猫ブーム、減らぬ殺処分 飼育には「責任を」 譲渡前に講習
「猫ブーム」と言われる昨今だが、群馬県内では年間に1千匹以上が殺処分されている。繁殖力が強いため、増えすぎた子猫を飼い主が捨てたり、野良猫が保健所に持ち込まれたりするのが大きな要因になっているという。県は民間と協力し、今年度から「地域猫」=キーワード=の取り組みを始めた。
動物愛護週間(26日まで)中の24日、邑楽町で県獣医師会と県が主催する「動物愛護ふれあいフェスティバル」があり、子犬と子猫の譲渡会が開かれた。今年は会の前に、飼いたい人たちに対しての「講習会」が初めて開かれた。県動物愛護センターの職員が殺処分の現状や去勢・不妊手術の必要性、飼育の注意点などの説明をした。これを受講しなければ譲渡会には参加できない決まりだ。
初めて猫を飼おうと家族で参加した太田市の会社員女屋慧さん(28)は、講習会で話を聞いて少し重い表情になった。「金銭面や、責任をもって一生飼い続けることなど、少し軽く考えていた部分がありました」
県食品・生活衛生課によると、2007年度に2800匹近かった犬の殺処分数は16年度は10分の1以下となったが、猫は2670匹ほどから3分の2程度までしか減っていない。
条例などで定められている犬と違い、猫には係留義務がないため、去勢や不妊の手術をせずに放し飼いにすると、すぐに子猫が増える。繁殖力は強く、県獣医師会の木村芳之会長によると、2匹の雌猫が1年で80匹ほど産んでいた例もあるという。木村会長は「ペットショップで買う人も含め、飼いたい人たちへ講習会を義務づけるルールがあっていい」と話す。野良猫へのエサやりに対しても「『かわいそうだからご飯をあげていた』では通用しない」と強調する。
県は今年度、ふるさと納税の寄付金の使い道に「動物愛護」を追加した。8月末現在で82万円ほど集まっており、主に地域猫の去勢・不妊手術にあてる方針だ。同じように補助を出す県獣医師会や動物愛護団体と協力しながら進めるという。
この日の譲渡会では、12匹の猫と4頭の犬に新しい飼い主が見つかった。女屋さん家族は、子猫を譲り受けた。長男(7)は「うちに猫が来るんだね」と笑顔で話した。女屋さんは「不安はありますけど、飼うと決めた以上は責任をもってかわいがっていきます」。
(角詠之)
◆キーワード
<地域猫>
地域内に住んでいる猫に不妊や去勢の手術をして、将来的に飼い主のいない猫を減らすことが目的。エサやりの場所を決め、地域住民で排泄(はいせつ)物の処理や掃除をするなど飼育管理する。野良猫の増加防止とともに殺処分を避け、命を最後まで見守る。
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