犬殺処分ゼロ、途切れる 1年7カ月ぶり 熊本市
2014年度に初めて犬の「殺処分ゼロ」を達成した熊本市動物愛護センター(同市東区)が今年度、5月下旬に3匹を殺処分したことを明らかにした。3匹は、高齢の飼い主が亡くなったことに伴う「飼育放棄」で保護されたが、攻撃性が強く危険で、新しい飼い主を見つけることは難しいと判断したという。
センターによると、9匹の犬を屋内で飼っていた高齢の男性が亡くなった後、男性の妻が世話をしていたが、妻は認知症で手に負えなくなったという。親族が新しい飼い主を探しても見つからず、5~7月に3回に分けて3匹ずつ保護した。
9匹とも成犬で、このうち3匹は攻撃性が強く職員にもかみつきそうで触ることもできず危険と判断。センターが開いている譲渡会などで新しい飼い主を見つけることは難しく5月下旬に殺処分した。犬の殺処分は13年11月以来、約1年7カ月ぶりだったという。
センターの後藤隆一郎獣医師(37)は「動物に罪はないので残念。飼い主も、犬や猫も幸せではなく、こちらも悔しい思い。避妊・去勢手術への理解が広まれば『不幸』を減らすことができる」と話す。最近はこのような「多頭飼育の崩壊」の例が目立つといい、昨年度は20匹以上の猫の引き取りを求めてきた人もいた。センターの村上睦子所長は「高齢化や貧困など社会的な要因も影響しているかもしれない」と話す。
センターには9月4日現在、犬80匹と猫94匹が保護されており、「収容の限界を超えており、殺処分の危機が迫っている」という厳しい状況。センターでは月1回、休日譲渡会を開いており、毎週水曜に飼い主に必要な心構えや知識について学ぶ講習会を開き、啓発にも力を入れている。
今月の譲渡会は13日に予定。午前10時から、譲渡前講習会がある。村上所長は「子犬だけでなく、性格がいい犬やしつけられている猫もいるので、ぜひ見に来ていただきたい」と呼びかけている。問い合わせは市動物愛護センター(096・380・2153)へ。
救助犬への育成、市が検討
熊本市は9日、市議会一般質問で、市動物愛護センター(東区)が保護した捨て犬などを災害現場で活躍する救助犬に育成することを検討する考えを明らかにした。倉重徹議員の質問に宮本邦彦・健康福祉子ども局長が「育成の仕組みづくりを進めたい」と答弁した。
災害救助犬は、地震や土砂崩れの発生時に現場に入り、がれきに埋もれた人を見つけ出す。市によると、徳島県で同様の取り組みがスタートしているという。宮本局長は、保護された犬が救助犬になることは「殺処分の可能性があった犬の命をつなぐばかりではなく、人命救助という新たな使命をもつことにもなる」と述べた。(奥正光)
(朝日新聞2015年9月10日掲載)
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