救助犬の「夢之丞」も出動 熊本地震・益城町で
震度7を観測した熊本県益城町は熊本市に隣接する人口約3万5千人の町。14日の地震で約2820人が自主避難し、余震が続く中で不安な一夜を過ごした。
町保健福祉センターは900人を超える町民らが避難し、廊下やロビーにも人があふれた。職員が配る毛布が足りず、毛布の入っていた段ボールを床に敷いて横になる住民も。犬や猫などのペットを連れて避難した住民らが、建物の外で夜を明かす姿も見られた。救援に来た迷彩服の自衛隊員も、水や菓子パンなどの食料を運び込んだ。
同町の「有料老人ホーム桜花」の入居者9人も職員と一緒に避難した。高齢者の多くは車椅子に座ったまま。入居者の白木トミエさん(88)は「こんな揺れを経験したことはない。緊張で眠れなかった」。認知症の人もおり、施設の職員が「大丈夫、大丈夫」と声をかけ続けていた。施設の奥村哲生代表(35)は「人工透析を受けている人もいる。入居者の体調が心配です」と話した。
看護師の山本春美さん(50)は、自宅2階のソファで座っていた時に激しい横揺れに襲われ、突然、家の電気が消えた。テレビやタンスが倒れ、足の踏み場もないほどになり、転倒した母は「戦争の時の防空壕(ごう)のよう」と話したという。
町総合運動公園の体育館に70代の両親と避難してきた江森勝幸さん(51)は、「少しうとうとしたけど、余震で起こされた。これが続くのかと思うとイヤだな」とうつむいた。
約150人が一夜を過ごした同町公民館前の駐車場。夜間は冷え込み、寒さを和らげようと、役場職員が毛布のほかにアルミのシートも配った。段ボールを重ねて寒さをしのいだという女性(86)は「気力だけで一晩過ごした」と疲れた表情だった。
空が明るくなり始めた午前5時ごろから、自宅の様子を見に帰る人が目立った。近くのマンションに住む城戸順子さん(80)は「夫が家を見てきたが、足の踏み場もない状態。片付けをしたいが余震が怖くて戻れない」と話した。
午前6時過ぎには、役場職員が非常食のビスケットを配った。母や姉らと避難した塘田(ともだ)俊輝さん(12)は「おなかがすいた。少し硬いけどおいしい」。前夜、熊本市内で家族で買い物をしていた時に地震が起きた。益城町内の自宅マンションに戻る途中の道は所々、隆起していたという。避難した駐車場では、余震のたびにアスファルトの地割れが広がった。「夜はパニックだった。これからどうなるのか心配です」
支援の動きも本格化している。
日本レスキュー協会(兵庫県伊丹市)の3人と救助犬4頭は15日朝に熊本県益城町役場へ。NPOのピースウィンズ・ジャパン(本部・広島県神石高原町)は12人と救助犬2頭を派遣した。救助犬は2014年8月に広島市で起きた土砂災害で不明者2人を発見した「夢之丞(ゆめのすけ)」など2頭。広報担当の大成絢子(おおなるあやこ)さんは「人命救助を第一に捜索活動を進めます」と話した。
スタッフと救助犬が向かった和歌山災害救助犬協会の榎本義清理事長(54)は「何とか役に立ちたい」。ボランティア支援拠点のひょうごボランタリープラザ(神戸市)も21日にバスで20~30人のボランティアを派遣予定だ。国際医療NGO「AMDA(アムダ)」(本部・岡山市)は医師ら4人が向かい、200人分の救援物資も届ける。
日本災害救援ボランティアネットワーク(兵庫県西宮市)は支援金の受け付けを開始。名義は「NVNAD国内支援口」で、三井住友銀行西宮支店普通口座7022161か、ゆうちょ銀行(00900・5・29560)へ。
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