猫が「ツレない」のは歴史に理由 犬と違い、野生を残す

 猫は可愛いことに加え、ちょっと「ツレない」ところも魅力です。実際、飼い主が呼びかけても、耳や頭を動かすといった音源への反応は示しても、返事をしたり、しっぽを振ったりするような積極的な反応を示すことは少ないことが実験でわかっています。これに対し、犬は飼い主に従順で、ストレートに愛情を示す傾向があります。なぜ、犬に比べて、猫が飼い主に「ツレない」のかは、その共存と繁殖の歴史をさかのぼることでわかります。

猫はネズミ捕りのために飼われていた
猫はネズミ捕りのために飼われていた

猫はネズミを捕るための存在だった

 猫が人間とともに暮らしてきた最古の証拠は、9500年前のキプロス島の遺跡です。猫の骨と一緒に人骨が埋葬されており、このころから人との共存が始まったと考える説もあります。
 猫の祖先種はリビアヤマネコで、アラビア半島が発祥といわれています。ここは農耕が始まった地でもあります。人が農耕を始めて、穀物を蓄えるようになると、それを狙ってネズミが集まってくる。そうすると、ネズミを捕食する猫も人のそばに集まってくることになり、そこから徐々に人との共存が始まったとされています。

 一方、犬と人との共存の歴史はさらに長く、5万年前という説もあります。人と暮らしをともにしてきた長い歴史の中で、羊を追いかけるシープドッグなど、飼う目的に応じた特徴を持った個体同士が選択的に繁殖され、見た目や大きさ、行動などが異なる犬種が発達してきました。今では400〜800ほどの犬種があるとされるほど、犬は多様な種類が存在します。

 こうした長い歴史の中で、犬は人の指示に従う動物として家畜化の道を歩んできました。一方、人が猫に期待した主な役割はネズミ捕りであることから、従順な家畜的性格を強める必要はなく、野生的なままである方が役に立ちました。
 こうした理由から、猫は長い間、人為的な淘汰をほとんど加えられずにきました。犬は4000年前から積極的にブリーディングされていたのに対し、猫の繁殖にも人の手が介在するようになった歴史は浅く、200年ほどしかありません。

講演する齋藤さん
講演する齋藤さん

ペットになっても「自立」していた

 また、猫は肉食動物です。栄養バランスにすぐれたキャットフードを食べるようになったのは最近のことで、それ以前は飼い猫であっても「ねこまんま」のような人の残飯など、肉食動物には栄養的にもの足りない食事を与えられることもありました。そのため、飼い猫であっても自分でネズミを捕まえるなどしてエサを調達していたのです。同じペットでも、猫は犬と比べると野性味を残し、自立した生活を送っていたのです。

 また、猫はもともと単独で生きる動物で、順位のある群れで生活しておらず、家畜化されにくい特徴を持っており、飼われていても人に従順にはなりにくい気質を持っています。猫が「ツレない」のは、本来持っている気質と、飼われていても自立を保ってきた歴史があるからなのです。

齋藤慈子

上智大学総合人間科学部心理学科准教授。専門は比較認知科学、発達心理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。東京大学総合文化研究科助教、講師を経て現職。
*本記事は、リビングデザインセンターOZONE主催のイベント「犬猫と暮らす快適な住まい」で開催されたセミナー「ネコとヒトとのコミュニケーション ツンデレなネコを振り向かせる秘訣」から抜粋し、構成し直したものです。

森田悦子
フリーランス記者、ファイナンシャルプランナー。金沢大学法学部卒。地方新聞社会部記者、編集プロダクションを経て独立。得意テーマは経済、金融、投資、社会保障、ペットなど。「AERA」「週刊朝日」などで執筆中。どちらかというとネコ派。
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