犬猫を劣悪な環境で飼育した疑い 業者を書類送検へ

業者が飼育する犬。トタン小屋の中に並べられた二段重ねのケージで飼われていた=栃木県矢板市
業者が飼育する犬。トタン小屋の中に並べられた二段重ねのケージで飼われていた=栃木県矢板市

 犬や猫を劣悪な環境で飼育して虐待していた疑いがあるとして、栃木県警は今月中にも動物愛護法違反(虐待)容疑で、同県矢板市の犬猫引き取り業者を書類送検する方針を固めた。業者側は「たたいていじめたわけではない。悪いことはしていない」と虐待を否認している。


 県警はこの業者を8月10日に家宅捜索し、売り上げ計算書や売買記録などを押収した。引き続き業者から事情を聴いているという。


 捜査は、公益社団法人「日本動物福祉協会」(東京都品川区)が今年4月に行った刑事告発がきっかけだった。告発状は、汚物の処理などの管理を十分に行わずに犬と猫計19匹を劣悪な環境に置くなどの虐待をしたとしていた。


 告発状によると、協会職員や獣医師が視察したところ、2015年12月10日~16年1月17日までの間、排泄(はいせつ)物が堆積(たいせき)した過密な環境に犬や猫が置かれ、適切に餌や水を与えられていなかったり、病気やけがを放置されたりしている様子が確認されたという。


 業者の男性(61)が、重篤な症状の猫について「このまま放置すれば死亡する」と言い、飼っている犬や猫に対しては「餌代がかさむから早く死んでほしい」などと口にしたという。


 8月半ば、告発された業者を訪ね、男性に犬舎を案内してもらった。現場は山林を走る県道沿い。男性が「5メートル四方ほど」と紹介するトタンぶきの小屋に、縦横45センチ、奥行き60センチ程度のものを中心に、大小様々なケージが並んでいた。純血種の犬が25匹で、多くが老犬。猫はいなかった。


 男性が説明する。「この犬は若いから、すぐに引き取り手が決まる。逆にこっちは年寄りだから、どうかなあ」。10歳近い老犬で目が白く濁っていた。


 男性によると、子を産ませて高齢になった犬や猫をブリーダー(繁殖業者)から引き取っている。「去年の冬は犬猫合わせて150~200匹を飼っていた」。一匹あたり1万~3万円程度の料金を受け取り、引き取り手を探しながら飼育するが、見つからず死ぬまで飼う犬もいるという。男性は言う。「俺が引き取らないと、犬や猫は行き場がない」


 2013年施行の改正動物愛護法で、行政がブリーダーなどからの犬猫の引き取りを拒否できるようになった。安易に行政へ持ち込ませず、殺処分数を減らすのが目的だ。ただ今回告発した団体などによると、売れ残るなどした犬猫の行き場がなくなり、より多くの犬猫が引き取り業者に流れたとの見方もある。


 県動物愛護指導センターによると、県内の動物取り扱い登録施設のうち営利目的で100匹以上飼育しているのは昨年度末で約25施設。毎年定期的に立ち入り調査をしている。告発された業者も対象で、今年も3度訪問し、口頭で改善事項の指摘などをしたという。


(直木詩帆、伊吹早織)

朝日新聞
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