狂犬病の予防接種率が急降下 発症例が半世紀なく危機感薄れ…
狂犬病の予防接種を犬に受けさせる飼い主が減っている。年1回の接種は義務だが、仙台市の2017年度の接種率は76%(12月末現在)で、震災直後だった11年度を下回り、過去最低になるのは確実だ。しかも今年度は、市役所で予定する集団接種がフィギュアスケートの羽生結弦選手の祝賀パレードと重なり、大わらわになっている。
狂犬病予防法は、飼い主に市町村への犬の登録と、毎年4~6月の予防接種を義務づけている。仙台市動物管理センターは登録しているすべての飼い主に予防注射の案内を送り、未接種の場合は督促もしている。
狂犬病は人が感染して発症するとほぼ死に至るが、国内では50年以上発症例がなく、危機意識は薄れている。同センターの小野寺順也所長は、接種率低下の要因としてさらに「室内飼育の小型犬と高齢犬の増加」をあげる。
センターには「外に出さないのに受ける必要があるか」との問い合わせが多く寄せられる。老齢など犬が予防注射に耐えられないと獣医師が診断した場合は猶予証明書を発行するが、年々増えているという。
2013年には、50年以上狂犬病が発生していなかった台湾で、野生のイタチアナグマに感染が確認された例もある。「日本と同じ島国で発生した。今もリスクはくすぶっている」と小野寺所長は指摘する。
県警は13~17年の5年間に、狂犬病予防法違反で14件を摘発した。8件が未接種、6件が未登録だった。ほとんどが放し飼いの犬が人をかむなどした「事件」の捜査で判明したという。県警幹部は「氷山の一角だが、法律違反が明らかになれば検挙する」と話す。
ゆづパレード重なり、接種会場と時間変更
今年の狂犬病予防接種には、平昌五輪金メダルの羽生選手の祝賀パレードも影響しそうだ。
動物管理センターは22日のパレードとほぼ同時刻の午後1時半から、市役所前で集団接種を予定していた。6~26日の接種期間の最後の日曜。例年多くの飼い主が訪れる会場で、昨年は約500頭が接種した。やむなく時間と場所を変更し、庁舎南隣の市民広場で午後3~4時に接種することにした。
市内で登録されている全4万8千頭の飼い主に3日、変更を通知した。だが、異例のはがきに混乱したとみられる飼い主からの問い合わせが1日に50件以上あった。
パレードついでに注射を受け、「ゆづ効果」で接種率アップ、ともいかないようだ。実行委員会は安全確保のためとして、ペットの同伴を控えるよう愛犬家らに呼びかける方針を、12日の会見で明らかにした。
接種を受ける場合も例外ではなく、抱きかかえたり、キャリーバッグに入れたりするのも「基本的にご遠慮を」との立場だ。仙台市スポーツ振興課は「観客に何かあってはいけない。パレードを見るなら接種は別の日に受けて」と呼びかける。
(山田雄介)
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