飼うペットは、流行ではなくライフスタイルに合わせて

 先日、日本人とペットの関係について取材を受ける機会がありました。


 7年ほど前のことですが、大学院在学中に犬の販売の歴史について整理したことがあり、それで声をかけてくださったとのことでした。すっかり記憶から抜けている部分もあり、あせって再度資料などを読みあさりました。というわけで今回のコラムでは、当時まとめた、戦後の日本人とペット(主に犬)の関係についてご紹介したいと思います。


 1950年代、ペットは家を守るために飼われていました。犬は防犯のための番犬として、猫はネズミを捕まえてもらうために、それぞれ飼われていたといわれています。このころ、よく吠えるから番犬としての使い勝手がよく、かつ見た目もかわいらしいために、日本スピッツがはやりました。


 60年代に入っても依然として、犬は番犬、猫はネズミ捕りといった役割を担っていました。食事は人間の残り物でした。一方で、治安もよくなってきたことから番犬としての役割が徐々に必要なくなり、また、豊かさの象徴として小型犬を室内で飼育することも増えてきました。次第にペットとの関係が変化してきた時期ですね。熱帯魚もブームになりました。


 経済が大きく成長した70年代は、男性が仕事で家を空けることが多かったことから、例えば、マルチーズやポメラニアンといった、女性の好みに合った小型でおとなしく、見た目が美しい犬が飼育されたそうです。


 当時、小坂明子さんが歌っていた「あなた」の中でも、〝子犬の横にはあなた あなたがいてほしい〟というフレーズがありました。この歌に出てくるのが、幸せな家庭のモデルだったのでしょう。室内で犬を飼うという時代になったことが伝わってきます。犬の放し飼いが減少したのもこのころです。ペットフードの販売や動物病院の普及など、ペットを飼う環境が整い始めました。


 80年代になると犬のことを「わんちゃん」と呼んだり、雑誌などで表記したりするようになりました。エリザベス・テイラーさん主演の映画「名犬ラッシー ラッシーの勇気」が85年に公開され、シェットランド・シープドッグが流行しました。猫では「なめ猫」がはやりました。


 80年代後半から90年代半ばは、大型犬が流行しました。ゴールデン・レトリーバーなどの大型の洋犬を飼育することが一種のステータスだった時代でした。また、マンガの影響でシベリアン・ハスキーも流行しました。


 住宅事情から小型犬も人気です。93年には、この年にご結婚された皇太子妃雅子さまの愛犬がヨークシャー・テリアだったことから、ヨークシャー・テリアが人気になりました。飲料のテレビCMの影響でコーギーも人気になりました。

 90年代後半からは色や毛質が豊富なことからダックスフントが流行しました。2002年の金融会社のテレビCMの影響で、チワワが大流行したことは記憶に新しいですね。


 歴史を振り返ると、犬は「番犬」、猫は「ネズミ捕り」という存在から徐々に、「家族の一員」「コンパニオン・アニマル(伴侶動物)」へと変化したわけです。いずれにしてもペットは、人間のそばにずっといた、パートナーなのだなと改めて感じました。


 先日の取材の際には、これまでのペットと私たちの関係を整理し、その中でこれまでにはやった動物や犬種にも触れたので、では将来はどうなるんだろう……という話になりました。


「猫ブーム」ということもあり、これからはやる猫についての意見を求められましたが、これについてお話はしませんでした。当然ですよね。これまでにブームになった犬種がどうなったのか、また、猫ブームと言われてどのような問題が起き始めているのか……。流行ではなく自分のライフスタイルに合っているかどうかで飼う動物を判断してほしいのです。


 そこで、はやりそうな猫をあげるのではなく、保護猫や保護犬の譲渡活動について紹介しました。犬も猫も、不幸にして一度は飼育放棄されてしまった子たちが、当たり前のように新しい飼い主さんが見つかるような国になってほしい――それが、私の描く日本の将来です。


 譲渡活動の存在を紹介していただけないかもしれないし、譲渡という言葉自体に触れてもらえないかもしれないけれど、ペットショップで購入しなくても、保護犬や保護猫を譲渡してもらうというすてきな手段があるんだということを、一人でも多くの人に知ってほしいと改めて思いました。

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