相談・獣医師回答・コメント
(質問主)
犬 15歳 オス ミニチュアダックスフンド
体重:4.2kg
飼育歴:7年5ヶ月
居住地:千葉県佐倉市
飼育環境:室内
つい先日、血液検査、レントゲン、エコー検査を受けました。小腸に腫瘍らしきものが見つかりました。(1ヶ所、大きさは1cm×2cm位)
今後の対応としては針で細胞を取り検査。リンパ腫であれば抗がん剤を、それ以外の腫瘍であれば手術で摘出が考えられると言われております。
手術が成功しても退院までもって行けるか、でも手術しなければいずれ穿孔することが考えられるとのお話でした。
今の症状は下痢のみで抗生剤がよく効いております。症状が出たのは7月末、抗生剤を止めると4〜5日で下痢になります。
既往症は昨年の前庭疾患以外大きな病気はしていません。
現在は軽い心雑音があり歩行にも軽くフラつきがあります。視力は明暗程度、聴力も大きな音でないと聞こえません。
高齢(保護犬だった為推定年齢です)で手術は怖く、かと言って穿孔したらと考えるといても立ってもいられません。抗がん剤となっても副作用が怖いです。
もし抗がん剤も手術もせず自然に任せるなら針で細胞を取ることもしない方が良いと言われております。
今の年齢、状態を考えれば何もしないのがベストなのか、穿孔した時の痛み苦しみを思えば積極的な治療をするべきか、一人思い悩んでおります。何かアドバイスいただけたら幸いです。血液検査の数値を添付致します。
どうかよろしくお願い致します。
2020-10-23 14:07:39
専門の獣医師からの回答
高齢の保護犬に消化管腫瘍が認められ,その治療についてのご相談承りました。
消化管腫瘍の外科手術は部位や範囲さらに周囲のリンパ節処理の必要性によって難易度が異なります。
総胆管や膵管が接続している十二指腸の始まりの部分でなければ,外科的切除は容易と思われます。
ただし,予後に関しては腫瘍の種類や悪性度に大きく影響されます。
本症例では,15歳と高齢であることに加えて,心臓疾患の併発さらには脳疾患の存在も疑われるとなると,全身麻酔のリスクがかなり高いと考えられます。さらに,リンパ腫であった場合には,抗癌剤治療が中心となり,手術を併用した場合でも術後の抗癌剤投与は必須となります。逆に小腸腺癌など初期であれば外科的治療で根治できる可能性もあり,腸穿孔や転移が起こる前に治療を行うことが重要となります。
要するに現在の原因として考えられている小腸に認められている腫瘍がリンパ腫なのか,あるいはそれ以外の腫瘍なのかが最も今後の治療方針を決定する上で重要となります。
7月末からの症状発現とのことですので,すでに3ヵ月程の時間経過となっており,これは人では1年近く時間が経過したことになります。通常であれば,早期に比較的安全性の高い細針吸引(FNA)を行い,細胞診により,リンパ腫でないかどうかを判断するのが一般的です。積極的な治療としてはリンパ腫であれば,抗癌剤投与による内科的な治療が中心となり,そうでなければ外科的治療を考えましょうということになるのかと思います。
確定診断を行っても飼い主の方が今以上の治療を全く希望していないのであれば,精密検査を行っても意味がありませんよという主治医の先生の的確なご説明です。
飼い主の方が今後の治療方針に対して明確な意思を示されない限りは,このままの治療となり,最後は緩和ケアになるのかと思います。このようなケースでは飼い主が愛犬の最期をどのように迎えさせたいのか,それまでにどのような生活を送らせてやりたいのか,とくに「こんな最期だけはいやだ!」など,飼い主の希望が優先されると思います。
現在の情報のみでは,主治医の先生もリンパ腫かそうでないかで治療の選択肢があまりにも異なるため,
飼い主への説明も苦慮されることと思います。治療方針が定まらないまま悩まれていても,手遅れになるのを待っているようにしか思えません。まずは先ほど示しました細針吸引(FNA)による細胞診を行ってもらって,リンパ腫かどうかが判断できれば,その後の治療の選択肢はおのずと絞られます。
FNAはエコーで腫瘤を確認し,シリンジ付の注射針を腫瘤に刺して細胞を吸引するのですが,専門家にとっては採血と同じようなものです。
なお,ここでお示ししたFNAは開腹下で行う針生検(コア生検)とは異なり,リンパ腫かどうかの鑑別など大まかな診断をつけるための検査です。
飼い主の方が悔いが残らないようにして頂くのが最善かと思います。
2020-10-26 18:44:28
(質問主)
再度エコー検査をすることになり、その際針による細胞診をお願いすることにしました。
お忙しい中、長文のご回答をいただきまして有り難うございました。
2020-10-27 19:02:24
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