飲酒運転ゼロを祈り、鉄オブジェ 今年は愛犬がモデルに
飲酒運転撲滅の願いを込めた干支(えと)のオブジェが毎年作られている。宮若市の鉄造形作家、石橋鉄心さん(73)は、福岡市で幼いきょうだい3人が死亡した飲酒運転事故があった2006年の年末から制作を始めた。一回りした今回で区切りにするつもりだが、事故は今も絶えない。「自覚を持って」と願う。
石橋さん主宰の「鉄の美術館」の入り口に今年も作品が設置された。来年の干支は戌(いぬ)。最後のオブジェは、愛犬の柴犬(しばいぬ)「鉄」をモデルにした。直径6ミリの鉄の棒を短く切り、溶接しながら形を整えた。体長75センチ、高さ60センチ程度。制作には18日間を要した。
干支のオブジェに飲酒運転撲滅の願いを込めるのには訳がある。19歳のとき、看護師だった母親のチエコさん(享年52)を飲酒運転で失ったのだ。
16歳のときに馬車をつくる職人だった父が病死し、チエコさんと2人暮らしで生きてきた。
事故は1963年5月30日に起きた。その日の朝、給料日だったチエコさんと「今日は一緒にご飯を食べよう」と話していた。普段より、少しぜいたくな食卓になると思っていた。
職場の同僚の家の麦刈りの手伝いに行っていた石橋さんは夕方、チエコさんの勤め先の病院に電話した。「今から帰る」。こう伝えようとしただけだが、思いも寄らない言葉を聞いた。「お母さんが大変よ」
バス停にいたチエコさんに、飲酒運転のバイクが突っ込んだ。相手は30歳くらいの男。チエコさんは、ほぼ即死だったという。
それから40年以上がたった06年の福岡市の事故。石橋さんも「自分にできることはないか」と思い立った。毎年、干支のオブジェを作るとともに、「飲酒運転撲滅」の看板を掲げた。
美術館を訪れてくれる人の中には「『看板を見て我に返った』と言っていた人がいる」「効果がやっぱりあるんですね」などと声をかけてくれる人もいた。
制作は今回で最後にするが、今も各地で飲酒運転は絶えない。石橋さんは、「ドライバーには自覚を持って運転してほしい」と願う。飲酒運転撲滅の運動には今後、別の形で参加するつもりという。
(小田健司)
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