野良猫に「TNR」、町ぐるみで 殺処分避け共生めざす
住民と野良猫の「共生」を目指し、三重県南伊勢町が1月から「TNR」に取り組んでいる。野良猫を捕獲(トラップ)して不妊・去勢手術を施し(ニューター)、元の場所に戻す(リターン)活動だ。動物愛護の観点から殺処分を避けるとともに、個体数を抑制する狙いがある。
きっかけは、入庁2年目の若手職員の機転だった。町環境生活課の平谷祐大さん(27)は自宅で犬を2匹飼うほどの動物好き。一方で、同課には野良猫の苦情がたびたび寄せられる。「トラブルを回避できる方法はないか」と考え、全国で導入されているTNRに注目した。
町の主力産業は漁業だ。漁港の周辺には野良猫のエサとなる魚が豊富なこともあり、平谷さんは「肌感覚ではあるが、他の自治体と比べても野良猫の数が多いような気がする」と感じていた。野良猫に餌付けをする住民が近隣住民とトラブルになることもあった。
平谷さんから相談を受けた瀬古智秀係長(50)は、「空家相談士」の肩書も持つ。町内には800戸ほどの空き家があるといい、「野良猫の住み家になっているケースもあり、双方が地域に迷惑をかけない方法が必要だ」と日頃から考えていた。そこで、町内の獣医師の協力を受け、町が独自にTNRに取り組む仕組みを整えた。
手術の対象は「悪臭を放ったり、車に傷をつけたりするなど迷惑をかけている」という野良猫で、自治区から要請があったものに限る。手術後は目印になるよう耳を少しカットする。町は年60匹前後の手術を想定しており、瀬古さんは「たとえ野良猫でも大切な命。地域全体で面倒を見ようという発想が根底にある」と話す。
実は、県もTNRに力を入れる。2014年度から始め、17年度にはより積極的に進めるとともに、犬や猫の殺処分を減らすために譲渡の仲介を行う動物愛護推進センター「あすまいる」を立ち上げた。
センターの担当者は「単独でTNRを行っている市町は、県内では南伊勢町しか聞かない。人と野良猫の共生を目指す姿勢は評価したい」と話す。
(安田琢典)
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