相談・獣医師回答・コメント
puco(質問主)
猫 10歳 メス 雑種
体重:4.4kg
飼育歴:10年4ヶ月
居住地:神奈川県厚木市
飼育環境:室内
抗がん剤治療を続けるかどうかで迷っています。
今年6月に右乳腺に4㎝のしこりが見つかり、右乳腺のみの全切除手術をしました。
病理検査の結果は悪性で、リンパ管内浸潤も認められました。
手術後は3週間おきに抗がん剤治療をしていて、これまでに5回行っています。
現在は幸い再発も遠隔転移も確認されず、元気にしています。
今月はじめに6回目の抗がん剤治療を行う予定でしたが、事前の血液検査で好中球の数値が低かったため行えませんでした。
その日は好中球の増加を促す薬というのを注射してもらい、翌日再検査しましたが、数値は変わりませんでした。
それから2週間後の検査では標準値に上がりましたが、低かった原因がわからないので抗がん剤は中断しています。
担当の先生のお話では「抗がん剤による骨髄抑制かもしれないが、前回の抗がん剤投与から3週間も経っているので考えにくい。しかし可能性ゼロというわけでもない」とのことでした。
骨髄抑制で好中球の数値が下がると感染症のリスクが高まるという説明も受けました。
今回の経緯をふまえて、そういったリスクがあるのなら抗がん剤治療はやめた方がいいのかもしれないと思う一方で、現在元気でいるのは抗がん剤の効果なのかもしれないと思うと治療をやめるのもためらってしまいます。
今後の治療をどうしたらいいのか、アドバイスが頂けたらと思います。
数値が低かった時と標準値に上がった時の検査結果を添付しておきます。
2019-11-22 00:12:23
専門の獣医師からの回答
乳癌の術後補助療法としては、カルボプラチン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、シクロフォスファミドなどの抗癌剤が使用されますが、何れもその効果は様々で、実証されているものではありません。これらの治療は、補助療法を実施した方がしなかった場合に比べて、生存期間が延長したという報告が根拠となっていますが、治療中の効果を客観的に評価する基準がないため、本当に抗癌剤が効いているかどうかを個体ごとに判断することは、我々獣医師でも難しいというのが現状です。
3週間に1回投与するプロトコールで使用される抗癌剤には、カルボプラチン、ドキソルビシン、ミトキサントロンがありますが、何れも副作用として骨髄抑制があります。予定された投与日であっても、投与前の検査で総白血球数が3000、好中球数が1500を下回る場合は投与を見合わせ、回復を待ちます。通常、抗癌剤による骨髄抑制は可逆性のため、特別な処置をしなくても時間が経てば回復します。3週間に1回投与する抗癌剤で、予定日(前回投与後3週間)に好中球数が少なく投与を延期するということは、めずらしいことではないように思われます。好中球数が充分に回復し、猫の一般状態や肝機能、腎機能、心機能に問題がなければ、投与は可能だと思われますが、投与回数を重ねるたびに回復期間が延長するようでしたら、投与間隔も延長することになるため、効果が減弱する可能性が出てきます。そのような場合は、抗癌剤の変更や中止を検討する場合もあると思われます。
近年では、抗癌剤の投与量を下げて、副作用を軽減させるメトロノミック療法という治療が報告されています。シクロフォスファミドを低用量で投与することにより、副作用の発現がほとんどなく、通常の術後補助療法と同様の生存期間が認められたという内容です。ただ、その効果もまだ実証されているものではありません。
抗癌剤を使用する際は、少々の副作用があっても効果が充分に認められれば、投与を継続する場合もあります。乳癌の術後補助療法は、その効果の評価が難しいため、重篤な副作用が認められる場合は、中止あるいは変更が必要かもしれません。副作用がご心配なようでしたら、納得のいく治療を受けられるよう担当の獣医師と良くご相談下さい。
2019-11-27 01:27:41
puco(質問主)
詳しいご説明、ありがとうございます。
担当の先生と相談して抗がん剤はやめることにしました。
残された時間はゆっくり過ごさせてあげようと思います。
回答ありがとうございました。
2019-12-01 23:59:00
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