ペット救援に適切に使われた? 大震災の寄付7億円で批判も

福島市内の「SORAアニマルシェルター」で暮らす秋田犬のアキタ。成犬、成猫にとっての5年は、人間の20年分にあたる
福島市内の「SORAアニマルシェルター」で暮らす秋田犬のアキタ。成犬、成猫にとっての5年は、人間の20年分にあたる


 東日本大震災では多くの犬や猫などのペットも被災した。その救援のための寄付の窓口になったのが「緊急災害時動物救援本部(現ペット災害対策推進協会)」だった。動物愛護団体などの活動を支えたが、支出先などについて批判も聞かれた。震災から5年を振り返る。

 

 JR福島駅(福島市)から車で約30分の山あいに「SORAアニマルシェルター」がある。震災で飼い主とはぐれたり、一緒に暮らせなかったりする犬猫約50匹が今も暮らす。

 

 雄の秋田犬、アキタも福島県南相馬市内に取り残されていて保護された。昨年5月、アキタにがんが見つかった。手術をしたが、今年に入り獣医師から「余命はわずか」と告げられた。二階堂利枝代表は「5年は犬猫には長かった」と話す。

 

 こうした救援活動の支えになったのが、全国から救援本部に集まった寄付金だった。日本動物愛護協会や日本愛玩動物協会などが中心となっている救援本部には、東日本大震災で総額7億2583万円余りの寄付金が集まった。

 

 救援本部の公表資料によると、被災自治体が中心となって作る現地本部や動物愛護団体に支給された寄付は、のべ149団体に対し、計約5億6700万円分にのぼる。単純計算で1団体に1回あたり約380万円が支給されたことになる。

 

 支援を受けた団体からは感謝の声が聞かれる。だが一方で、支給基準に問題があるなどの批判も特に初期段階に出ていた。

 

 2012年半ばまで救援本部の現場トップの部長だった会田保彦氏は11年12月、「義援金の交付先の公開について」とする文書をホームページに載せた。そのなかで、「相応(ふさわ)しくないと思われる団体に交付がなされており、交付審査に疑義があるというご意見を複数頂戴(ちょうだい)いたしました」と認め、すべての支出先公開の目的を「(団体の活動を)皆様に監視・監督していただく」ためとした。

 

 それでも、被災地で活動を続ける団体には、支出のタイミングが遅く、申請より少ない額しか支給されない案件もあり、不満は解消されなかった。大手ペットショップチェーン「コジマ」が約6千万円の資金を投じ、のべ約800人の社員をボランティアとして送ることで、福島県動物救護本部のシェルターの運営などが軌道に乗る一助となった――というような事例も見られた。「救援本部は出し渋っているとしか思えず、頼れないと感じた。『20キロ圏内』などからどんどん動物が収容されてきて、途方に暮れた」と、福島県動物救護本部関係者は指摘する。

 

 会田氏はこう振り返る。「全国から寄せられた寄付金は『公金』と理解しており、無条件に配るわけにはいかないし、透明性も大切だと考えていた。一定の条件を決めて申請をしてもらい、1割程度については条件が合わなかったため支出しなかった。大規模な災害のため物資や寄付金の整理ができなかったことは確か。当時の活動を自己採点すれば30点未満。広域で激甚な災害時に、どうするのが正解だったのかは、いま振り返っても正直わからない」

 

 救援本部は会田氏と中川志郎本部長の体制で約4億円の寄付金を支出。13年5月に日本愛玩動物協会の東海林克彦会長が本部長に就き、14年6月に一般財団法人に改組した。

 

 一方で14年7月、寄付者らが「1年半以上、2億円余りの義援金が塩漬けになっている」として、救援本部に200万円の賠償を求める訴訟を起こした。16年2月に東京高裁が控訴を棄却し、救援本部の勝訴が確定した。裁判と前後して、救援本部は残っていた寄付金約2億円を支出した。これが再び不信感を招いた。

 

 14、15年に支出した約2億円のうち、震災から5年を経た今年3月11日時点で支出先を公表していたのは、その7割にあたる約1億4千万円分。約6千万円分は支出先などを公表しなかった。このため朝日新聞社は3月9日付で24項目(後に3項目追加)の質問書を送付。これへの救援本部(現推進協会)の回答で、特定の団体、企業にまとまった額の支出があったことがわかった。

 

 まず、37団体に計1億20万円分のペットフードなどに交換できる「ポイント」を支給しているが(団体名と支給ポイント数は公開済み)、これを利用できる通販サイトの運営会社「インターズー・クリニッククラブ」に約1300万円が業務の委託費として支払われていた。

 

 また、仮設住宅にいるペットにトリミングをするなどの事業のため、14年は「日本ペットサロン協会」と「ふくしまプロジェクト」に合計約2千万円、15年には同協会に約1500万円をそれぞれ支出していた。14年分については、のべ298匹にトリミングなどを実施したという。

 

 ふくしまプロジェクトにはほかにも、福島県飯舘村内のペットの調査事業などとして約50万円、被災動物サーチプロジェクトに関する広報事業などとして約380万円なども支出されていた。このサーチプロジェクトでは、さらに約260万円がHP製作会社などに支払われている。

 

 救援本部(現推進協会)によると、サーチプロジェクトで「(飼い主との)再会や(里親への)譲渡をしたという報告を受けたことはない」という。また、これら支出先を非公表にした理由を「愛護団体などへの寄付ではなく、業務の対価としての支出」だったためと説明した。

 

 救援本部は16年3月、現在の「ペット災害対策推進協会」に再び改組し、理事長も「動物との共生を考える連絡会」代表の青木貢一・獣医師に交代した。15年9月現在では、1117万5263円の寄付金が残っているという。

 

 5年間の教訓はなんだったのか。会田氏は言う。

 

「被災地にそれぞれの自治体の本部が迅速にできれば、救援本部はそこをサポートすればいいはずだ。だが災害の規模によっては、それも難しい。今回のべ約150団体と救援本部がつながったのだから、この関係を維持しネットワーク化しておくことが、次の大規模災害時の適切な対応につながるのではないだろうか」

 

 一方で、救援本部が阪神・淡路大震災後の96年8月に立ち上がった当初から、現場でかかわってきた日本動物福祉協会特別顧問の山口千津子さんは「地元の自治体、獣医師会、動物愛護団体が最も現場のことをわかっているのだから、救援本部は本来であれば、それらが活動しやすいように必要な人材や物資、資金を適宜送る『後方支援』に徹するべきでした。今後も、そのあり方は変えてはいけないと思います。加えて、各自治体をサポートしながら、国民の防災意識を高めていく必要があると考えています」と話している。

 

(太田匡彦)

 

朝日新聞
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