犬カフェ&ドッグランも町を盛り上げ シャッター街が一変
名古屋駅から歩いて15分ほど、話題の商店街、円頓寺(えんどうじ)(名古屋市西区)がある。昔ながらの店が並ぶ街は一時、「シャッター街」になりつつあったが、この5年あまりの間に約20のユニークな施設や店が生まれた。テレビなどで取り上げられることも増えた、注目の下町を歩いた。
円頓寺商店街(同市西区那古野〈なごの〉1丁目)の一角に2月、オープンしたのは「那古野(なごや)ハモニカ荘」。黒い壁が特徴の木造2階建ての建物にはそば屋や居酒屋が入り、2階には演劇が楽しめるカフェができる予定だ。
1階の「路麺(ろめん)えんそば」。店長の山田岳史さん(35)は「来る前は人通りがあるのか不安でしたが、こんなにたくさんの人が来るとは思ってもいませんでした」。客の会社員女性(39)は「最近の円頓寺は店が増え、よく立ち寄るようになりました」と話す。
ハモニカ荘は元家具店で、和食店に衣替えした後、2014年の暮れに閉じた。駐車場になる予定だったが生まれ変わった。
近くにあるフランス家庭料理店「日仏食堂~en~」は閉店したカフェを改装して、4年前にできた。
オーナーシェフの藤井昭彦さん(37)は「静かで賃貸料も手頃。タクシーを使って来られるお客さんもいます」と話す。
昨年10月、空き地に建ったのが犬カフェ「Cafe DOG MOFU」。トイプードルやマルチーズといった小型犬と触れ合うことができ、店の裏にはドッグラン(広場)もある。
オーナーの後藤清美さん(49)は新しい店が次々にできる円頓寺にひかれ、出店を決めた。直前まで会社勤めをしていたが、「この場所を盛り上げる一つになれたら」と、ペットケアアドバイザーの資格を取って店を始めた。
進出を後押ししたのが09年に結成された団体ナゴノダナバンク。店を閉めた持ち主と出店希望者の橋渡しをしてきた。代表で1級建築士の市原正人さん(54)は「魅力的な店を選ぶようにしたことで、結果的にこのエリアの人気が上がるようになったのだと思います」と説明した。
建築家や不動産コンサルタントらが加わったナゴノダナバンクの目的は、利益ではなく、まちおこし。これまでの活動を通じて信頼を寄せる店の持ち主が増え、空き店舗の再利用の拡大につながっていったという。
江戸時代、円頓寺の門前町として栄えた円頓寺商店街とその近くの円頓寺本町商店街は1950年代、200以上の店が軒を連ねた。だが閉じる店が増え、2000年代に入ると半分以下にまで減っていた。その流れをナゴノダナバンクが変えた。
手打ちパスタ専門店、懐石料理店、スペインバル(居酒屋)、ワッフル店……。昨年春には戦前からあった老舗の喫茶店「西アサヒ」がリニューアルオープンした。民宿と飲食店を兼ねた施設で、外国人や若い旅行者らの拠点となっている。円頓寺には5年あまりの間に20ほどの店、施設が誕生した。
市原さんは空き店舗対策の活動だけでなく、新しい祭り「円頓寺 秋のパリ祭」も開いている。3回目となった昨秋は、「アーケードの下が歩けないほどの人であふれた」と言う。
「人気急上昇! 円頓寺商店街活性化のヒミツ」「進化が続く“ネオ下町”」……。テレビや雑誌などでは特集が組まれることも珍しくない。昨年公開された人気漫画を原作とする映画のロケ地にもなった。「今は空き店舗の改修が間に合わず、出店希望者には待ってもらっている状態」とうれしい悲鳴を上げる。
ともに活動している名古屋工業大大学院の秀島栄三教授(社会工学)は今後について、「名駅側の開発の勢いに身を任せるだけではビルが立ち並ぶだけ。だがこうして商店街側からもり立てようとすることで、この魅力的な街並みは残すことができる」と話している。
(篠原あゆみ)
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。