酒屋には店番猫 路地での出会い 五輪のリオで
五輪会場の近くに暮らす人たちの生活に触れたくて、コンパクトカメラと携帯電話だけポケットに入れて、30分だけ街を歩いた。
街中にあるアーチェリー会場の「サンボドロモ」から、セキュリティーゲートを出て30秒ほど。一方通行の通りがあった。教会を中心に小さなお店が立ち並び、路上駐車がびっしり。会場の声援は、車が行き交う音と、色んな生活音にかき消され聞こえない。五輪マークも見当たらない。
平日の昼間から、碁会所のような場所でおじさんたちが黙々とトランプゲームをしていた。「撮っていい?」。カメラを指さして聞くと、首を縦に振る。どうやら真剣勝負のようだ。
商店の入り口には、しっぽをピンと立てた猫が。撮っていると、後ろから「チッチッチッ」と舌打ちが。やばい、何かした?
振り返ると、ピンクのシャツを着たおばさんが猫を呼んでいる。笑顔でポルトガル語をまくし立てるが、まったくわからない。「あっちにも大きな猫がいるのよ。ほら、あそこ」。そんなニュアンスだろうか。指さした方を見ると、酒屋に店番猫がいた。
300メートルほどを行き来しただけ。彼らの言葉はまったくわからない。でも、穏やかに流れる時間と飾らない生活を垣間見て、開幕してから一番強く、リオにいると実感した。
4年後の東京にも、こんな風に歩く外国人がたくさんやってくる。肩ひじを張らないおもてなしが、案外記憶に残るのかも知れない。
(林敏行)
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