だと知った後も販売を続けたことは報告されなかったという。

 その後、都に内部告発があり、11月になって都が問い合わせると、日生研では長井伸也社長ら幹部が話し合い、開発会社との取引伝票を取り消し、9月上旬の販売をなかったことにしようと決めた。だが、開発会社は伝票の取り消しを拒否。それでも日生研が12月に都に提出した報告書では、開発会社には出荷しておらず、直接輸出したと説明した。国外の業者への販売は同法の適用外となるためだ。

 結局、この説明が虚偽であることも明らかになり、都から再説明を求められて報告書を訂正した。

(沢伸也)


■幹部「農水省に行かせるな」

 朝日新聞は、長井社長ら日生研幹部による会議の音声データを入手した。そこでは、違法販売を隠そうとする計画が生々しく語られていた。

「農林水産省に●●(開発会社)から行かれる恐れがあるなら、日生研から行ったほうがいい」「とりあえず行かさないようにしないと。行かれると困る。全部止まってしまう」

 昨年8月。販売先の畜産技術開発会社が無資格だと発覚し、長井社長ら幹部が本社に集まり、対策を練った。9月には開発会社への出荷がすでに決まっている。「表に出てしまうと、日生研は知っていたのに(販売を)やっていたと言われる」。そんな声も出るなか、長井社長は「(開発会社を農水省に)行かさないように」と指示した。

 9月上旬に開発会社に動物ワクチンを出荷し、その後に違法販売を申告。だが、東京都によると、9月上旬の出荷は説明がなかったという。

 11月、都からこの経緯について報告を求められると、長井社長ら幹部がふたたび集まった。話し合われたのは、さらなる隠蔽だ。

「●●(開発会社)が現地(開発会社の輸出先)にお金を返してもらって、うちが回収すれば、それがいいんだけど」「直接取引したことにすればいい」

 開発会社への販売をなかったことにして、日生研が直接輸出したことにしようとする計画。一方で、長井社長からは「もうすでにやっちゃったものを、いまさらこういう風にするのも難しい」「本来は出荷しちゃいけなかったんだよね」などと本音も漏れた。


■隠す意図否定 日生研の社長

 日生研の長井社長は取材に対し、「(開発会社が販売した)輸出先に迷惑をかけてはならないと思い、無資格と知った後も販売した」「(開発会社に)資格を取るように言ったが返事がなかった」などと話した。9月上旬の販売の事実を消そうとしたことについては「隠すつもりはなかった。過去の伝票を取り消すことができると思った」と説明した。

 開発会社は「資格が必要とは知らなかった。国内での横流しなどはない」としている。

◆キーワード
<動物ワクチン>

 家畜やペットが鳥インフルエンザや口蹄疫(こうていえき)などに感染したり、発症したりすることを防ぐための薬品。病原性を持つ微生物を大量に増殖して作るため、用法を誤ると重大な被害の恐れがある。誤って人に投与すれば死亡する場合もある。医薬品医療機器法(旧薬事法)は、薬剤師がいる医薬品業者や獣医師がいる動物病院など法律で定めたところ以外への販売を禁じている。農水省によると、国内の動物ワクチンの販売高は約320億円(14年)で、その多くを日生研と「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)、微生物化学研究所(京都府宇治市)の大手3社で占めている。アジアや豪州など世界各地にも輸出されている。
朝日新聞
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