猫の殺処分ゼロ、5年連続で実現 千代田区、官民連携で
飼い主のいない猫の殺処分ゼロを、東京都千代田区と一般社団法人「ちよだニャンとなる会」が全国に先駆けて2011年度から5年連続で実現している。区とボランティアの連携が、猫を殺処分から救っている。
9月4日午後、千代田区役所の会議室で「猫の譲渡会」が開かれた。ニャンとなる会が区内で保護した猫の新たな飼い主を見つける出会いの場だ。共催する区が会場を提供し、千代田保健所職員も参加した。
生後3カ月~10歳ほどの猫13頭が布をかけたおりの中で、体を丸めたり、鳴き声をあげたり。リボンで飾られた猫も。来場した家族連れやお年寄りらが、「かわいいね」と気に入った猫に見入った。
それぞれの猫の脇にはプロフィルのボードが立つ。
《きんちゃく♀ 区内の多頭飼育崩壊の現場からレスキューされた。悪環境で暮らし、保護直後はやせ細って健康状態も悪くなっていました》
《わさび♀ 東京五輪の再開発により保護。人と家庭で暮らせるように、半年以上かけて今日のために社会化してきました》
保護や譲渡など会の活動はボランティア約50人が担う。運営費は約600人の寄付で支えられている。
去勢・不妊手術、ウイルス検査、ワクチン接種、のみやダニの駆除費用は区の助成でほぼ賄えるという。
「殺処分ゼロの実現は行政が本気で一緒に取り組んでくれることが大きい」と古川尚美代表理事(52)。他地域のボランティアは、動物を持ち込める譲渡会場をさがすのに苦労し、自治体の助成制度が不十分で手術費などの自己負担が膨らみ、活動に行き詰まることも多いという。
都動物愛護相談センター(保健所政令市の八王子市、町田市は管轄外)が14年度に殺処分した猫は927頭にのぼる。千代田区内で見つかった猫については、区の要請で区側に連絡し、対応を任せている。
区が飼い主のいない猫の去勢・不妊手術費の助成を始めたのは2000年度。同センターには01年度、区内から72頭が持ち込まれたが、04年度に40頭、09年度に14頭、10年度に3頭と減り、11年度にゼロを達成した。
11年の東日本大震災も転機だった。同会と区は手術を受けた猫を捕獲した場所に「地域猫」として戻してきた。だが大震災で飼い主を失った東北の猫のために譲渡会を開いたのを機に、譲渡会での飼い主さがしにも力を入れる。計14回の開催で157頭が新しい飼い主に引き取られた。
譲渡会に立ち寄った石川雅己区長は「飼い主のいない猫の保護と殺処分ゼロは住環境の向上と、動物愛護・共生への取り組み。ボランティアとの協働で成果が出ている」と顔をほころばせた。古川代表理事は「他の自治体にもノウハウを広げたい」と話した。
(上沢博之)
<全国の殺処分の現状>
環境省によると、2014年度に全国で自治体に引き取られた猫は約9万8千頭。約5万3千頭の犬の2倍近い。そのうちの8割が殺処分された(犬は4割)。ただ、犬猫を合わせた殺処分される割合は67%で、9割台半ばだった10年前の04年度より大きく減った。
20日から動物愛護週間。環境省は、施設に保護された犬や猫の譲渡で命をつなごうと、ポスターなどで呼び掛けている。
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