向田邦子と愛猫3匹 業務用鍋でエサを調理3時間
作家で脚本家の向田邦子(1929~81)は、小学3年から5年までの2年3カ月間を鹿児島市ですごした。
今回紹介するのは、業務用アルミ製の寸胴鍋2点。高さはともに25・5センチ。ふたがない鍋の直径は27・5センチで、ふた付きは26センチある。実はこれ、料理は料理でも、猫の餌を作るための鍋だった。
向田は、ついの住み家となった東京都・青山のマンションで、3匹の猫と暮らした。一人暮らしを始めた時に実家から連れてきたシャム猫のメス「伽俚伽(かりか)」、旅行先のタイで一目ぼれしたコラット種のオス「マミオ」とメス「チッキイ」である。
中でもマミオについては、エッセイ「マハシャイ・マミオ殿」で「貴男はまことに男の中の男であります」と書いたこともある。
そんな向田は、この寸胴鍋でトビウオ10キロの煮付けを作った。猫向きの薄味だったという。粗熱を取り、1回分ずつ小分けポリ袋に入れて冷凍保存し、適宜解凍して与えた。調理にかかった時間は3時間。原稿の締め切りに追われながらも、猫のためには時間を惜しまなかった。
やがて伽俚伽とチッキイが相次いで死んだ。そして向田が台湾での飛行機事故で亡くなった時、その帰りを待っていたのはマミオだけだった。そのマミオも、向田の死から4年後、天国へと旅立った。
(かごしま近代文学館・吉村弥依子)
◆企画展「猫に恋した作家たち」は、かごしま近代文学館(鹿児島市)で7月4日まで開催中。
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